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キャプテン AlunWynJones

アラン・ウィン・ジョーンズ
彼はチーム最年長、プレーヤーで唯一ヘッドコーチのガットランドが就任してからずっと一緒にチームを纏めてきたプレーヤーでキャプテンである。
言わずと知れたレッドドラゴンズのレジェンド。
インタビューや試合中の彼の表情、メディアに露出してる彼のイメージは正に闘将。
でも私が見た彼はそんなイメージと少し違う。物静かで不必要な言葉は発さない。
と言うのは言い過ぎかも知れないがとにかく静か。
話してても少ししゃがれ声な上にボリュームが小さい。
更にはその日の気分によって全然話してくれない事もある。
かと思えばいきなり後ろから水かけてきたりする(笑)
なかなか掴み所がなくて話す機会は少ない方やったな。
そんなアラウィンのもう1つの一面は

子供がすごく好き。

第一回目はそんな彼のストーリーを書きたいと思います。

ラグビーワールドカップではコミュニティーエンゲージメントとして、各チーム グループ戦中に最低1回地域と交流を持たなければいけない。と言うルールがあります。
中学校へ訪問して軽くラグビーを通じて生徒と交流したり、大津市では琵琶湖クルーズをファンと一緒に行ったりしたりと様々な交流をします。
ウェールズは比較的多く交流会を持ったチームでした。
メンバーはマネージメントが決める事が多いのですが、アラウィンは毎回学校訪問には必ず立候補して参加!
とある中学校を訪れた時でした、アラウィンが付いたグループでラグビーボールを2個使ってお手玉の様なハンドリングをしながら輪になってボールを回すゲームをしていた時、そのグループ内で1人の男の子がなかなか上手く出来ず毎回その子の所でボールが落ちてゲームが止まってしまって、周りの子も少しその子に文句を言う状態になってしまってました。その子も自分で自分がミスしている事で周りのみんなが楽しめてないのに責任を感じでいた様子で申し訳なさそうにしてました。
でもアラウィンはずっとその子の横について、手取り足取り真剣にコツを教えてました。
遂には言葉の問題で教えられてないと感じたのか私を呼び通訳して欲しいと言い出しました。
何回も何回も自分でやって見せては説明し。
予定の時間が近づき司会が終わりの合図を出しても、アラウィンは無視してその子にボールを回します。
遂に最後、1回だけ。
たった1回だけだけどその子が成功した時、その本人よりも喜んでました。

そして交流会は生徒たちとの記念写真を撮ってお終いとなるのですが、写真撮影の間に後片付けをしてた私に写真撮影が終わった途端、アラウィンはボールを1球持って来て欲しいと言いました。
ボールをアラウィンに渡すとあの子を呼んできて欲しい。と言うので彼を見つけて連れて行きました。
そしたらアラウィンはその子に「私も昔は体が大きいだけでハンドリングが凄く下手で良くバカにされた。でもさっきの君の様に挫けそうでも努力を続けてきて、今ウェールズのキャプテンを任されている。誰でも努力すれば何だって出来る。このボールを君にプレゼントしたい。いつか素晴らしい選手になる事を願ってる」と言ってボールをその子にプレゼントしました。
その通訳をしてる時点で私は泣いてしまいました。
チームにとってボールってとても大事にしてる物なんです。
50球ありましたが1球でも足りないと凄く探す様なチームでした。
それを知っていたから余計にアラウィンがした事がどんなに意味がある事なのか分かったんです。

そして交流会が終わり体育館から退場する時、中学校のラグビー部員達が選手を見送るために体育館の外で待っていた時、中学生が帰ろうとする選手に勇気振り絞って「サインして下さい」って言い選手達は勿論!と言ってサインをし始めたんですが、ここで少し問題が起こってしまいました。
ラグビー部員達はみんなキラキラした目で憧れのウェールズの選手のサインを貰う為に列を作って待ってたんですが、学校関係者の人が色紙にサインをしてもらおうとして列に並ばず割り込んだんです…
横からそれを見てて、あっ!と思いました。
その時です、屈んで中学生のシャツにサインをしてたアラウィンが立ち上がった瞬間、阿修羅がそこに居ました…

試合中のあの顔でその大人の顔まで3cm位に近づき
「お前は誰だ?見て分からないのか?子供達は誰に言われずにでも全員並んでいる、お前のした事は教師がすべき行動ではない!」と大激怒。
余りにも凄い形相だったので中学生も雰囲気を察して少し気まずくなってしまいましたが、アラウィンはサッと切り換えて笑顔で次の子の肩を抱きサインしていき事なきを得ました。

結果サインを貰えたのは子供達だけ、大人はその人のせいで誰一人サインも写真も撮ってもらえませんでした。
(まぁ当然ですよね…ホント残念…)
帰りの車でも何回もあり得ない大人だったと繰り返してました。
そんな事を見て聞いて、アラウィンって凄いなって本当に尊敬しました。

それからいつかの試合の後、ゲームが終わってロッカールームに戻る時。
はいていたショーツを観客席に投げ込もうとした時を後ろからふと見ていたら、アラウィンは投げ入れる前に観客席に指をさしてました。
そして投げ入れた直後、指差した方向にナイスパスと思ったらガレスばりのインターセプト…
あっ!と思ったらまた阿修羅が(笑)

走ってアラウィンの横まで行って、インターセプトした人に「アンタ!アラウィンはアンタを指指してなかったやろ?アラウィンは隣にいる子に短パン投げたんや!それはその子のや!」って大声で叫んでました(笑)
周りにはものすごく多くの人が居たので、その人もすんなり子供にショーツ渡してくれました。流石にその状況で持って帰れないですよね。
それを見届けたアラウィンは最大級の笑顔で私に「Good job mate!!」と言ってくれました(笑)

そんな子供達の事が大好きなアラウィン。
ブロンズファイルで負けてしまった後、ピッチで自分の子供を2人抱えて2人の胸に顔をうずめながら泣いてる姿が私の印象に残った誰も知らないアラウィンの一面です。

チームとお別れをする空港で、1番最初に私の前に現れたのはアラウィンでした。
アラウィンの事を一選手として、ウェールズのキャプテンとして、このストーリーに書いた内容の漢として見てきて最後にアラウィンから、「お前達がウェールズの担当で本当に良かった、7週間ありがとう。中学校での事や短パン事件で俺の事をよく見ててくれたのがわかったよ。今度は君達がウェールズに来て我々のアテンドを受ける番、いつでもウェールズにおいで。俺たちはファミリーとして迎える」と言われハグされ大きな彼の胸に顔を埋めた瞬間に大号泣しました。泣かないでサヨナラしようと思ってたのに…

ウェールズの偉大なレジェンド。
アラウィンジョーンズ。
彼が打ち立てたCAP135はウェールズでは勿論、世界でもそうそう抜かれる事はないだろう。
ワールドカップではも見れないかも知れないけど、リッチーマコウの世界記録148capを抜くまで現役を続けるであろう彼のプレーを見続けたいと思う。ありがとう!

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