勝手に自伝シリーズ【サンプル版】

ということで、こんな感じになります。

先ずはサンプルとしてならざきさんの物を上げさせていただきます。


伝説のF・F~最強の男のならざきの半生~


 まず、この物語を書くにあたって快く協力を申し出てくれたならざき氏に感謝の意を込めて。 それと執筆中にいろいろと助言をしていただいた編集部の方々、及び私の友人達。 そしていつも陰となり日向となり私を支えてくれた妻に感謝と愛を込めて。 それから最後に、この本を手にとってお読みいただこうとしているであろうあなたに最大の感謝を込めて・・・・・・       ならざき、彼の人生はけして恵まれたものではなかった。 彼の幼い頃の記憶は貧困と、それに伴う餓えそんな物が彼の幼い頃の思い出の半分を占めていると言っても言い過ぎ出はないだろう。 その貧困の原因は幼い頃に彼の隣で起こった事に端を発する。 彼が八歳、まだ小学生の頃の事だ、息も凍り付きそうなほどの寒い冬の事だったとならざきもその当時の事を鮮明に思い出し、私に語ってくれた。「一月の半ばくらい出したかね・・・・・・本当に寒くて、雪もちらついていました。 夜中、と言ってももう殆ど明け方に近い時間です。突然親父に起こされたんです。 もう、私は何のことだかさっぱり解らずに親父に抱えられて表に逃げ出したんです」 ならざきの表情はその時の事を思い出してか、いつもの明るい表情ではなく、暗く沈んでいた。「でね、表に出ると隣の家が真っ赤に燃え盛ってるんです。それはもう怖かったですよ」 いまだに夢にその時の事を何度も観るというならざき。 その時ならざきの新築だった家も全焼したという。「それからはもう思い出したくも無いことばかりです・・・・・・」 言葉を詰まらせたならざきに私はこれ以上質問を繰り出すことはできなかった。 しかし、この事がきっかけとなり、ならざきは火事を憎むようになったのは間違い無いであろう。 それからのならざきは一心不乱に努力した、それは誰が観ても恐ろしいほどの努力であった。 その時の事をならざきの父はこう語る。「部屋に入るとね、いつも机に向かってるんです。それが何時でも・・・・・・正直私は少し怖かったですよ。だって、今まではそんなこと無かったんですよ。しかもまだ小学生でしょ?ちょっと心配にもなりますよ・・・・・・」 そう、その時ならざきはもう自分の将来を決め、それに向かって走り出していたのだ。 ならざきの目標、それは消防士。 あの火事の時以来ならざきはそれを目標に勉学に励み、身体を鍛えた。 そして、奨学金をもらいながら大学を卒業しならざきの目標であった消防士になることができた。 しかし、ならざきはそこで満足する事はなく、さらなる高み。そうオレンジ色のユニフォームを着ることを目標としていたのだ。 努力は報われ、ついにならざきがオレンジを着るときがきた。 心身共に鍛えられ、そして数々の現場で多くの人の命を救った。 しかし、ある現場での出来事がならざきのその後の人生を大きく変えることになる。 二〇〇三年九月一三日。この日の事を覚えている方もまだいるのではないだろうか? そう、日本でも有数の高層ビル『ベヴェルタワー』の火災のあった日だ。 ベヴェルタワー、地上一二〇階建て地上三六〇メートルのビルの一五階で起こった火災は瞬く間に広がりをみせ、一五階以上の各階にはその煙が充満し、紅蓮の炎は上へ上へと昇っていく。 消防車は道内各所からかき集められたが、あまりの高層ビルの為、消火作業は難航し、実際に鎮火報が鳴り響くには一か月の時間を要したほどだった。 火災から三日が経過したとき、消防本部はある決断を下していた。それはレスキューによるヘリコプターからの屋上階の侵入及び要救助者の捜索・救助であった。 本来ならこんな危険な作戦を行うようなことをすることは無い、なぜならば消防隊員が要救助者になる可能性があるからだ。 しかし、そうも言っていられない状況がそこにはあった。 そう、そこには政府の要人が取り残されていたのだ。 そしてこの作戦は決行されることになる。 しかし、本来ならばこんなものは作戦ともいえないようなものである。だが、それを決行しなければならない。 そこで消防本部は志願者を募った。 志願者は当初予想していたよりもはるかに多い人数が集まった。もちろんその中にならざきの姿があったのは言うまでもないが、今回の作戦にはレスキューの中でも経験豊富な物が隊を纏める必要性があった。 百戦錬磨のレスキューだが、それでもこのような大規模な火災を目の当たりにしてどのように指揮を取ればいいのか実際の所は難しかったのだろう。 レスキューの中でも最も経験の豊富な者が隊長として選ばれた。 そう、それはならざきだった。 もちろんならざきもこれほどの大規模な火災は経験がある訳ではなかった。しかし、ならざきは少しも臆する事もなくその任務の為の準備を行い、選ばれた仲間十人と共に自衛隊のヘリコプターに乗り込み『ベヴェルタワー』の屋上へと飛び立ちそして屋上に降り立った。 非常階段から侵入したならざき達は隊を二つに分け、あらかじめ調べた要救助者がいると思われる階に進んで行く。 辺りは煙と炎が支配する世界、そこでならざきは的確な指示をだし、要救助者を確実に屋上に上げヘリコプターに乗せ次々と救助していった。 そして最後の一人をヘリコプターに乗せたことを見送り次はレスキューが乗り込むという時にならざきは何か引っかかる物を感じた。 そして、他の隊員を残し一人ならざきはまた非常階段を走り降りる。 他の隊員が止める事も聞かずに。 そしてならざきは階段をひたすら下り、違和感を感じた階に辿り着く。 そこでならざきは一部屋一部屋もう一度確認して回り要救助者がいない事を見て回る。 しかしそこには要救助者の姿は一切見られなかった。 自分の感覚が気のせいだったのかと思い、また非常階段に戻ろうとしたその時、部屋の中を何かの影が動く。 それは小さな小さな鳴き声で炎と煙に怯えた様子でならざきに弱々しく近づいてくる。 近づいてくるそれをほほえましくも見守り、その猫を抱きかかえ非常階段に戻ろうとした時、部屋にあった大きなシャンデリアがならざきの頭上に落ち来る。 ならざきは自分の身体を犠牲にしてその猫を護ったが、ならざき自信重傷を負ってしまい身動きが取れなくなってしまった。 なんとか抜け出そうともがくが、どうしてもシャンデリアから抜け出すことができない。 ならざき自身は抜け出すのを諦め、懐に抱いて庇っていた猫を放し、外に逃がすように追い立てるとそこでならざきは力尽きたかのようにぐったりとしてしまった。 そしてならざきが次に目が覚めたのは病院のベットの上だったようだ。その時の事をならざきは語ってくれた。「正直自分が今どこにいるのか解らなくて、ああこれは私は死んでしまったのかな?って思ったんですよね。でも、実際はそうではなかったんです。レスキューの仲間が私を助けに戻ってくれたんです」 そう語るならざきの表情は何とも勇ましく、そして仲間を誇りに思うような力強い微笑みを私に見せてくれた。 しかし、なぜならざきは助かったのか? ならざき自身もその事がその時には疑問に思うようだった。 しかし、それは見舞いに来てくれたレスキューの仲間に真相を教えられることとなった。 そう、絶対絶命のならざきを救ったのはあの助け出した猫だったのだ。 助けられた猫は屋上まで走り、まだ退避の終わっていなかった隊員を連れて戻ったのである。 猫に連れられた隊員達は倒れているならざきを見つけ出し、無事ヘリコプターに載せて病院に運んだのだ。 そしてその猫はならざきの命を救った。 ならざき氏はそれから命の恩人とも言える猫を飼い始めることになる。 そしてその猫の名前は「韋駄天」と名付けられたら。 まさしくならざきの命を救うために韋駄天のごときスピードで屋上に駆け上がりならざきの命を助けたのだ。 しかし、かーるは「ベヴェルタワー」火災の傷が癒えずレスキューの仕事に復帰することは無かった。『ベヴェルタワー』で負った怪我は予想以上に深くならざきをレスキューの仕事に戻らせるわけにはいかなかったのだ。 消防本部への移動の話もあったが、あくまで現場にこだわるならざきはそれを辞退し、リハビリを行う傍ら今まで趣味で続けていた執筆活動を本格的に行いだした。 そう、それが皆さんもご存じの通り「私的国語辞典」の執筆だった。 そしてそれは出版されるとたちまちベストセラーになるが、ならざき氏は消防の仕事を捨てることができず、今は消防設備士の仕事に就いている。 執筆で培われた想像力と、レスキューで培われた危険予知能力で様々な建物の消防設備の設置位置を決め、それによって多くの命が救われることになった。 今も執筆活動はもちろん続けており「カルマ」などの様々な作品を世に送り出し続けている。 そして最後にならざき氏は私にこう語ってくれた。「私の作品は今までの経験を基に書かれています。それが良いかどうかは解りません。しかし少しでも読んでいただける皆さんが消防意識の向上につながれば良いと思っているんです。もちろん、私の作品で皆さんに楽しんでいただければいうことないですしね」

そう語るならざき氏の傍らには、あの日助けた韋駄天の子供である「べんてん」が気持ちよさそうに眠っていた。