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10/18 DAY#34 チームでの内戦勃発…

今日のスケジュール
08:00 朝食ボディースクリーニング
09:40 チーム戦略ミーティング
09:50 オプションパワートレーニング (メンバー外のみ)
10:50 ホテル出発 AM練習
11:45 キッカーとコーチ スタジアムへ
12:45 ランチ
13:00 メディア
16:00 スナック
17:45 FWミーティング
18:00 ディナー
21:00 スナック

今週はいつもとは少し違うスケジュール。
キャプテンズランはスタジアムではやらず、普段の練習グランドで行う。
と言うのも大分スタジアムはフィジー戦で一度ゲームしてるので勝手がわかっているから。
一応ワールドラグビーでの取り決めは、スタジアムか練習グランドでやる事。となっているので問題は無い。
それでもキッカーはスタジアムで蹴る必要があるので、午前の全体練習が終わったらそのままスタジアムへ向かいキッキング練習を行う模様。
これに伴いマネージメントとセキュリティーについてスタジアムでミーティングがあるとの事なので、この帯同はシューちゃんにお任せした。

昨日はオフで明後日には試合なので、今日の練習は一部連だけど少しハードに行うと言っていた。

いつものルーティンで朝食ミーティング。
各役割を決めたら後は遂行するのみ。

僕はいつものアドバンスチーム担当。
グランドで練習の用意をする為に皆より早く出発してグランドで準備を整え待機する。
フランス戦メンバー外の選手達が先にグランドへ到着しジムで筋トレ中心のトレーニングを開始。

因みにこのレベルの選手達となると我々が知っている普通の筋トレはしない。
普通とは定義しにくいけれどベンチプレスで例えると、一般的には自分が挙げられる最高重量の80〜100%の重さで重量を変えながら10回 x 3セットを休憩を挟みながら行うと思うが、彼らは準備運動をしたら即80%に近い重量のバーベルにゴムバンドを仕込み、更に荷重を増やす。そして回数は3〜5回で速く行う、そして終わったら即自重で腕立て伏せを不安定な小さいバランスボールの上で行う。
といった変わったトレーニングを行う。
勿論これ以外にも筋トレはするのだが、彼らがメインで行うのは先に紹介したベンチプレス以外だと、デットリフト、ヒップスラスト、スクワット、懸垂でした。
(勿論それ以外もやってると思いますがよく目にしたのはこれらです)

そして他のメンバーもグランドに到着し全体練習の始まり。
聞いていた通り基礎スキルは勿論の事、フィットネスやコンタクトは相当激しい練習に…
息をあげる選手達、苦しくて倒れ込む場面も。

そしてユニット練習に差し掛かった時、事件は起こります…

FWがラインアウトの練習をしている時でした、遠くに居た僕にまで届く大きな怒号。
今まで練習で耳にした事のない声。
聞いた途端に何かが起こっているのを察知しました。
声がした方向をみるとFWの選手達が集まっている。
一瞬モールの練習かな?と思ったら、試合中よく見る乱闘でみんなが止めてるシーン!
その中心をみると、キャプテンのアラウィンとロス・モリアーティが胸ぐらを掴み合ってお互いの顔面の距離は5cmくらいで言い合いをしている!
2人を引き剥がそうとする選手達とロビンとショーン両コーチ。
試合さながらのファイト。引き剥がすのも時間がかかる。
さり気なく近づき、近くにいたアレックに聞いてみた。

ラ「どーしたん?」
ア「いや、よくは分からんけどロスがタックル行った後、起き上がる時にアラウィンが何か言った事にロスが怒ったみたい」
ラ「そうなんや…今日の練習何か雰囲気違うよな?」
ア「そやねん!俺も何かそんな事感じてた!」

ロスはやんちゃな選手。
普段は冗談を言うお茶目で優しい奴だけど、黙ってたら見た目通りな奴。
でもこれまでの他の大会やテストマッチでもよく乱闘してるし
タトゥーの数も1番多い(笑)

やっぱり決勝トーナメントだからだろうか?
今日は練習内容も練習の雰囲気と明らかにいつもと違う雰囲気。
そんな事もあってピリピリした空気がグランドに漂う。
そんなやりとりをしてると、何とまた2人が取っ組み合いを始めてしまった!
今回はその瞬間を見てしまった!
ショートラインアウトからサイドをアラウィンが突破しようとした時、ロスがハイタックルギリギリの際どい強烈なタックルをお見舞いしたのだ。
バチンっ!と鈍い音がした瞬間、さっきの余韻もあってアラウィンはボールを投げ捨てロスの首にヒジをめり込ませて押し倒す…
そして揉みくちゃ状態に…
周りの選手達が慌てて止めに入る。
マジギレしてる2人…
なかなか引き剥がせない…
ロビンが笛をカミナリの様に大きく吹き、
いつも物静かなショーンが大声で怒鳴る。

それで2人は離れたものの、指を差し合いながら大声で罵りあっている…

めちゃくちゃ緊迫しつつも気不味い雰囲気が冷気の様に流れ込む…

そこへアランが近づいて行き皆に聞こえる大声で話し出す

ア「ハハハハハ!アラウィン、ロス!ナイスファイトや! フランス野郎供はきっとこんなもんちゃうぞ⁉︎ もっと執拗にお前らの事を色んな方法で落とし入れてくるだろう。何故ならこれはワールドカップの決勝トーナメントだからや!良いか?皆んなよく覚えておけ、何があっても勝つ事が全て。グランドで何が起きようとも最後に相手より点数で上回っている事が最優先事項なんや!その為には何でもする。逆に言えばその為には何をされても耐えなくてはいけないんや!それが国を代表して戦うって事や。その覚悟が無い奴はジャージを着てグランドに立つ事は出来ない。そうだろ?今2人は2つの大きな意味を体現した、一つは相手が誰であろうが敵ならば本気で潰しに行く戦いの意思表示、そしてもう一つはその意思表示を違った意味で捉え返してしまったらどうなるのかと言う事を表した。やられっぱなしで居ろとは言ってない、やられたらトコトンやり返せ!ただしラグビーでや。相手が逃げ出すまでコテンパンにやり返せ! 今日は良い練習や、俺がプレーヤーだった頃はこんなん日常茶飯事やったぞ。久々にお前達の良い練習が見れたわ。今日はこれで終わりや!」

そう言って練習を切り上げさせた。
まぁあのままの流れで終わってるより良かったと思う。
こう言う空気読む所もアランは流石としか言いようが無い。
この後選手達はまだ少し起きた事に戸惑った雰囲気だったけど、コーチ陣は至って普通。と言うか逆にアランみたいに笑ってた。
ガッツやヒューも笑いながらアランと同じ様に、俺らの若い時は良くあった事で逆に今のウェールズにはあまり無いものって言ってた。

確かにそう言われると僕もわからなくは無い。
僕も高校時代に似た様な経験がある。
母校は当時もラグビー人気校、部員は130人以上いた。
秋季大会終わり花園に行く事が決定した後に部内マッチが行われる。
このゲームでいいパフォーマンスをした選手が花園でメンバー入りできる。
このゲームに於いては普段の同期や先輩後輩の関係は一切無くなる。
25/130人に入れるかどうかだから。
確率は2割弱、試合は毎年激闘となる。
コンタクトプレーは勿論、今回のアラウィンとロスの様な乱闘騒ぎになる事もあるし全部のプレーが激しくなる。
理由は簡単トイメンの選手が怪我をしたらチャンスが広がるから。
皆んな頭からタックルしてくる。
その結果花園に出れるメンバーが決まる。
そしてメンバー発表の際は同じポジションの同期や先輩後輩から祝福を受ける。
いつもその時の皆んなの瞳には諦めと決意がこもってた。
俺の分も走れ、タックルしろよ、スタンドから応援してるぞと。
これをした事もあるし、された事もある。
僕が花園の決勝でノーサイド前にトライしながら泣いてしまったのは、負けたからじゃない、仲間の想いに応えられなかったから。
敗因の一因を作ってしまった僕に、ラストプレーに入る前に最後にトライを取ってくれ!と叫ぶ仲間を見たから…
切磋琢磨って言葉があるけど、この状況にこれほどマッチする表現は無いと今でも思う。
恐らくアラン達もこの様な事を言ってるんだろうなと思った。

昼からは僕はセラピストのカークを病院に連れて行く役、足の親指が巻き爪になり歩くのも痛いらしい(笑)
病院に行くと巻いている爪を切る事に。
麻酔を指に挿すのだが、元代表選手のカークは悶絶…
ラグビー選手あるある、こういう小さい痛みが苦手なのは万国共通らしい(笑)
(僕も超苦手です!)

そしてディナーからは少しチームと離れ、ココと別府の街へ行く事に。
いつ振り?って位の焼肉屋に行き、アーケード街にある美味しそうなアイスクリーム屋さんに行くと、そこには普段の別府ではあり得ないラグビーサポーターに埋め尽くされた光景が(笑)
読者の皆さんにはRWC2019と言えばお決まりの懐かしい光景かも知れないけど、チームに帯同してるとこの光景に出会す事がほぼ無い。
何だか異国の地にいる様な感覚。
少しだけだけど感じた日本でのRWC。
こんな事が毎日毎晩どこかの街で起こってるなんて夢みたい…
何て感傷に浸ってたらシューちゃんから着信

ピロピロピロ♩
シ「今どこいるん?」
ラ「街中やで、アーケードら辺」
シ「近くやな(笑) アレックベロベロなっててヤバイねん」
ラ「いつもの如くやな(笑)」
シ「タクシーも乗れへんレベルやねん」
ラ「ほな車あるし乗せて帰ろか?」
シ「そうしてくれるとありがたい」
ラ「りょ」
プープープー

という訳で僕がいない分も飲んだアレックを拾いホテルに帰りました(笑)

続く

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