勝手に自伝 ぶんちゃん

ようやく書き上がりました。
遅くなりました。
では以下本文です。

 コレクター ~ぶんちゃんの編む船~

 彼はあらゆるものを集める。収集癖というわけでは無いのだろうが、とにかく彼はいろんなのものを集めている。
 そう、皆さんもご存じだろう。彼の名前はぶんちゃん。
 ぶんちゃんを知る物は口々に彼の事を様々に語る。しかし、決まって最後に口にする言葉は「ありがとう」彼を知る人達は必ず彼を表現する最後の言葉をこの言葉で締める。
 ぶんちゃん、彼はなぜこんなにも皆から感謝されているのか? それは彼のコレクションともいえるノートが彼を表す言葉「ありがとう」につながるのだろ。
 そのノートはすべての人達に解放され、誰もが閲覧する事が出来る。
 しかし、彼がなぜそのノートのコレクションを始めたのか、私はそれが気になった。そして、それについての取材を敢行する事にした。
 取敢えず、私はぶんちゃんに取材の申し込みをした。しかし、多忙を極めるぶんちゃんへの取材の機会はなかなか無く、私はぶんちゃんへの取材を半ば諦めかけていた。
 その時、ぶんちゃんの事をよく知るという人物が現れた。そこで私はその人物に取材をお願いした。
 その人物は自分の名前を明かさない事を条件に取材を受け入れてくれた。
 その人物の事は仮にAと名付ける事にする。そのAとの取材の当日、私はAの指定した場所に向かうが、指定場所に向かう途中Aからであろう電話の着信があった。Aからの電話は必ず非通知でかかってくるため、それがAかどうかははっきりわからないが、恐らくAからだろうと思い私は電話に出る。
 するとAは突然今日の取材を中止したいと言い出した。その言葉に私は驚きを隠せず、Aに無理やりにでも取材を敢行しようと試みる。しかし、何かに追われているような様子のA。私は仕方なくその日の取材を断念した。
 Aは電話の切り際、私に謎めいた言葉を残した。
『ファウン……』
 私はその言葉の意味が解らず、聞き返そうとした時にはもう電話は切れていた。しかし、電話が切れる瞬間、乾いた何かがはじけるような音が聞こえた。その音は昔私が戦場に取材に出た時によく聞いた音に似ていた。
「まさかな……」
 私は何かとんでもない事に足を突っ込んでしまったのではないだろうか? そう言う思いが込み上げてきた。
 次の日、私は再び何とかAとコンタクトを取ろうと試みたが、それはかなわずに終わってしまった。いったいAは私に何を伝えたかったのか? 最後の言葉『ファウン……』とはいったい何の事なのだろう……
 取りあえずAとは引き続きコンタクトを取る努力をしながら、私はぶんちゃんの取材を続けることにした。
 しかし、調べても調べてもぶんちゃんの情報は何処からも入って来ない。仕方なく私はぶんちゃんに再度取材の申し込みをするが、やはりぶんちゃんの取材は出来ずにいた。
 しかしそれで諦める私ではない。物書きとしての私のプライドがこのまま終わってもいいのか? と、問いかけてくる。もちろん答えはNOだ。
 そこで取材の基本、夜討、朝駆けを行う事にした。幸いぶんちゃんの所在地は知っていた。そして私は取材を敢行するもぶんちゃんは殆ど自宅にいる事も無く、世界中を飛び回りあらゆるものを集めていた。
 それでもあきらめることなく私はぶんちゃんの家を張った。
 ぶんちゃんの家を張る事一ヶ月、ようやくぶんちゃんは自宅に帰宅し、そのタイミングでぶんちゃんに取材を申し込んだ。
 アポなしの取材にもかかわらず、ぶんちゃんは少しだけならと快く取材を受けてくれた。
 先ず私が最初に聞きたかった事をぶんちゃんにぶつけてみた。そう、なぜ様々な物を集めているのか? この事を聞いてみた。するとぶんちゃんはこう答えた。
「アイザック・アシモフと言う作家をご存知でしょうか?」
 私はそれに頷く。アシモフはヒューゴ賞やネビュラ賞を受賞しているSFの第一人者と言われている人物だ。しかし、それがぶんちゃんとどんな関係があるのか? 私はそこが気になったり、ぶんちゃんに質問しようとしたが、ぶんちゃんは私が頷くのを見ると更に言葉を繋ぐ。
「アシモフの著書に、銀河帝国の興亡という作品がありますが、そこで書かれている『エンサイクロピーディア』と言う物が有るのはご存知ですか? 私はそれに似た物を作り上げようとしています」
 私はぶんちゃんの言葉に驚いた。エンサイクロピーディア、それは銀河百科事典と呼ばれる物で、銀河帝国の興亡で銀河帝国滅亡後の混乱期を短くするために作り上げられていく、ありとあらゆる科学技術や文化などを収めた百科事典だ。しかし、ぶんちゃんはなぜそんな物を作成しているのか? 私は更にそこのところが気になった。もしかすると、ぶんちゃんは何か一般人の知らされていない事実、そう例えば地球文明の滅亡……私の脳裏にはその言葉が過ぎった。
 しかし、ぶんちゃんは私の考えている事が解ったのか笑顔で語った。
「この活動はあくまでも私個人の趣味のような物です」
 しかし、趣味でこれだけの膨大な時間と資金を使う、常識的には考えられないような事だ。趣味の一言で片づけてしまえるような事なのだろうか? その膨大な資金は何処から出てきているのか? 疑問はつきない……しかし、それを聞き出すほどの時間が私にはなかった。
 ぶんちゃんの傍らに秘書が近寄り話しかける。
「もうそろそろお時間です」
 その言葉に軽く頷くぶんちゃん。
「すいません、もうそろそろ次の予定が有るのでそろそろこの辺で」
 ぶんちゃんはそう言うと立ち上がり、秘書に私を玄関まで送らせる。
「今日はお忙しいところありがとうございました」
 そう言って私はぶんちゃんの家を後にした。まだわからないことが多々ある、私はこれからも引き続きぶんちゃんの取材を続けるだろう。
 その現代の「エンサイクロピーディア」と呼ばれるであろう『noteなう』が完成するその日まで……