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民放AMラジオ、FM転換へ その2

タイトルの通り、昨夜の続きです。今回は日本のAMラジオ局、特にFM化に積極的なラジオ局にターゲットを絞って書いていきたいです。また自然災害時のラジオについても掘り下げます。

一般的に「AMは広範囲に電波が飛び、FMは狭い範囲にしか電波が飛ばない」と言われています。これは僕が思うに、半分合ってて半分間違っている。もちろん逆に「FMのほうが綺麗に聞こえて、AMが聞こえづらい」という地域だって存在します。起伏に富む日本の地形に於いて、それぞれの地域で受信状態が異なるので。一概にどちらが飛ぶ、よく聞こえる、という優劣は定義しづらいと思います。「都会だから」「田舎だから」という基準でも一概にどっちがどうとは言い切れない。

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(山口放送・KRYラジオさんのサイトより)

最初の例として、山口放送(KRYラジオ)さんを取り上げます。ここは元々AMしか放送していませんでしたが、僕の地元福岡県の民放AMよりも先にFM補完放送、いわゆるワイドFMの山口局を開局させました。このエリアマップを見てお分かりの通り、現在では日本で最もFM化に積極的な民放AMラジオ局だと思われます。(一杯FM送信所があって解りづらいぐらいあるw)

FM化で懸念されるのが、運転中の周波数切り替え。ドライバーさんは頑なにAMラジオにこだわる人が居ると聞きますが、それは一つの周波数のカバーエリアが広いため、違う周波数エリアに到達するまで周波数を変える回数が少なくて済むから。しかしFMでは細かく中継局を置いていることが多く、周波数を変えないといけない回数が増える傾向に。

そこでKRYラジオのFMでは、山陽側(瀬戸内側)は92.3MHz、日本海側は86.4MHzと、周波数を2つだけの同期放送にして県内を(AM電波よりも)広くカバーし、解りやすくしているのです。現在地が山陽側なのか日本海側なのかが解らなくても、とりあえずFMの92.3か86.4に合わせれば何かしらKRYの放送が聞こえる…これだけでリスナーには解りやすく、ラジオに触れたことがない人にも効果抜群です。

KRYラジオは、従来のAM送信所が6ヶ所なのに対し、FM送信所は13ヶ所も作っていて既に稼働中です。先日の決定がなされるかなり前から、いつAMを止めても大丈夫な体制を、ラジオ局側としては整えていたのです。これだけの送信所でカバーしていると、AMよりもFMのほうが山間部であっても好条件なのは間違いないですね。対岸の愛媛県にある南海放送ラジオも、FM送信所のほうが充実していて且つ同期放送で広く愛媛県をカバー。周波数も解りやすくしていますよ。

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(LuckyFM茨城放送さんのPR動画より)

そして最近何かと話題の、LuckyFM茨城放送。元は「IBS茨城放送」であり、茨城県内でAMのみの放送を行っていましたが、こちらもワイドFM開始が早くて積極的でした。水戸が94.6MHz、その他日立やつくばで88.1MHz。ここも周波数2つを前面に押し出してPRしています。

何でも?この2つの周波数、茨城県外でも広く聞こえているっぽいですよ?僕も2017年に茨城県に行った時にAMは弱くしか聞こえなかったけど、FM94.6は強力に聞こえていました。関東の方はぜひチューニングしてみてくださいね。日本のラジオ局が軒並み苦しんでいる中、LuckyFMでは自社制作番組にこだわった編成を復活させて、東京からのネット枠を減らすという、今の地方AMラジオ局の一般的なやり方とは真逆の方向へ進んでいます。攻めに攻めているラジオ局ですね。


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話は変わって。日本では気象災害が非常に多く、その非常時の情報源としての「ラジオ」が期待されています。この点でAMラジオのFM転換に難色を示す方もおられるでしょうし。また、「災害に強いFMラジオ」という謳い文句でワイドFMを開始したAMラジオ局も少なくありません。

では、AMとFM、災害に強いのはどちらなのでしょうか? …とこちらから質問しておいてナンですが。わたくし一個人の考えとしては先ほどの聴取可能エリアのお話と同じで、一概にどちらが災害に強いとは言い切れません。(ゴメンナサイ)

例えば。大雨や台風災害が毎年のように起こっていますが。AMラジオは送信所を水辺に設置した方がより電波が飛びやすくなる性質があります。そのため、AMは送信所が河川敷や、海のそばに作られているケースが多いです。また内陸であっても、低地の平野部の何もない畑地にドンと作っているパターンも。そのロケーションを想像すると、いかにそれらが水没しやすいかが解るかと思います。その弱点を解消する点で、ワイドFMの制度を始めた。ゆえに「災害に強いFMラジオ」という謳い文句を掲げたわけです。

停電

(2019年の台風災害による停電で、中継局の自家発電燃料が尽きる箇所が増えて困惑しているチバテレビのツイート)

では。FMは本当に災害に強いのでしょうか?FMやテレビの場合は、AMとは真逆で標高の高い場所に送信所を置いた方が電波が飛びます。山の頂上とか、高い建造物の頂上に送信アンテナが設置されているケースがほとんどです。

山の頂上ですと、水没する危険はほぼない。けども、大雨や大雪、地震の時に送信所にトラブルがあった際に、頂上まで登れないケースがゼロではありませんね。停電トラブルの際は、送信所や中継局に備え付けられている自家発電機が自動的に作動し、電波が途切れないようになっています。これはAM送信所もFM送信所も同じです。でも前述の通り、FMやテレビの送信所は山頂に作っているケースが多いですから、このチバテレビのような事態になってしまうと、決してFMが災害に強いとは一概に言えない訳です。

余談ですが、市町村単位で設立されている「コミュニティFM」も、甚大な災害の際に全ての局が県域ラジオ局のような十分な対応にとっさに移せるのかは、疑問に思います。やはり災害時のラジオは大事ではあるのですが。災害時には「自助」つまり自分の身は自分で守るのが先決であると僕は思っていて。ラジオやテレビの情報をじっと危険な状況で待っていることでリスクを高めてしまっては元も子もありません。そこは今回の件と少し論点が違ってきそうな感じですね。

ええ… まだまだ書き足りないので。次回に続きます。(;^ω^)

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