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Liam is Where did you come from.前編

「ハッ...ハッ....クソッ...!」

まだ義肢慣れきらない身体を酷使して走る。

「何なんだよ...!あの犬野郎はよ...!」

「また...犬と呼びましたね?」

少し影が差したかと思うと、意外なほど靭やかにその獣人ーーー狼森冴子は着地し、言った。

「まったく...足で私から逃げ切れるわけが無いでしょう?いい加減大人しくしてください」

君たちにもあるだろ?理想の自由な生活。

「元ロックアウト開発員、リアム•ロックアウト」

全部完璧のはずだった...この犬が全部ブチ壊す前は!


「ん...あぁ...っあ...?...いっつ....」

頭痛と共に目を覚ます・・・どうやら昨日は一人で呑んでいたらしい。床に缶が...5本以上だ、数える気にならない。

ふらつきながら一階に降りると、店主のスマイルが声をかけてくれる。

「おはよう、リアム...店の酒を飲むのは自由だが、せめて営業分は残しておいてくれ。ノンアルコールのダイナーなんて嫌だろう。」

「酒なんて無くても客は来るさ、ここはそういう場所だろ?スマイル」

スマイルは呆れた様子で(きっと顔があればもっと分かりやすいだろうな)珈琲を入れている

「それでも君はオーナーなのかい?まったく...」

ここはダイナー「フォー•レター•ワード」。
街に点在する「おイタ禁止」のDMZ(非武装地域)だ。
ここでは如何なる戦闘行為も許されない。それが街の掟であり、数少ない信用できる物だ。
ボクはここのオーナー権を前職のコネと退職金で買い取り、慎ましくメカニックをしている。

「ボクはガレージの方に居る、後で何か食べ物を頼むよ」

「あぁ」


暫くすると外に続くドアを誰かがノックした。

「...リアムさんはいらっしゃいますか?」

おそらく客だろう、だが気分じゃない

「アイツなら死んだよ、一昨日出直しな。」

パンッ!!!

聞いたことが無い破裂音に振り返る。

...ドアから脚が生えていた。女...いや、雌の足だ。

スルリと脚が消えると鉄音と共にドアが切り開けられた。

「誰だテメェ...?」

顔を出したのはやや長身の獣人、腰には長巻を携え、眼つきは厳しいがどこか涼しげだ。

「環境課、処理係第4班の狼森です」

カツカツとヒールを鳴らしながら容赦なく近づいてくる。

「リアム・ロックアウト、貴方を違法武装の開発、所持。許可無しの販売の容疑で拘束します」

どうやら環境課に補足されてしまったらしい。

「人んちに勝手に上がり込んどいてベラベラ喋ってんじゃねーよ犬」

しかし問題ない、ここにいる限り身の安全は保証されている。

「犬・・・ですか」
「ここがどういう場所か知ってるのか?ここで手を出せヴッ!!!!!」

狼森の拳が鳩尾に食い込む。

「カハッ・・・お前!ここの掟は知ってるだろ!」
「はぁ・・・それが私に何の関係が?」

眉一つ変えずに続ける。

「取り敢えず連行しますね」

悶絶するリアムに電子手錠をかけると問答無用で肩にに抱え外へ向かう。



スマイルがドアを開ける。

「リアム、サンドイッチを持ってきて・・・?リアム―?何処行ったんだ・・・?」

既にガレージに人影はなく、少し風通しが良くなったガレージだけが残っていた。


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