辻氏が東亜連盟の理想実現に
意欲を燃やすようになるまでの道のりには、
中国人を見直すような機会と、
日本人に失望するような機会があったようです。
故国から唾棄され、敵国から礼を尽くされた上官
林連隊長の死から視野を狭くした辻氏に、
中国人への敵意を考え直すきっかけを与えたのは、
空閑少佐という方だったそうです。
ここでは、
武人としての恥辱と責務との葛藤に苛まれている上官への惻隠と、
そんな彼に無神経なことばをかける日本の衆人、
対して、彼が責務を全うできるよう手厚い看護をした見知らぬ中国人
のことが言及されています。
また、この頃には
中国大陸で邦人のゴロツキを取り締まることもあったようです。
若い辻氏の心中では、
日本という、自分を取り巻く環境への失望と不信が
澱のように積み重なっていったのかもしれません。