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10/15 DAY#31 相方JR

今日のスケジュール
08:00 朝食 ボディースクリーニング
09:00 リカバリーマッサージ
10:30 オプションジムセッション(希望者のみ)
12:30 ランチ
13:00 メディアインタビュー
14:30 ミーティング
14:45 ホテル出発 PM練習
16:30 スナック
17:15 FWミーティング
18:15 ディナー
21:00 スナック

いよいよ今週から決勝トーナメント日程がスタート。
一昨日のプールマッチ最終戦から2日経ち、敗退が決まったチームは今日を最後に日本から去っていく。
敗退決定チームは試合終了後72時間以内に帰国しなければならない規定がある。
これは僕達にとっても同じ事。
今週末のゲームに負ければ即チーム解散…
正直大会が始まる前からベスト8は必ず行けると思ってたが、それ以降は全くわからない。
ラグビー はジャイアントキリングが起きにくいスポーツだけど、正直このレベルでトーナメントの場合はケガ人やコンディション、それまでの戦術などで状況が一変する。

クォーターファイナルの相手はフランス。
初戦アルゼンチンに23-21で競り勝ち
続くアメリカは大勝するも、トンガには23-21と大接戦。
全プール戦でも好カードとされた大一番のイングランド戦は台風によりキャンセル。
直前での力量を確かめるチャンスも無くなった。
実力はあるもののムラがあるチーム。
過去大会でも何度も前評判を覆し勝っているチームだけに気が抜けない。
ただだからといってウェールズが今更出来る事など何もない。
チームアナリストとコーチ陣が導き出した戦術を遂行すべく、万全の状態を保つべく日々トレーニングにあたる。これしかないと思う。
その為に僕達も出来るだけの事をするだけ…

そんな事を思いながらいつもの朝ルーティン
今日は午前は全体練習がなく、ウェイトトレーニングだけなのでそんなに忙しくないかなーと思ってたら、JRが買い出しに行きたいと言い出した。
ウェイトトレーニングに付き添い、帰りにコンビニに寄れば良いかと思ってたらコンビニは高いからダメだと言い出した。
何を今更言うとんねん(笑)
あ、終盤に差し掛かり予算の心配かな?
そして業務スーパーやマックスバリューに寄ってみるも、業務スーパーではアレは有るけど他がない!と言い、次のマックスバリューに行くと言い出しマックスバリューでは業務スーパーで売って無かった物はあったものアレが売ってなくて結局買わない。
だから業務スーパーで見つけた分を先に買っておけと忠告したのに…
で、じゃマックスバリューで買って足りないのを業務スーパーに買いに戻るか。と聞いたら
「No !! We should go to a next store that has everything I want !!」

は?こいつ何いってんの?
ちょっと意味不明だったので大人しくもう一度聞いてみた。

「いや、この店とさっきの店に行けば欲しい物全部揃うやん?」

JR 「No! I don’t want to pay separately!!」
(別々に払いたくない)

は?お前何言ってんの?
コレにはマジでブチ切れた。
何故なら今買いに来てる物は、練習中にマネージメントが食べるおやつやコーヒーや紅茶。
はっきり言って必ずしも必要な物ではない。
そして何よりこっちに無くてあっちにあるで揉めている物が、
ハリボーのグミ!
これまでも何度もこの熊ちゃんのグミで揉めて来た。
その度に日本にはもっと素晴らしいグミがあるから試してみろ。と勧めてたが、偏屈オヤジのJRは全て無視。ハリボーしかグミと認めない。
他のを食べてもいないのに!
他にも色々あって、ポテチの味について毎回スーパーやコンビニで説明させられる。
これは何味だ?それコンソメ、これバター醤油であっちがのり塩。
その度になんだかんだイチャモン付けて買わずに毎回BBQ味のスナック菓子。
他にもコーラはオリジナルは瓶だからペットボトルは買わない、
瓶のコーラ探せとか。
買出しに行く度に同じ事をしてる。
結局買う物はいつも同じ。
えー加減写メ撮って覚えるとかしろ!
そんな訳わからん理由で俺の時間を取るな!

挙句の果てにお金払うのを一回で済ませたいから、
全部手に入るスーパーを探せ、コンビニはダメ。
遂に我慢の限界でマジギレしてしまった。

平日午前中、のどかな地方のスーパーで
白髪の欧米人とチョンマゲの黒い日本人ぽい2人が大声で言い合い(笑)
嫌でも目につく。
呆気にとられて見入るおじいちゃんやレジのおばちゃん…
今から思うとかなりカオス(笑)

結局JRの言い分は支払いが複数回になるとアランに精算してもらうのが面倒、レシートで財布がいっぱいになるかららしい…
相手にするのがアホくさくなったので、カゴに入ってたハリボー以外の必要とされる物をレジに持って行き僕が支払い、ホテルの飯に飽きたとの理由でマックに寄れと言われてたので近くのマックでJRを捨て、その間にマックスバリューへ行き店にあるハリボーを全部自腹で買い占め、マックでハンバーガーを貪ってたJRに買占めたハリボーを段ボールごと投げつけてやった。
ハリボーに1万円くらい払うのは先にも後にもこれが最後だろう。
こんなに食えない、余ったらどうするんだ。とか言ってたけど無視。
余ったらウェールズに持って帰れと言い、今すぐ車に乗るか歩いて帰るか選べ、と言ってそのままホテルへ帰った。

帰っても僕の怒りは治らず、JRが一切整理しない散らかったストレージルームで物にあたっていたらシューちゃんとアレックが来て驚く。

シ「コウジュ、どうしたん?めっちゃ荒れてるやん?」
ア「JRと何かあったんか?」
ラ「カクカクシカジカでJRを殺してしまいそうや…」
シ「マジ?それはないわ(笑)」
ア「ちょっと問題やな…これ以上JRと仕事出来んやろ」
ラ「いや大丈夫、何とかする」
シ「無理やろ(笑) あいつが改心する事はないで」
ア「ちょっとアランに言うわ」

暫くするとアランが僕に近づいてきた。

ア「ヤーマン、JRはどうしようも無い奴や」
ラ「いえ、僕がちょっと我慢出来なくなったのが悪いんです」
ア「いや、あいつに非がある。元々色々ある奴や。ジャージの刺繍ミスとかISUZUのギアの問題とか」

実はJRはちょっと前にある問題を起こしてた。
ワールドカップではオフィシャルスポンサー以外の名前やロゴを露出してはいけない。
ウェールズはISUZUと契約してて、普段はジャージや短パン、トレーニングウェアにいたるまでISUZUのロゴが入っている。
ただしキャプテンズランやメディアインタビュー時はワールドカップルールでそれらを着用してはいけない。
なのにキャプテンズランでそれらを着てしまったのだ。
これはキットマネージャーであるJRが準備したもの。彼のミスだ。
このせいでチームは100万円弱を罰金としてワールドラグビーに支払っている。
試合中ヘッドキャップにテープを貼っているのもこの規定の為。
(ブランドのロゴを隠している)
試合前に飲むレッドブルなどもこれにあたるので、
缶にテープを巻き付けて何かわからなくして飲んでいる。

ア「とにかくJRにはちゃんと言っておく。だからこれからも自分の仕事にフォーカスしてくれ」
ラ「はい、ありがとうございます。元々そのつもりですから大丈夫です」

そう、朝もそんな話から始まった今日。
こんな事にいちいち構ってる事はない。
僕達はチームの為に今やれる事をやるのだ。
起きてしまった事は起きた事。
あれだけ買ったからもうハリボー事件は起きないだろう。
そう割り切って気持ちを治めた。

そさて昼からの練習でのアドバンスチームでJRとバンに乗ってグランドへ行く。
何も変わらないJR(笑)
謝ることもなく、助手席で悠々とキャンディークラッシュしてる…
まぁもう水に流したし、どうでもいいや(笑)
そしていつもの準備。

ここでまた問題発生。
スクラムマシンの排水キャップ部から水漏れしてる…
(水嚢に水を溜めて重くするタイプ)

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まぁ1か月ほぼ毎日水を入れ替え、チームと一緒に移動し使い続けてたから仕方ない。
プールマネージャーのナツさんに相談。
とりあえず別府キャンプははこれで乗り切る事に。

そうこうしてるとチームが到着。
練習が始まるも練習に参加せず、外で別メニューや見学してる主力メンバーがチラホラいる。
ウェールズチームはここまでの激闘で数名のケガ人が発生していた。
彼らを除いてフランスには勝てない…
短い時間だがリカバリーにフォーカスする為練習を避けているらしい。
このレベルの試合だと想像もつかないダメージなんだろうな…

練習を手伝ってると今日はやたらと色んなコーチに話しかけられる。
S&Cコーチのアシュビーとは、「俺も元選手だった、ヤーマンはどこのポジションだったんだ?」とか
ガットランドには「台湾ってラグビーあるの?」とか
普段一切喋らないDFコーチのショーンにも話しかけられてラグビーの話をしたり…

まさかこれが壮大な振りだったとはこの日は思っても見なかった…

全体練習も終わり、個人練習へ。
CTBはパス練習、FH,WTB,FBはコンテストキックのキャッチング、
ラインアウトスローワーはスローイング。
そして僕はいつもの通りキッキング練習のお供。

それにしてもいつ見てもキッカー達のキック精度には驚かされる…
SHも含めて試合中にキックを蹴るプレーヤー全員にその心得を聞いたのだが、全員が殆ど同じ答えで

・いつも同じフォームを心がける
・蹴る脚よりもボールを落とす手が大事
・ボールを蹴る瞬間はボールしか見ない
・狙い通りかどうかは蹴った感覚と音でわかる
・100%の力で蹴らない
・誰でも練習すればある程度のレベルに到達する

だそう。
これを聞いて以来、実は僕もゴールキックの練習を始めた(笑)
近くにいると本当に参考になる事ばかりである。
あともう一つ彼らが口にしていたのは、
「上手くなりたいと思う事」と、
「楽しみながら目標を定めて練習する事」
確かにキック練習の時、ゴールキック以外では彼らは精度で賭け事をして仲間で盛り上がり楽しく練習してた。
これは何にでも通づるポイントだと思うな。 
特に育成期のプレーヤーには大事な事。
楽しくなければ続かない。

ダンビガーのお手本のようなキックスローモーション
・手から離れたボールは1mmも動いてない
・蹴る瞬間はボールを見てる
・キックモーションに入るとGKと同じフォームに

さて練習も終わり、ディナーが終わればそろそろ次のプレゼント企画を進めなければ。
と思ってたらアランが近くに隠れ家的な飲み屋があるとホテルの人に聞き、早速行きたいとの事で3人でお供する事に…
どうしようと思ったけど、こうしてアラン達と飲みに行くのもひょっとしたら今週で終わってしまう可能性があると思うと、逆に行きたくなってしまった。
敗退チームのリエゾンはもう解散してしまい、
夢の時間が急に無くなってしまった事で放心状態になってるとも聞く…
1分いや1秒でも多く彼らと一緒にいたい!
絶対にこのチームと優勝したいと話しながら、
真っ暗な夜道を3人で歩き店に向かうのでした。

続く

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