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「友達ではない」関係だから、得られる心地よさがある【うめしおさんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『あぶらうってこ』を配信するうめしおさんにフォーカスを当ててお届けします。

“限界会社員”かつ“ズボラ兼業主婦”を自称するうめしおさんは、東京都在住の38歳。「ひとりで楽しく」をモットーに、2018年9月1日のデビュー以降、“ほぼ毎晩”の収録配信と、“企画次第”でごく稀に行うライブ配信を継続しています。

うめしおアイコン

深いテーマ性を感じるタイトルと、出オチにならない言葉選び、話題の展開力でじわじわと人気を高めてきたうめしおさん。噛めば噛むほど味が出る独特なキャラクターから紡ぎ出される “人間の本質”トーク、どうぞジワりながらお楽しみください。

(取材・文/鼻毛の森

“独り言の壁打ち”として始めたRadiotalk

ーー配信をはじめたきっかけを教えてください。

うめしお:Twitterを眺めていたら「みんな萌え語りしてくれー!」というツイートが流れてきて、Radiotalkの存在を知りました。ツイート主が、イラストでRadiotalkの使い方を紹介していて「自分のラジオ番組みたいなことができるのか!」と興味が沸いて、アプリをダウンロードしました。

ーーラジオにはもともと興味があった?

うめしお:前の職場が、一日中BGMとしてラジオが流れているような環境ではあったのですが、どの番組が好き、どのパーソナリティが好き、というほどの思い入れは正直なく、生活のかたわらにあるイメージでした。

毎日考えたり感じたりしている些細なことを、“誰かに聞いてほしい”という気持ちがぼんやりあって、「ブログをはじめようかな」と思っていた時期にRadiotalkに出会いました。単純に「聞いてもらいたい話なら、書くよりしゃべった方がいいかも」と思ったんです。

ーー同僚や友人、夫にも聞かれたくない話があった?

うめしお:うーん、日常で考えていることって、たいていオチがないじゃないですか。基本的にそういう話って、聴き手を退屈にさせると思うんですよね。うちの夫に限りませんが、仕事で疲れて帰ってきて動画を見ている時なんかに、家族のつまんない話を楽しく聞ける人は多くないんじゃないかと。なるべく周りに負担をかけずに、好きなタイミングで好きな話を“ひとりで壁打ち”できる場が欲しかったのかもしれません。

ーー うめしおさんは、一匹狼タイプなんですか?

うめしお:そうでもないですよ! ただ、友人と集まるときも、自分の話は「最優先しなくていっか」と、後回しにしがちかもしれません。その場にいるときは、ちゃんと楽しいんですけど、帰り道で「この話、したかった……」と思うことが多い気がします。

音声配信なら、“誰かの話を聴きたい誰か”が偶然聴いてくれるわけで、家族にも友人にも、誰にも負担がかからないんじゃないかなと。

見つけてほしいけど、目立ちたくはない

ーー5つのルールを決めて臨んだという第1回目に本気度を感じました。

うめしお:「テンションを上げていく」「敬語を使わない」「テーマを決めて沿って喋る」「自分の人称は“うめしお”」「毎日更新する」の5つのルールを決めました。

いま残ってる第1回目って、実は出直しの2回目なんです。2018年の8月下旬に、数日だけ配信していたんですけど、聴き返してみたら、聴き手を異様に意識した話し方や内容な気がしてしまって。なので、第1回目を収録し直すときに、等身大で続けていくためのルールを改めて自分なりに考えました。今はルールをきっちり守ろうとはあんまり思ってませんが、「テンションを上げていく」以外は継続できていると思っています(笑)

ーー「うめしお」という名前、そして『あぶらうってこ』という番組タイトルの由来は?

うめしお:ブログを書こうと思っていた時に、ペンネームを姓名判断で決めました。“仕事運のいい”苗字と名前を選んだので、音声配信でもそのまま使おうと思ったんですが、口頭で名乗りにくくて。言いやすく縮めて「うめしお」にしたんですが、運勢は前より悪くなりました(笑)

番組名は、無駄話などをして過ごす「油を売る」という慣用句を、ノリ良く言いやすくしたつもりです。「他の番組と似た名前になるのを避けたい」とか、「“あ”から始まるタイトルなら発見されやすいかも」とか、色々考えました。

ーー番組が目を引くための工夫が凝らされていますね。

うめしお:矛盾した感情でわかりにくいかもしれませんが……番組を見つけて欲しいし聴いて欲しい、という気持ちはあるんですが、それを言葉にして聴き手に伝えることに、実はちょっと抵抗があります。

「〇〇して欲しい」ってダイレクトに言われると、負担じゃないかと思っているので、「もっと聴いてくれー!」という気持ちや言葉よりも、「話したいこと」が伝わるような番組でありたいです。

聴き手には適当に聴いて欲しいし、何も負担に感じて欲しくなくて、番組でもたびたび、その意思表示はしています。本当はたくさん聴かれたいのに、それを言えない、隠したいって、ちょっとややこしい感情ですよね。

“一日一収録”がルーティーン。小さなエピソードをメモ帳にストックする

ーー毎回の収録は、どのような環境で行っていますか?

うめしお:iPhoneのマイクで直録りです。ほとんど編集もしませんね。初期に比べて音質が良くなったともいわれるのですが、それは去年に最新型に機種変更した効果かも。場所は、自宅の寝室が多いです。布団に横になりながら、リラックスした状態が一番話しやすいです。

ーー寝る前に収録するのがルーティーンということでしょうか?

うめしお:なるべく“一日一配信”したいので、24時を超えないように収録しています。収録トークの公開時刻に23時台のものが多いのは、日付が変わるギリギリに録っているからですね(笑)。収録するために横になりますが、そのまま寝てしまうことは少なくて、収録後に残っている家事を片付けたりすることが多いです。

土日にまとめて収録することもあるのですが、収録そのものが「歯を磨く」とか「顔を洗う」ような、一日のルーティンのひとつになってきた気がしています。生活リズムを崩さないためにも、なるべく毎日“録って出し”したいです。

ーートークにおいて、意識していることはありますか。

うめしお:「最初の5秒で続きを聴くかどうか判断する人が多い」という話を聴いてから、オープニングの前にフリートークを入れるようにしています。特別、トークのためのネタ作りのようなことはしていないのですが、話しても12分に満たないような小さなエピソードはメモ帳に残しておいて、後日、他のエピソードと組み合わせることもあります。

伝わらないと思った気持ちが、ちゃんと伝わっていた

ーーこれまでの配信で印象に残っていることはありますか。

うめしお:好きなことを自由に話すのを楽しんでいましたが「聞き流している人が多いだろう」と、割り切っているところがありました。日常生活でもそうですが、みんな別々の人間なので「自分の考えていることや気持ちをどんなに一生懸命話しても、完璧に相手に伝わることはない」のが当然だと思っていました。

そんなある日、「あなたの言いたいことは〇〇ということだと思った。すごくよくわかる、自分も〇〇だ」というお便りが届いて、とても驚きました。聞き流されていると思っていたのに、きちんと聞いて、理解した内容を自分の言葉でお便りとして送ってきてくれる人がいる、ということがとても嬉しかったんです。

それがきっかけで、複雑だったり矛盾している自分の心情や考えを、もっと率直に話しても大丈夫なのかもと思えるようになりました。言葉を尽くして話した分、誰かに伝わる可能性が高くなるのも、知らない同士でも共感しあえる可能性があるのも、面白いと思っています。

ーー番組を配信するうえで、どんなことを大切にしていますか。

うめしお:「自分で考えたことを、自分の使える語彙で話す」ということが大切だと思っています。台本なしで、自分の声で話すので、気持ちと違うことを飾った言葉で話すと、聴き手が違和感を抱くんじゃないかと。音声配信は話しているときの感情が伝わりやすいですし、何より、自分自身はごまかせないんですよね。

ーー逆に、トークするうえで「やらない」と決めていることはありますか。

うめしお:「聴いてくれる人がいればしゃべる」「需要があれば」という言葉が好きではないので、言わないようにしています。「応援しなければやめてしまうかも」という気持ちを抱いて欲しくありません。応援されるのも、聴いてもらえるのも、もちろん嬉しいですが、聴いてくれる人に応援をせがみたくないですね。義務じゃなくて、好きで話しているので。

Radiotalkは、「自己中心的」でいた方が愛される場所

ーーRadiotalkで、うめしおさんの日常はどう変わりましたか。

うめしお:嫌なことがあっても「配信で面白おかしく話そう」と割り切ることができるようになりました。配信で話してみると、心の中でモヤモヤ考えている時より「嫌だったけど、こんな意味があるかもしれない」「こういう見方をしたら逆に面白いかもしれない」と思えることもあって、意外と前向きになれる気がしています。

もちろん、単純にただ愚痴っぽくなってしまう時もあるんですが「誰かが聞くかもしれない」と思うことで、過剰に自虐的になったり、深く落ち込んだりせずに済んでいますね。

そんなつもりで始めたわけではなかったのですが、ちょっとだけ聴き手を意識しながら、1人でじっくりしゃべることで心のバランスがとれるのかもしれません。

ーー今後、新たにRadiotalkでやってみたいことはありますか。

うめしお:毎日収録する以外のことは、いまのところ特に考えていません(苦笑) 。でも、やってみたいことがいつでもできるのは、Radiotalkのいいところだと思っています。あえて、目標にするとしたら「変わらずに配信し続ける」とかですかね。

ーーうめしおさんにとって、リスナーはどんな存在ですか。

うめしお:聴いてくれる人に対して「友達ではない」と思うようにしています。これは、ぜんぜん悪い意味ではないのですが、結構ややこしくて。

「友達」というと、すごく良い関係のように聞こえますが、友達関係を維持するために、お互いそれなりにリスクを背負うと思っています。距離が近くなるから楽しいし、関係が深まるから話せることもありますが、その分、関係を維持するために心をくだいたり、時間を使ったりしなくてはいけないと思うんです。

聴いてくれている人ひとりひとりと、そんな関係を持つのは難しいんじゃないかと思っていて……。そもそも自分が、そんなに器用な方でもないので……。なんか「友達」に関するちょっと重い話になってきましたね(笑)

あくまで「いま暇だからたまたま聴いてる」「誰かの雑談が聞きたい気分だから聴いてる」という関係がいいんです。お互い馴れ合ったり、必要以上に「何かしてあげられる」「何かしてもらえる」と思い始めると、傷ついたり傷つけたりしあってしまうと思うので。聴いてくれる人とは、ほどよく距離感を保ちながら、お互い気軽に、関わり続けていきたいと思っています。

聴き手に対して、こうして欲しいという気持ちがあるわけではなく、自戒に近いかもしれません。人間関係を維持するのが得意でないので……。配信を聴いてくれる方には、いつも感謝していますし「嬉しい」「ありがとう」と伝えたいです。

普段は人にしないような、面倒くさい人間性の話をしても、面白がってもらえる気がします。

ーーうめしおさんにとって、Radiotalkはどんな場所ですか。

うめしお:「独り言」を通して、人と心地よい距離感で関わることができる場所だと思っています。あと、自己中心的でいた方が愛される場所だなと思います。

何をしたら良いかわからない、話したいことがない、という状態よりも、「音声配信を通じてやりたいことがある!」「応援してほしい!」「楽しいことがやりたい!」と、きちんと自分の言葉でまっすぐ言える人が、応援されていると思います。「自分を中心に、何かやってやるぜ!」と発信し続けている人の周りに、人が集まっている気がします。

でも、確固たる目標が必須というわけではぜんぜんなくて、主体的でさえあれば、意外と聴いてもらえると思います。そういう懐の深さがあるから、日記みたいな配信をひとりで続けられるのかもしれません。

「ひとりでしゃべっていて楽しい」と自分が感じられる限り続けていきたいし、続けていけると思っています。

本数があればすごい! 面白い! というわけでもないのですが、2022年3月18日までで、1184本配信しています。気が向いたら、ふらっと聞きに来てください。もちろん義務ではありません(笑)

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