『akibaらーめん豊穣記』 華音パート



◆今回予告◆

ラーメンとは人類の口の永遠の友。
これは異世界で麺とスープと具材を探求する熱き日誌である。

ログ・ホライズンTRPGソロジャーナル『akibaらーめん豊穣記』

魂の翼持つ〈探求部〉たちよ、
明日の星に輝けと、
虹色にルネッサンスな情熱の彼方にラーメンの記録を刻め!

◆使用シナリオ情報◆

使用シナリオ:Hasturさん作『akibaらーめん豊穣記』
シナリオ配布場所:akibaらーめん豊穣記 (talto.cc)

◆使用PC紹介◆

華音(法儀族 / 魔法攻撃職 / 妖術師)
Lv. 90 [法儀族][妖術師][女性][調教師][ネカマ][お嬢様][馬カス][ヤマト中央競馬会]

金髪縦ロールネカマお嬢様。女声の心得はないのでテノールボイスのお嬢様言葉が特徴的。競馬をこよなく愛し、〈ヤマト中央競馬会〉という新興団体の理事長を務めている。

◆本文◆

○まえがき

 あれはとある冬の日。第一回ヤマトダービー開催の準備もあらかた目処が立ち、わたくし達運営陣がようやく人間性を取り戻した頃でした。執務室に缶詰だった日々に別れを告げ、夜のアキバに繰り出したわたくしは怪しい取引の現場を──、違った怪しい3人組に出会ったんでしたわ。

 とにかくその怪しい3人組がわたくしに提示した依頼こそがラーメンログの執筆だったのです。悪夢のような作業量から解放されたばかりのわたくしの体は、無意識に新たな作業を求めていました。ワーカホリック極まれりですわ。

 そんなこんなでわたくしは二つ返事で依頼を受諾。五夜に渡って練り上げたこのラーメンログ。とくとご賞味くださいまし。

○1:【理想のお店】『紅楽園』【鮎ラーメン】

A:麺の方向性 4:ノーマル中太麺
B:スープの味 1:香り高い醤油
C:特徴の具材 6:ちょっと特徴的なレアトッピング
D:店舗の構え 4:大通りの派手な店
E:店員の対応 2:さわやかな快活アニキ

 3人組と出会う直前に立ち寄ったラーメン屋は、いかにもな風体の王道路線でした。アキバのメインストリートに真っ赤な龍と雷文が踊り、外にまで醤油の香りが漂っていました。デスマーチ明けのわたくしは、操り人形のように暖簾をくぐっていたのです。

 店内は赤を基調にした中華の絢爛さと、どこか茶屋のような落ち着きが混じり合った空間でした。毛氈を思わせるからかしら、と頭の片隅で思いながらメニューを眺めます。イメージに違わず店員さんは半袖黒Tにタオル鉢巻。この寒いのに。

 ここまでド定番だと何か一つ外してみたくなるのが人の常。メニューの裏面にあった鮎ラーメンにしてみます。二十歳そこそこの兄ちゃんが「鮎一丁!」と厨房に叫ぶのを聞きながら、カウンターに置かれたお冷を傾けます。ああなんでもない水がこんなにも美味しい。自由って素晴らしい。

 しばらくして運ばれてきたのはお待ちかねの鮎ラーメン。芳しい醤油の香りにベーシックな中太麺、一際目を引く鮎の天日干し。早速取り掛かりましょう。割と理性が限界ですわ。

 うまい。

 香りは醤油だったのに、啜ってみると別の味わいがします。鮎の香りかしら。夢中で麺を片付けながら、忘れず鮎もほぐします。案外合うんですわね、鮎とラーメンって。

 我ながら凄まじいスピードで器を空にし、お勘定へ。
「ご馳走様でした。また来ますわ」
「あざっす!あ、お冷美味しかったでしょ、ウチ特別なやつ使ってるんすよ」

特別なんかい。

○2:かごしまラーメン『鹿屋桜』【鹿屋ラーメン-桜-】

A:麺の方向性 3:中細のちぢれ麺
B:スープの味 5:ご当地系の味
C:特徴の具材 4:マシマシ野菜
D:店舗の構え 6:どう見ても店に見えない隠れ家系
E:店員の対応 3:優し気で親切な若夫婦
〔判定成功〕  普通に美味しい。気が向いたら行く。

 王道を味わってこそ他の道が見えてくるというもの。次の日は隠れ家系の店舗に辿り着きました。表札の代わりに営業中の札がかかってなければ見逃してましたわ。がらりと引き戸を開けるとイメージ通りのこじんまりした内装。ご夫婦でやってらしてるんですわね。

 メニューの一番上にはかごしまラーメン。ということはどっちかは冒険者か。特に詮索する気はありませんけれど。ご当地系ならスタンダードを頼むのが吉。看板メニューの【鹿屋ラーメン-桜-】にしますわ。

 ややゆっくりめの提供でしたが昨晩ほど飢えていたわけではないので大丈夫。やってきたのは…あら?

 驚いた。九州のラーメンってみんな白濁豚骨系かと。鶏ガラベースに野菜多めの、健康的なラーメンから顔を挙げると、旦那さんの方と目が合いました。皆さんそんな顔をなさいます、と笑い顔。故郷の知名度を上げるべく店を開いたんだとか。

 素朴で優しい風味の美味しいラーメンでした。たまにはこういうのもアリですわね。

○3:中華そば『戚風』【バンブーラーメン】

A:麺の方向性 6:コシがある全粒粉もちもち極太麺
B:スープの味 1:香り高い醤油
C:特徴の具材 3:拘りのメンマ
D:店舗の構え 2:特徴のない一店舗
E:店員の対応 6:不愛想で頑固そうな職人じーさん
〔判定成功〕  普通に美味しい。気が向いたら行く。

 三日目ともなると今まで目に入ってこなかった店舗も選択肢に上がるわけです。特にアピールしていない下町の店舗。照明がわりの《マジックトーチ》もいまいち輝度が足りません。こういうところこそいいラーメンを出している…と何かの受け売りを胸に暖簾をくぐりました。

 ねじり鉢巻の禿頭に白いランニング、腹巻きに新聞紙と絵に描いたようなオヤジがいました。もうこれロールプレイの一環じゃありませんこと?これ素だったらえれぇことですわよこの平成の世に。

 席に着くや注文前にことりと置かれるメンマの小皿。あ、お通し?ラーメン屋ってお通し出てくるもんでしたかしら。名前が気になったバンブーラーメンを注文して小皿に箸を付けます。おいし。

 しゃきしゃきの繊維感によく染み込んだ醤油の風味。ふわりと漂う発酵食品特有の香り。シンプルながら極まったメンマの美味しさですわね。運ばれてきたラーメンにもメンマがたっぷり。これ一本で勝負するとは流石の頑固親父ですわ。でもチャーシューくらいはのせていいんじゃありませんこと?

○4:エッゾらーめん『茜天龍』【阿寒湖らーめん】

A:麺の方向性 1:バリカタ極細麺
B:スープの味 5:ご当地系の味
C:特徴の具材 1:チャーシュー
D:店舗の構え 2:特徴のない一店舗
E:店員の対応 1:景気のイイおねぇさん
〔達成値:12〕非常に美味しい。宣伝または秘匿しよう。

 ラーメンといえば北海道、と誰かが言っていた気がしたので今日は北海道ラーメンの店舗に来ましたわ。見かけは普通のラーメン屋、しかしその実アキバの北海道ラーメン総本山。それがこの『茜天龍』なのです(又聞き)。

 いやこれ二店舗分ぶち抜いてますわね、何が見かけは普通だあの野郎。

 暖簾をくぐると笑顔の眩しいお姉さん。いいですわね、やっぱり頑固親父よりはこっちの方がいい。カウンター備え付けのメニューを見ると「札幌」「函館」「旭川」……。へぇ、色々あるんですわね北海道ラーメンにも。

 名前でピンと来た阿寒湖ラーメンをチョイス。これは釧路風に属するんだとか。お、来た来た。

 カツオ香る黄金スープに極細麺、ネギにメンマにチャーシューと海苔。いいですわねこういうの。ラーメンって感じしますわ。一口啜ると強靭な歯応え。これがバリカタってやつですわね。なるほどこういうのもあるのか。

 ご馳走様でした。次は札幌にしようかしら。エッゾ全域制覇が楽しみですわ。

○5:台湾拉麺『黄金旅程』

A:麺の方向性 2:細麺ストレート
B:スープの味 1:香り高い醤油
C:特徴の具材 5:調味料香辛料
D:店舗の構え 2:特徴のない一店舗
E:店員の対応 5:力技の面白オッチャン
〔達成値:12〕非常に美味しい。宣伝または秘匿しよう。

 いよいよ最終日。別にこれ以降もラーメンは食べますけど、他人の金で食える最後となれば嫌が応にもハズレは引きたくありません。法儀族の持つ感覚を研ぎ澄ませ、たどり着いたのがこの店舗。正直店名で決めましたわ。

 陽気な髭面のおっさんが切り盛りするこの店舗、人柄のおかげか満席近い繁盛具合。でもなんか妙に年嵩の男性が多いですわね。同じ考えかしら。

 ラーメンは一種類だけのようなので一品料理で大鶏排を注文。台湾といえばやはりコレ。五香粉の香りがたまりませんわ。

 かじってる間に器が運ばれてきました。ニンニクと唐辛子の香る挽肉トッピングが食欲を刺激してきます。坦々麺みたいな感じなんですわね。艶やかな細麺を箸で手繰り寄せ、挽肉をスープに溶かしていきます。ニラともやしの食感がリズミカル。

 大鶏排の最後の一切れをスープにひたし、吐息を漏らします。五日間のラーメン巡りは大満足と言っていいでしょう。髭面のおっさんに声をかけ、お勘定へ。ああそうだ、これだけは言っておかなくては。

「"Stay Gold(輝き続けろ)"」

 にやりと笑ったおっさんに手を振り、ギルドハウスに帰ります。同好の士ってのはいいもんですわ。

でもあれ香港じゃないかしら。

○あとがき

タダ飯って気分のいいもんですわね。



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