20220122 新潟市美術館企画展「生誕110年 香月泰男展」
新潟市美術館企画展「生誕110年 香月泰男展」に行ってきた。実は昨年も行っていて、今回は2回めである。
もともとこの企画展と同時開催の「台所の絵画展」に娘の所属する美術部で団体で出品しており、その案内ハガキをきっかけに鑑賞することになったのだった。
1回めは娘を連れての鑑賞だったため、あまり時間をかけての鑑賞ができなかった。そのリベンジで今回は1人で行くことにした。
見たかったのは「シベリア・シリーズ」、作者の太平洋戦争への従軍・シベリア抑留体験を元にした作品群。
作品は、黒(光を吸収してしまう真っ黒)と黄土色を基調として戦争の悲惨さ、抑留中の過酷な労働、仲間の死、叶わぬ帰還への絶望感、迫りくる死の恐怖、故郷の家族への思いが描かれている。
作品にはそれぞれ、作者本人による解説が付けられて、より深く鑑賞することができた。
「描いたら、その悪夢から離れられるかもしれない」と作者も言及しているが、この体験によって作者が負った深い傷は、生涯消えることはなかったのだなと作品群を通して感じた。
作者は死と隣り合わせの重労働の中でも素描を続け、極限状態であるのにも関わらず自然の美しさ(雪、太陽、月、雨など)に心を奪われ、下絵を描いた。画家というのは、我々の想像を超える絵に対する衝動のようなものを持っているのだろうか、と圧倒されたが、すぐにそうではなく「死に近いほど、人は自分の中の衝動が直になるのだ、そして生きたい、描きたいと強く願うのだ」と気がついた。
「シベリア・シリーズ」に入るのか失念してしまったけれど「青の太陽」の美しい青、「雨」の灰色の太陽、「業火」の炎の赤は後半の展示で、黒と黄土色の世界に徐々に色が付くようになる。
思い出には色がついていても思い出すときに白黒で再生されるのだろうか、そんなことを考えた。
(写真は香月泰男「青い太陽」)
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