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(再掲)煙草は大人のおしゃぶりか

 21歳の少年が書いた作文。思ったより面白かったのでtumblrからnoteに再掲。

2018/03/25

 夕暮れの差し込む地元の大きな河の河川敷で一人、煙草を咥えたまま火を点けずずっと向こうを眺めている。実家にいても余りリラックスできず、煙草を買いにコンビニへ出かけたまま家に戻れなくなってしまった。

 買った煙草を既に5本程度吸ってしまい、程々の喫煙者である私には十分な量を吸いきってしまっている。今これを書きながら、1本の煙草に火を点けないままもう15分程が経過した。

 煙草…咥えるのにちょうどいい太さと長さ、白い紙の色、ほんのり香る甘い香り。この短い1本に「副流煙が臭い」という1つの欠点を除けばこんなに魅力が詰まっている。しかしこんな訳のわからない草を乾燥させてまとめて火を点けてその煙を吸い込むなんて明らかに人体にとって害なのに、誰が最初に実行したんだろう。こんなことを思っていたらもう煙草を咥えて20分。

 煙草は口寂しい時にパッと吸えるのがいい。私はそもそもの「口寂しい」というワードが好きである。口に何も入っていない時のあのなんとも言えない感じ、ガッツリ食事を求めてる訳ではないけど何か欲しいあの感じ、「口寂しい」という言葉以外に表現できない。煙草はその口元に宿る寂しさを紛らわせる3分間の気休めだからいいのである。

 もう座って相当の時間が経った。何で俺は煙草に火を点けないんだろう、わからない。何故か?…それは煙草を吸いすぎたからなのではあろうが、こうして煙草を咥えていると何か安心感ではないけれど、妙に心地良いような…、そんな気がするからなんだろうか。ふと頭によぎった。もしかして俺は幼児退行してるんじゃないか。

 ベビーベッドの中でアーアーと人を呼んだり時にぐずったりする赤ちゃんにおしゃぶりを与えると、口が塞がれ「しゃぶる」という行為が与えられ大人しくなると聞いた。今、日暮れ時の河辺で、妙に落ち着いているのはこの煙草を咥えているからか。煙草は大人のおしゃぶりか。「高学歴保持者ほど喫煙者の割合が少ない」というデータがあるらしいが、それは案外理にかなってたりするのかもしれない。

な〜んちゃって

追伸: 21歳、タバコごときでこんな文章書いちゃってなんてセンチメンタル。当時の俺、結構作文書けたんだなあ。褒めてあげたいね。

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