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涙腺 13 『介護疲れ 殺人 ときどき 霊媒師 第2部』

2020年
丸山古書堂

大向昭雄は なけなしの10万を持参して再び古書堂を訪れた。丸山隆道から「ここ2〜3日は予約で埋まっているので 1週間後にまた来て下さい」言われたからである。

大向昭雄は古書堂の奥の薄暗い部屋へ案内された。そこも古書堂同様に多量の古ぼけた書物が乱雑に置かれていた。霊媒師的なアイテム(水晶とかカードとか?)が なにひとつ置かれていなかったのは気掛かりではあったが...

丸山隆道は瞑想に5分ほど費やしていた。その間 大向昭雄は黙ってそれを見ていた。

丸山隆道                 (静かに目を開け)            お母様は認知症でしたよね。冥界に行っても認知症は認知症のままですよ。はっきり言いますが 会話になりません。

丸山隆道はそう言って使者へ(母親との)のコンタクトを終了しようとしていた。

大向昭雄                 ふざけんじゃねぇーよ この詐欺師やろう!お前 この1週間で俺の事を調べ上げたんだろう。俺の母親が認知症だから 対話不成立で着手金だけせしめようって腹だろう

丸山隆道                 勿論 調べましたよ。こちらも素性が分からない人間とは関わりたくないですからねぇ。お母様が認知症 そして あなたは介護に疲れて ご自身の手で母親を絞殺した。裁判所はあなたの境遇を考慮して 執行猶予の判決を下したみたいですが 私に言わせれば 今の怒りようから推測して あなたは自分の感情をコントロール出来なかったんじゃないですか?そしてそれが犯行の引き金になったんじゃないですか?

大向昭雄                 (大粒の涙を流しながら)         俺は今まで母さんに手を出した事なんて一度もない。あの日だって...  元気な母さんに戻ってくれたらなぁって思って 毎日 介護してたんだよ。死んでしまえなんて一度も思っていなかったんだ。1日でも1時間でも長く生きて欲しかったんだ。

丸山隆道                 死んだお母様に何を確かめたかったんだ? 『殺してごめんね。俺って良い息子だった?』とか聞きたかったのか?その答えを聞いて安心でもしたかったのか?甘ったれんじゃねぇーよ。お前が お母様の事を一番理解してなくってどうするんだ。霊媒師なんかに依頼せずに 自分の胸に手を当ててよーく思い出してみろ。お母様は死ぬ事なんか1ミリも恐くなかったはずだ。認知症であっても お母様はお前を残してこの世を去る事の方が恐かったんじゃないのか? これからテメェが幸せに暮らしてくれる事しか願ってなかったんじゃねぇか?

それを言われた大向昭雄の記憶は(40年前)自分がまだ5歳だった頃に戻った。

【完結編へ続く】

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