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映画感想文

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#ネタバレ

『ドライブ・マイ・カー』を観て ~と、その前に『女のいない男たち』を読んで~

1.『女のいない男たち』は「いない」系の極み いない。 今はいない。 過去には深く関わって…

『フレンチアルプスで起きたこと』を観て ~積み上げた理想が「雪崩」を起こすとき~

◇「立場」を守るためには ◇ たとえ自分自身がそれをしたいと心の底から望んでいなくても、…

『誰のせいでもない』を観て ~幸が不幸を生み、不幸が幸を生み~

◇ みんな悪くて、みんな悪くない ◇   確かに、誰のせいでもないとしか言いようのない不幸…

映画『マルホランド・ドライブ』を観て ~やるかたなきは夢であること~

◇ 夢みたいな夢 ◇ あの日より 飽くこともなく見る夢の やるかたなきは夢であること 上記…

映画『ありふれた悪事』を観て ~「愛国」の耐えられない軽さ~

◇ 1987年 ◇ 時は1987年。 舞台は、韓国のソウル。 たかだか34年前、まださほど大昔とも思え…

映画『オアシス』を観て ~孤独な惑星のボーイミーツガール~

◇ 孤独な惑星のボーイミーツガール ◇ 主人公のジョンドゥは、傷害、強姦未遂、ひき逃げなど…

映画『ROMA/ローマ』を観て ~ただそこにある人間愛~

◇ 匂い立つような臨場感 ◇ 匂い立つような映画。 まずはそれだ。 水。土。泥。埃。風。雨。 画面に映し出されるあれこれの中で、自分の記憶にある臭気は、すべて嗅げるような錯覚に陥る。さらに「日常」のてらいのないそのままの音が、より生々しい匂いを際立たせる。 匂いと音がかもしだす臨場感の効果もあってか、白黒画面でありながら、そこにはやけに鮮明な現実が映し出されていた。もちろんそれが、キュアロン監督の狙いなのだろう。 なぜなら本作は、実在する女中のリボさんに捧げる映画として撮ら