確かな変化と増えていく家族 日本の歩き方#58 兵庫県香美町余部→鳥取県鳥取市
兵庫県香美町余部→鳥取県鳥取市
歩行距離 45km
総歩行距離 1846km
旅をしていると、奇跡のような出会いに恵まれることがある。使い古された常套句のような言い回しだが、誰が何と言おうと、この出会いこそ旅を彩ってくれるのは間違いない。あの日、あの時、あの場所に僕と、その人がいたからこそ、果たす奇跡に巡り会える。だから旅はやめられない。
今日はそんな物語を綴っていく。
道の駅あまるべで起床。ここは、地上45mほどの高さに駅がある『空の駅』として有名な場所だ。
しかし絶望の朝。なんてったって今日は朝から寒さで目が覚めた上、45kmの道のりを650mも登らなければ行けない峠続きの道を行くからだ。
峠は嫌だ。しかも寒くてあまり眠れなかった。
しかし、今すぐここを出ないと日が暮れてしまう。日がようやく登り始めた夜明けには飛び出した。
今日のルートはこんな感じ。
兵庫県の西側から鳥取砂丘までは、いくつもの峠を越える必要がある。こんな感じ
リアス式海岸の恐ろしさといったらもう...
それでも歩き続け、峠に立ち向かった。天気予報に反して、予想外の雨にも襲われた。
急いで峠を渡る。
するとどうだろうか。ある瞬間に自分の中の変化を感じた。
『あれ?峠楽しくね?』
素早く足を動かし、峠の頂上に辿り着くまでは、息を切らしながらだけど、一気に駆け抜けた。すると、途中で峠を楽しんでいる自分に初めて出会った。しまいには、下り道を走って楽しみながら駆け抜けている自分もいる。
これは大きな変化だ。あれだけ大嫌いだった峠を、早く駆け抜けることで楽しんでいる自分がいる。
朝までは、迂回ルートを通って距離を伸ばしてでも峠を避けようとしていた。しかし、今は進んで峠道を行ってみたいと思う自分がここにいる。
こうして、次から次へと峠に挑む。
二つ目の大きな峠を越えると
気づけば鳥取県に。
県境や街の酒井は峠の頂上にあることが多いのだが、県境の峠を越え、降り始めると
さっきまでの雨が嘘だったかのような晴れた空が。
峠越えと鳥取に突入できたことを祝ってくれているような青空と絶景。
浦富海岸を抜けると、サーフィンをやっている人たちが声をかけてくれた
お決まりの、『どこから歩いてるの?』から始まり、気付けば意気投合。なぜか、ビールをご馳走してくれた。
サーファーの人たちは大らかで、陽気な人が多いからか、初めて会ったとは思えないくらいのウェルカムモードで仲良くしてくださった。
『今日は鳥取駅まで行くのか!?そしたら夜飲もうぜ』
夜の宴会まで手配してくれるという。何としても早く鳥取駅に辿り着かなければ。
見ず知らずの自分を温かく迎え、エールを送ってくれる人が、たしかにそこにはいた。
海景色を撮りながら、ぐんぐん進む。もちろんまだ峠はある。
でも、最初の峠に比べたらキツくない。それに僕は今、峠を楽しんでいる。『どんとこいや!』そう唱え進むと、
鳥取砂丘が見えてきた
せっかくなので砂丘をある程度周遊し、鳥取駅へ。
今日はスペシャルゲストと、、ゲストハウスに泊まる。
最高の夜を前に、サーファーの人たちと色んな話をしながら。酒をしこたま飲む(旅中に初めて記憶を失った)
『今日はタクマを迎える会だからな!』
『またいつでも会いに来いよ!メシいくらでも食わしてやるし何泊でも泊めてやるから!』
初めましての新参者が、いつもの、グループに参加させてもらった。『私をスキーに連れてって』の世界で出てくるような一生青春を謳歌している人たち。
サーフィンをやることを決意した。
こういった出会いが、旅を彩るのは言うまでもない。
でも、それを狙っていた旅では面白くないだろう。
人脈のためとか、成長のためとかの旅を期待していたら、会話の一つ一つがいやらしくなるだろうし、そこで偶然の出会いが損得勘定抜きに素敵な友情になりうるかといったら、そうではない。
でも、その『たまたま』にいつまでたってもありがたみを感じ、謙虚であり続けたら、もしかしたら、今後の仲間が増えていくかもしれない。
だからこそ、会う人たちとは最後まで心で対話したい。会った人の今までの人生のエピソードを純粋な気持ちで知りたくなる。
この連鎖が、旅を彩っていくのだろう。
最高と最低を行ったり来たりする、歩き旅の中で、確かな変化と、地方で少しずつ増えていく、家族のような大事な人たちとともに、真っ白なキャンパスを鮮やかな世界にしていきたい。
そして、その作品を、ともに楽しめたら、これ以上嬉しいことはないだろう。分かち合う喜びってそういうことだから。
兵庫県香美町余部→鳥取県鳥取市
歩行距離 45km
総歩行距離 1846km
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