【#シチュボ台本】ミステリアスな先輩から恋愛実験に付き合うことを強要される話
やぁ、後輩君。
急に呼び出して悪かったね。
とはいえ君もどうせ暇だったろうからちょうど良かったんじゃないかな?
ははは、怒らないでくれたまえよ。
廃部寸前の化学部の所属人数稼ぎのために、君の籍を利用させてもらったことは感謝しているとも。
ふむ、用件について?
どうせろくでもない実験でもやりたいんだろう、だって?
それはたしかに否めないかもだ。
普段から君にはあらゆる実験でお世話になっていたからね。
味覚治ったかい?耳をよくするつもりが舌が敏感になる薬になってたとは予想外だったよ。
ああ逃げないで逃げないで。今日やることはそんな恐ろしいことじゃないよ。
なぁに、そう怖がらずとも構わないとも。取って食おうとしてるわけでもないし、普段のようにトンチキな薬を盛って反応を観察したいわけでもない。
ふむ、単刀直入に言おうか。
君、私の恋人になりたまえ。
……何だその顔は。
ああ、流石に直入が過ぎるか。すまないね、どうしても過程の説明というやつが苦手でね。
恋人と言っても本当の、ではないとも。
擬似恋人という奴だね。
これから君と私は恋人らしいことをしてみよう。
その過程で恋愛感情というやつが芽生えるかどうか、実験してみたいのだよ
色々突っ込みたい?
まぁ、正直杜撰な実験であることは否めないとも。
しかし私は証明してみたいのだよ。
行動と感情は果たして連携し得るものか。
人は如何にして恋愛感情を成立させ得るのか。
というわけで、有無は言わせないつもりだからよろしく頼む。
早速だが、放課後デートから始めてみようか。
***
ふむ、別に二人で歩くだけならば普段の登下校とそう大差はないね。
後輩君はどうだい?何か心境の変化はあるか?身体的な変調は?
……何もない?私の無茶に振り回されるのはいつものことだから慣れている?
あ、そ。そうですか。
いーや、別に何でもないとも。
擬似とはいえ恋人と帰っているというシチュエーションに、思うところは何もないということだね。
よーくわかったとも。
私が相手だから普段と変わらない?
ふーん、そうかそうか。
君はそういうやつだったな、そういえば。
***
というわけで少し進んでみよう。
恋人とは手を繋ぐものだ。
今日は手を繋いで帰るぞ。
ほら、手を出せ手を。
思ったより素直に出したな……どれどれ。
ふむ、人の手とはこんな感触なのだな。
暖かいな、君の手は。
それとも私の体温が低いだけか?
まぁいいか。ほら、帰るぞ後輩君。
ん、なんだい?
私の心境の変化はあるか、って?
ふむ、そうだね。
……あえて言うなら、少々周りの目が気になるところか。
まったく、こちらをじろじろと見て節操の無い。ツチノコでも見つけたような目じゃないか。
無理ないですよ、って?
いや、流石にひどくないか。
私だって歴とした人間なのだがね?
ていうか君、手汗凄いな。
もうちょっとなんとかならないか?
***
さぁ、まだまだ進むぞ。
恋人と言えば抱きしめ合うものだろう?
ほれ。私を抱きしめてみろ。
恋人同士のように、熱烈に、凄絶に。
なーにを固まってるのかね後輩君。
ははーん、さてはアレか。緊張か。
いやー、君のような奴には少々刺激が強過ぎたか。
無理もないだろう、これでも顔の作りは大したものだと思っているからね。
手は繋げても抱きしめたりなんかはーーおわっ!?
っ……君って、思い切りがいいところもあるんだね。
驚いたよ。
そうか……抱きしめられるとは、こんな感じなのか。
強引なのもポイントが高い、たまにはやるじゃないか後輩君。
…………あの、何か喋ってくれまいか。
流石に、その。
沈黙が続くのは、少々面映い。
***
さて、どうだい後輩君!
ここ数日で我々は実に恋人らしいことをした!
流石に色々恥ずかしかったが、これもまた経験というもの!
で、どうかな。
心境の変化とか……あったかい?
……そっ、か。無かったか。
まぁ、仕方ないな。こんな奇天烈な先輩に迫られたとて滾るものも滾らないか。
すまないね、迷惑をかけた。これで実験は終了だ、有用なデータが取れたよ。
またこれからも……え?
気持ちは変わってない。ずっと前から……好きな、まま?
は?
え?
うん?
ち、ちょっと待ってくれたまえ後輩君。
理解が出来ない、意味がわからない。
その口ぶりじゃあ、君はずっと前から私が好きだって宣言してるも同然だぞ!?
そ、そうです。って……
な……なんだよ!早く言いたまえよ!
てっきり君は私にそういう興味がないだろうから、恋人のフリとか何とか言ってあれこれやったらそういう目で見てくれるかな〜って頑張ったんだぞ!
知ってる!?
四苦八苦悪戦苦闘してる様を楽しんでいただぁ!?
っかー……やれやれ。
踊らされていたのは私の方、だったということか。
そういうことなら構わないさ。
これからも、その。
どうか本物の恋人として、よろしくお願いします……
じゃあ、早速だけれどいいかな?
これから恋人としてやっていくにあたって、一つやっておきたいことがあるんだ。
あ、あまりじっと見るな。
わかるだろう?
私だって恥ずかしいんだからな。
ほら、目閉じて。いいから
……えいっ。
え、何したって?
注射だとも。わからなかったかな?
いやぁ、手汗を抑える薬というやつをつくってみたんだ。
流石にちょっと気になってね。
効果の程を観察させてほしいのだがーー
あっおいこら!全速力で逃げるな!おいこらー!!!!!
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