【#シチュボ台本】こちらに懐いてくれてる頼れる後輩と深夜ドライブに行く話

よいしょ、っと。
ほい、荷物はコレで全部っすかね。
助手席乗ってください先輩。

じゃ、二人っきりでドライブっすね。

へへっ、夜の運転って好きなんすよね。

ああご心配なく、誰も居ないからとて暴走運転をするような愚か者じゃあないんで。
法律遵守、いつもと変わらぬ安全運転!
免許金色にしたいから、ヘマは踏まないっすよ〜?
ちゃんとシートベルトも付けてくださいっす。よろしく。

しっかし、急に押しかけてみて正解だったっすねぇ。

ふふん、まさにデートっすね先輩。

なーに戸惑ってんすか。
はい、後輩ジョ〜ク。

どこ行きたいっすか?先輩の言うところ、どこでも行くっすよ。

……なるほど、山っすね。
ちょっと遠いけどいいっすよ。
じゃ、出発進行!

***

ふんふふんふ〜ん。
快調快調、流石にこんな時間だと誰も走ってないっすね。
まるで世界に二人だけしか生存者が居ないみたいじゃないっすか?

ん?車出してくれてありがとうって?
いやいや、運転好きなんで苦でもなんでもないっすよ。
ていうか先輩、そもそも車持ってないし免許も取ってないじゃないっすか。

まさかとは思いますけど、徒歩か自転車でなんとかする気だったとか言わないっすよね?
……呆れたっす。
まさか火事場の馬鹿力を当てにしていたとは。

まったく、こんな頼れる後輩持ったことに感謝してほしいっすよ。

へへ、そうっすよねそうっすよね。
先輩のピンチを幾度となく助けてきた、自慢の後輩っすからね。

やー、礼とかいいですって。
先輩のためならなんでもしちゃう、それが後輩としてのモットーなんで。

あー、でもどうしてもお礼がしたいっていうなら、そこの自販機でコーラでも買ってくんないっすか?
なんつってー。

***

……まさか本当に買ってくれるとは。
流石先輩、そこに痺れる憧れる。

ハンドル握ったまんまなんで、キャップ開けてもらってもいいっすか?
すみません、先輩に買わせたばっかりかコキ使うようなことして。

車出してくれたんだからこれくらいなんてことない?
はー、そんなもんすか。
先輩のためなら今から北海道か沖縄まで走れって言われても従うっすよ?

はい、後輩ジョ〜ク。
流石に旅行には何もかも足らないんで、弾丸ツアーはお断りっす。
でもまぁ、ほんとにそれくらいならなんてことないんで。
必要になったら言ってくださいっす。

あ、コーラありがとうございます。
っく、っく、っく……ぷはー!生き返る〜!
うんうん、これこれ!
やっぱコーラは血液っすよ!

***

うーん、夜っていいっすよね。
昼の喧騒も明るさもない。
ただエンジンの音と、タイヤが地面を擦る音と。
あとは二人だけの静かな空間。
あと変な虫の鳴き声。
うんうん、夜っすねぇ。
やっぱドライブは夜っすよ。
間違い無いっす。

…………あー、先輩。
山に行きたいって言ってたっすけど、目的地変えていいっすか?
自分、海見たいっす。

いいっすか?
ん、じゃあ決まりで。

高速使えば2時間かからずに行けるかな……うん、夜明けまでには帰って来れる。
いけるっすね、うん。
じゃあ高速かっ飛ばしますんで。
高速代?要らない要らない。
こっちのワガママなんで、こっちが出すっすよ。

海に行きたい理由?
……ははっ、先輩がそれを聞くんすか?

山より海の方がいいっすよ。

ま、頼れる後輩の言うことは聞いとくもんっすよ先輩。

あと、買いたいものがいくつかあるんでそれもいいっすか?
24時間営業のホームセンター寄りますんで。
ちゃっちゃと済ませるから先輩はここで待っててください。

ちゃんと、待っててください。
いいっすね?

***

ただいまっす。
居なくなってたらどうしようかと思ったっすよ。
ま、先輩の携帯のGPS拾えるようにしてるんで逃げられるわけがないんすけどね。

はい、後輩ジョ〜ク。
嘘っすよ。先輩への手厚い信頼故っすから、そんな顔しないで。

……じゃ、行きますか。
お腹とか減って無いっすか?一応、つまめる物買ってきたんで。

どうでもいいっすけど、ランチパックを深夜に食うのってめちゃくちゃ倒錯的じゃないっすか?
午後の紅茶も買うべきだったか、失敗したっすね。

***

着いたー!
海ー!
なーんも見えなーい!
ま、整備された港湾に来たんだから当然っすよね。
今の時間は船も工場も何も動いてない。
ザ・静寂。
ま、斯くあるものっすよね。

どうっすか。
気分、晴れたっすか。

……駄目か。
そんな気はしてましたけど。

それじゃあ、さっさと済ませちゃいましょう。
積んだ『荷物』下ろしてもらっていいっすか?
あとホームセンターで買ったやつも一緒に。

何買ったんだ、って?
ええと……有刺鉄線とペンチ、あと念のために刃物をいくつかと、防刃手袋。
あとコンクリートブロック。
樋口さんが飛んだっす。

ん、荷物ありがとうございます。
ホームセンターの買い物のお金払うよ、って?
だからいらないですって。
やりたくてやってんですからこっちは。

さて、と。
重しとしてコンクリートブロックをくくり付けて。
次に有刺鉄線を巻き巻きして……うぅん、扱いにくい。
思ったより刺々しいっすね有刺鉄線って。
まぁツルツルしてたら名前詐欺っすよね。
そりゃそうか。

あっ!先輩は触らないでください!
手袋1セットしか買ってないんすよ。
怪我したら痛いっすよ。
有刺鉄線、容赦ないっすから。

よいしょ、よいしょ……
ん、巻けた。
我ながら完璧な仕事ぶり。

あとはちょっと刃物で崩しておいて、と……これでよし。

先輩、そっち持って。
そうそう。
いっせーの、で行きますよ。

いっ、せー、のっ!
おりゃー!!!

……沈んだかな?浮いてこないかどうかっすけど。

うん、これでよし。

ん、何したかわかってるのかって?

逆に聞くっすけど先輩。
あれ、山に埋める気だったんすよね?

はー、やっぱり。
山に埋めても簡単に見つかるっすよ?
山に慣れてる人達って、こっちが思ってるよりも遥かに変化に目敏いっすから。
ケモノが勝手に掘り起こしちゃって見つかったみたいなニュース、最近あったの知らないっすか?

その点、海はいいっすよ。
こんな濁った港湾にいちいち潜るやつなんかいない。
有刺鉄線で肉を傷付けたまま沈めれば、魚が勝手に啄んで証拠隠滅に協力してくれるんすから。
ただ投げ込んだだけじゃ浮いてきちゃうんで、重しをつけて沈める。
浮いてこなけりゃ見つからないっすよ。

使った道具も、こうやって。
海に捨てちゃえば知らんぷり。

財布と鞄は……ま、大丈夫か。
これも海にポイポーイ。
一応、身分証は抜いてあるっすよ。
後で刻んで燃やしちゃいましょう。

はい、これで我々は何も知りません。
たまたま夜の港湾を見に来ただけの二人組です。

さ、帰りましょうか先輩。
もうちょっとだけ、ドライブは続くっすよ。

***

しっかし、先輩も迂闊っすよねぇ。
カップル同士の喧嘩で相手死なせちゃあ駄目っすよほんとに。

わかってるっすよ、突き飛ばした時の打ちどころが悪かったんすよね?

なんでそれを、って。
死体見たらわかるっすよそんくらい。

ま、あの人嫌いだったんで気にしてないっすけどね。
手がかからなくてよかったっす。

はい、後輩ジョ〜ク。
ま、別れさせるくらいはやったかもしんないっすけどね。
先輩には合わないっすよアイツ。

まったく、こんな頼れる後輩持ったことに感謝してほしいっすよ。

やー、礼とかいいですって。
先輩のためならなんでもしちゃう、それが後輩としてのモットーなんで。

嬉しかったっすよ、ピンチの時に真っ先に電話かけてきてくれて。

しかしーーこんな秘密握り合っちゃったら、いよいよ離れ難いっすよねぇ。

いっそ本当に付き合ってみます?

って、こんなタイミングで告っても脅迫みたいになるっすよね。

こっちからは何もしません、待ってます。
先輩が恋人にしてくれるその日までね。

それまでは可愛い可愛い後輩として、どうか頼りにしてくださいな。

よろしくお願いします、ね?

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