映画『ROMA/ローマ』を観て ~ただそこにある人間愛~
◇ 匂い立つような臨場感 ◇
匂い立つような映画。
まずはそれだ。
水。土。泥。埃。風。雨。
画面に映し出されるあれこれの中で、自分の記憶にある臭気は、すべて嗅げるような錯覚に陥る。さらに「日常」のてらいのないそのままの音が、より生々しい匂いを際立たせる。
匂いと音がかもしだす臨場感の効果もあってか、白黒画面でありながら、そこにはやけに鮮明な現実が映し出されていた。もちろんそれが、キュアロン監督の狙いなのだろう。
なぜなら本作は、実在する女中のリボさんに捧げる映画として撮ら