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10/20 DAY#36 QF vs フランス

今日のスケジュール
08:00 朝食 ボディースクリーニング
10:45 アドバンスチームホテル出発
12:10 軽い筋トレ
12:30 ウォークスルー
12:45 試合前食事
14:00 チームホテル出発
16:15 vs フランス KO
20:00 ディナー
*チーム荷物は翌日10:00に積み込み

いよいよ今日はQF フランス戦。
決勝トーナメントからが本当の勝負。
特にフランスはムラがあるけど本番にとてつもなく強いイメージ。
不安はあるけどここはチームを信じて戦うのみ!

僕はいつものアドバンスチーム。
皆んなより先にスタジアム入り。

一昨日にアランにココのチケットを売って欲しいとお願いしていたけど、決勝トーナメントはやはり人気で分からないと言われていた。
けど昨日マネージメントディナーの時に呼ばれてチケットを用意してくれた。

ア「ヤーマン、ちょっと来い」
ラ「はい」
ア「これを渡しておく」
ラ「あ、チケット!ありがとうございます!」
ア「決勝トーナメントになるとなかなか私の元にも回ってこないんだ」
ラ「ありがとうございます、幾らですか?払います」
ア「お前は我々のファミリーだから特別に用意したんだ、お金は払う必要は無い。明日キャロラインに会ったら御礼を言っておけ」

どうやらWRUのフィナンシャルアドバイザーのキャロラインがWRUの予算で用意してくれたみたいだ。
ダメ元でお願いしたんだけど、こんな風にしてくれるなんて思っても見なかった…
本当にありがたい話だ…
これでココも試合を観に来れる。

朝食後にキャロラインを見つけ御礼を言いに行く。

ラ「キャロライン、チケット本当にありがとうございました」
キ「あらヤーマン、良いのよ。あなたはとても良く働いてくれてるし」
ラ「いや、これは仕事ですから」
キ「あらそう?アレックやシューもそうだけど仕事を超えた何かを選手達やスタッフと話してるのを見て感じるわ」
ラ「そうなんですか?」
キ「ええ、とても。でもそれはWRUにとって大事な事、私達の使命はラグビーを通してウェールズを知ってもらう事。貴方達はそれを知らずのうちにやってのけてるの。 特に意識して無くとも。」
ラ「そうなんですかね」
キ「今まで私達は貴方達の事を見てきたわ。そして他の人達にもその事を聞いてみたりしたの。ホテルのスタッフだったり、組織委員会の人にも聞いたわ。そしたら皆んなが貴方達の頑張りをとても誉めてた、選手達やスタッフと直に触れ合いファンになったけど貴方達が居たからもっとそうなれたと言っていたわ」
ラ「そうなんですね!それは光栄です」
キ「だから貴方達はもう私達にとってこのRWCでは無くてはならない存在。ファミリーなのよ。アランもそう言ってたわ、きっと恥ずかしがって貴方達には言わないでイケズな事ばっかり言ってると思うけど(笑)」
ラ「アランらしいですね(笑)嬉しいです。ありがとうございました」
キ「どう致しまして。これからも宜しくね、まだまだ先は長いわ」

キャロラインやアランからそう言われるととても嬉しい。
しかも今までのホテルのスタッフさん達までもそう言ってくれると尚のこと。
組織委員会もって言ってたな…
後でナツさんに聞いてみよう。

僕は先にスタジアムへ向かうけど、ココにはやって貰いたい事があった。
それはチームの家族バスの先導役。
決勝トーナメントに入り益々チームの家族は増えていく一方だった。
取りまとめはアレックがやってたから正確な人数は把握して無かったけど、今回もスタジアムへ向かうバスを用意する必要があった。しかも大型の観光バス。

勿論僕達はモ○えもんさんにお願いし、だいぶ前から一台バスを社長にお願いしてもらっていた。
今回の報酬はスタジアム内に車を停められる許可証(笑)
幸い僕達はチーム車両を全て使わないので、一枚を回した。
今だから言えるけど、多分当時バレてたら相当怒られてたな(笑)
危ない橋かも知れないがチームの為ならと内緒でこんなこともやっていた(汗)

ココに家族バスの段取りを伝えて後はお任せ!
アドバンスチームはホテルを出発。

そしてスタジアムへ到着。
手慣れた容量でいつもの様にロッカールームをドレスアップしていく。
しかし今日は気をつけないといけない事がある。
事前のメンバー発表では13番にはジョナサン・デービスがスターティングに入っていたが、実は第二戦のオーストラリア戦で痛めた右膝の状態が悪くなってきてて、昨日までの練習で思っていたパフォーマンスに達しておらず本日の大一番ではプレーすべきでは無い。との判断したのだ。
よって代わりにオーウェン・ワトキンを13番、リー・ハーフペニーをベンチ外から23番に急遽変更となった。
でもこの変更は試合開始前ギリギリに公式発表する事に。
なので試合前のロッカールームを撮影するメディアにそれがリークしない様に、公式発表のままロッカールームをドレスアップする必要がある。
ドレスアップが終わりメディアクルーが撮影してから、選手が到着するまでの約20分の間に13番と23番を再セットアップする。

そんな作戦も上手い事行き、今日の僕の仕事はここまで!
チームバスが到着し選手達がロッカールームへ入っていくのを廊下から見送る。
後は選手達を信じてノーサイドの瞬間まで応援する事だけ…

KOの時間が近づいてくる。
拍子木がまだかまだかと世紀の瞬間を待ち侘びる観客の視線をピッチへと集める。
そして和太鼓の音がそんな観客のボルテージを最高潮へと盛り上げる。
その和太鼓の間、優勝トロフィーエリスカップの両サイドを両国選手達が静かに確かな足取りでピッチへと向かう。
両国の国歌斉唱が終わる頃にはスタジアムの熱は膨張しはち切れんばかりにホイッスルを待つ。
そしてカウントダウンが始まりついにKO!

*あの熱狂をもう一度!という方は↓ハイライトをどうぞ!

■ウェールズキックオフのボールをノッコンし主導権を握れるかと思ったがフランスの鋭い出足のDFと正確なキックでエリアを取られる
■前半5分、フランス、ラインアウトモールからラック一気にゴールライン前まで前進するとバーハマヒナがラックサイドに飛び込み自身テストマッチ初トライで先制。ヌタマックのコンバージョンはポストに阻まれる
■そのリスタートKOからのパントをフランスに再獲得された直後のラックから、何でもないライン攻撃にナヴィディがバカタワに突破されそのまま繋がれて追加トライ。コンバージョンも決まり開始8分で 12-0 とされてしまう
■そして12分、相手ラインアウトからジェイクのタックルで溢れたボールをウェインライトが拾い真ん中へトライ。 12-7
■エリア獲得のキッキングゲームが続き20分にダンビカーがPGを決め 12-10 とする。
■27分にハムストリングを痛めたナヴィディに替わってロスがピッチに入るも、ファーストプレイでハイタックを犯しいきなりのシンビン…
■そしてそのペナルティからタッチ→ラインアウト攻撃からフェーズを重ねられ、バカタワにトライを許す。 CKも決まり 17-10
■リスタートKO、敵陣でのキックチャージもそのボールがフランスに入り一気に自陣まで攻め込まれる。どうも今日はリスタートが良くない
■そのまま自陣に釘付けにされ、PKを与えるものヌタマックがまたポストにあて得点は 17-10 のままハーフタイムを迎える
■後半はフランスFHヌタマックが右脚を負傷しカミーユ・ロペスと交代してスタート
■後半もエリア獲得にてフランスがウェールズ陣に攻め込む展開、しかしここであの事件が起こる…

■48分、先制トライをあげたバーハマヒナがラインアウトモール内でウェインライトにネックロール&エルボーの併せ技で一発レッドカード
■レッドカードでゲームが動く。このPKから敵陣に入ったウェールズはそのまま54分にダンビカーがPGを決め 19-13 とする
■しかしフランスは14人ながらもバカタワを中心にウェールズを攻め立てる
■人数の少ないフランスはポゼッションを取る為に制空権を取るべくキックを多用しながらラストクォーターに突入
■62分、フランスのノッコンから久しぶりに敵陣に入る事に成功するもチャンスをものにできず、そこからはお互い行ったり来たりの展開
■72分、ハーフウェイ付近で得たPKからタッチ→ラインアウト→からラックでディロン・ルイスがノックオン
■74分、ノックオンからの相手スクラムでFWがスクラムを押し、トモス・ウィリアムもぎ取ったがボールを最後はロスが押し込みトライ、CKも決まり 19-20 逆転!
■キックオフリターンからのキック処理をメダールがデッドゴールを割ってしまうミスでウェールズが敵陣をキープ
■そのままマイボールキープし最後はダンビカーがボールを蹴り出してノーサイド!

本当に死闘だった…
何回も心臓が止まりかけた。
その度に大声で応援し続け、終わる頃には声は枯れていた。

あのレッドカードが全てだったと今でも思う。
途中のハイライトでも見てもらってもわかるように、バーハマヒナはレフリーの位置を確認して行為に至っている。その後もバレてないかレフリーを見ている。相当悪質だ。
言わなくても本人もわかってると思ってるが戦犯である。
初テストマッチトライも記録し、明日が自身の誕生日でもあったのに全てが台無しになっただろう。
これは僕の経験談でもあるが、普段の行為もプレーとして現れる。
普段からラフプレーをしているんだろうと思う。
じゃなきゃこんな事をこんな大事な時にやらない。
それくらい思い詰めてたのかも知れないが…

とにかく、終わってみれば1点差!
しかも最後は数少なかったチャンスに一昨日アラウィンと揉め、途中交代して即イエローを貰ったロスが押し込んだ。
神様は見ていたのかも知れない…
僕達ウェールズチームにとっては本当にミラクルな展開での逆転勝利だったのだ。

試合の興奮は終わってからロッカールームに帰ってきても冷めず皆んなすごいテンションだった。
そこへガッツが皆んなを集めて祝福と戒めを伝える。
ガットランドが名コーチなのか、ウェールズボーイズが謙虚なのか、いやその両方なんだろう。
先程までのテンションは一気に落ち着き、喜びながらも次の試合に向け冷静さを取り戻したかの様に普段のロッカールームに戻る。
これにも凄く驚いた。
なんてチームなんだと思った。

そして後片付けも進み、いつもの様にジャパンの試合をロッカールームで観入る。
ハーフタイムで 3-5 と期待を残した状態で大分スタジアムを去る。
大熱狂に包まれたQF大分は全日程を終えたがバスが出る時もまだその熱気を溜め込んだままだった。
多くの人々がまだスタジアムに居たからだろう。
あと二時間もすればスタジアムは落ち着きを取り戻し、終わってしまったワールドカップの余韻で寂しくなってしまうかも知れない…

そしてバスはホテルへ到着。
ホテルで迎えてくれるのは選手家族や恋人にファン、そしてホテルのスタッフさん達。
皆んな同じ心境だっただろう、だからこそ出迎え時の笑顔と祝福の拍手はいつもより大きく感じた。

そしてホテルの吹き抜けになっているバーで皆んなでジャパンを応援。
負けてしまったけど本当にウェールズの皆んなは最後までジャパンを応援してた。
どうしてもジャパンと試合がしたかったらしい。
きっと決勝戦も凄い雰囲気だろうけど、ジャパンと対戦する方がもっと凄い雰囲気になっただろうと、そして何より日本のファンにウェールズがジャパンと試合をしてウェールズを観て欲しかったと言ってた。
勿論そうなってもウェールズは勝つけど。とも(笑)

ジャパンが負けてしまった時、バーは大きな拍手と歓声に包まれそこにいた全ての人がジャパンの戦いを讃えていた。
僕達やホテルのスタッフへまで賛美を語り握手を求めて来たくらい。
これにはホンマ感動したし、僕はジャパンチームでも何でもないけど誇らしかった。
彼らもこのワールドカップの成功はジャパンの躍進無くして成功はなかった。と断言してたのがとても印象的な夜だった。

そしてそのままバーで夜が更けていき、三三五五と人数が減って来た頃、アランと話す機会があった。

ア「おいお前ら、ちゃんと飲んでるか?」
ラ「はい、もう精神的にクタクタで酔ってますけど頂いてます」
ア「ようやくここまで来たな…後2つや」
ラ「はい、これで本当の最後までチームと居られる事も決定しました」
ア「そうやな、まさかお前らと最後まで居るハメになるとはな(笑)」
ラ「3人でここまで来たんですから、ちゃんと最後まで責任持って使って下さいよ」
ア「あぁ勿論や、俺は漢やぞ一回言ったらその通りに実現するんや」
ラ「はい」
ア「しかしホンマ危なかったけど、最後はチームの規律で乗り切れた。ワシがコイツらに何年も言ってきた事がそのまま試合に現れたわ」
ラ「ですよね。一昨日言ってた事がホンマにホンマになった…謙虚たれ。良い言葉ですね」
ア「アホやのによう覚えてたな?(笑) その通り、謙虚たれ。いつでもそうや。今日それがチームの勝ちに繋がってワシは嬉しい、これでワシがおらんくなっても何とも無いって事や!」
ラ「え?どういう事ですか?辞められるんですか?」
ア「ああ、今年でウェールズを退く」
ラ「えぇ!?そうなんですか?チームマネージャー辞めるんですか?」
ア「アホか!チームマネージャーはワシの天職や!」
ラ「どういう事ですか!?」
ア「ガッツとライオンズや。ライオンズのチームマネージャーやんねや」
ラ「ええ!!!そうなんですか?」
ア「ああ、まだ誰にも言うなよ!」
ラ「ええ、それは勿論口が裂けても言いません!」
ア「まさかウェールズ最後のツアーのリエゾンがお前らアホ3人とはな(笑) 忘れたくても忘れよう無いわ!」
ラ「なんか…すんません」
ア「アホ!褒めとるんや!」
ラ「ええ!そんな褒め方あります!?」
ア「もーえーわ、とりあえず明日からまた東京や。しっかり働けよ」
ラ「はい、勿論です」

そうか、アランは辞めるんだ…
今日の激闘を制し例え次に負けても最後まで一緒にいる事が決まったのに、なんか僕達の心はその一言で満タンになってしまい、
なんとも言えない気持ちでベッドに入るのでした…

続く

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