涙腺 0 『ビデオレター 前半』

自宅リビング
山本孝之は少し緊張気味でリビングのソファーに腰掛けていた。木田圭太（義理の弟）がカメラを回し始めた。孝之はゆっくりとカメラに向かって話し始めた。

孝之
マモル.. マモルくん..
（深呼吸をして）
マモル 5歳の誕生日おめでとう
僕は山本孝之と言います。初めまして
マモルの（少し苦笑いしながら）パパです
パパがなんで いま マモルのそばにいないかと言うと ちょっと重い病気になっちゃって... 
マモルが生まれてくる前に 天国と言う遠いところに 行かなくてはいけなくなりました ごめんなさい。

パパは頑張ってお金を貯めたので そのかわりと言ってはなんですが ママに好きな物をおねだりしてください。サッカーボールを買うのか？プレステーション✖️✖️を買うのか？

（少し間をあけ）
マモルは男子だから ママの事 頼むなぁ。その為に 「守」って名前をつけました。

（思い出したように）
なのにさぁ ママたら マモルにキラキラネームつけようとしてたんだよ。ノアとかダイヤとかドリムとか .. 叶う夢って書いてドリムだよ。ダイヤなんて奇跡って書くんだよ。まさかぁ！パパが天国に行った後に キラキラネーム ノアって名前にされてないよねぇ？

（画面を触る）
ノアってプロレスの団体だよ。嫌でしょ！万が一のために法律上ね。15歳以上から戸籍上の名前を変更できるからねぇ。

圭太はカメラ越しに 熱くなり始めた孝之に呆れていた。静止しようとしたが それに気づいた孝之は話をもとに戻した。

孝之
（笑いながら）
本当は名前なんてなんだって良いんだぁ。だって 君はパパとママにとって世界で唯一の宝物なんだから...

（手を振りながら）
元気で 風邪ひかないように。それでは 次は   ６歳の誕生日に会いましょう バイバイ。

圭太はカメラを止めた。圭太は浮かない顔をしていた孝之に話しかけた。

圭太
なんか 元気ないっすねぇ。

孝之
（圭太の方を見ながら）
これさぁ 意味ある？ ２０歳まであと１５本のおめでとうビデオ撮るんでしょう その後 結婚式用の祝辞ビデオレター 『天国のお父さんからもビデオレターが届いてますよ... 』ってやつ

圭太
父親から 毎年 誕生日にビデオレターが送られてきたら マモルくん 絶対 嬉しいっすよ。

孝之
最初のビデオレターが今から５年後だぜぇ。愛子だって良い相手を見つけてるだろう。ノロケみたいに聞こえるかもしれないけど 愛子は美人だし 気配りもできる それにまだ２９歳だよ。このビデオレター 邪魔にならないか？
それにさぁ 正直 言葉に語弊があるかもしれないけど マモルの成長には まったく 心配してないんだよ。だって 愛子が育てるんだぜぇ 絶対 良い子に育つよ。俺の両親も そちらのお父さんお母さんもご健在だし 圭太叔父さんもいるしね。父親がわり（自分の代わり）はたくさんいるから マモルも寂しくないでしょう。あと お爺ちゃんとお婆ちゃんが頑張ってくれたおかげマンションもあるから 毎月の決まった収入あるし お金にも困らないだろう。裕福な家庭の息子じゃない。唯一 心残りなのは.. 愛子ともっと色々な夢を実現したかったな

【前半終了 後半は続く】