横回転アームの倒し方


はじめに

Xでの投票の結果、横回転の記事が要望の方が多かったので書くことになりました。どうやっても横回転に勝てない!と悔しい思いをしたりトラウマになっている方も多いことでしょう(汗)。嘆かわしいことに練習会では横回転は対戦を敬遠されがちです。横回転がいるリングから徐々に隣のリングに人が移っていくのは気のせいでしょうか(笑)横回転を使っている身としては敬遠されるとこちらも練習の質や量を確保できなくなるのが最近の悩みです。(まあ、大会では暴虐の限りを尽くしてきた報いでもあるけど)この記事を読んで積極的に対策して横回転に挑んでくれる選手が増えたらいいなと思います。横回転アームといってもいくつか形態がありますが、本記事では、上下動横回転を取扱い、断りがない限りは4層ヘッケン脚に上下動機構、鎌付きの攻撃アームの4CH構成、右足側にカウンターが生えた構成を指すものとします。 


代表的な横回転アーム紹介

※最近の大会で成績を残している機体を中心に取り上げます。


Luchs


本大会HPより


現環境最強の一角に数えられる名機。元はロッドの使い手でロッドと横回転のアーム換装機能を備える。足回りの旋回性能を重視して作られている。サスペンションの構成は前並行リンク、後ろ回転サスとなっているがこれらはロッド機のための構成となっているとのこと。マンバ搭載の攻撃アームによるデスロールはフルクロスも破壊する威力。このデスロールは多くの選手に恐怖を振りまいたことだろう。28回本大会では横回転は優勝できないジンクスを打ち破り、遂に優勝を果たした。

下剋上


立命杯にて撮影

Luchsと並んで超強豪。小型機専門家というイメージを持っていたが、大型機も強い。まずドライバーとしてのスペックが化け物な上、機体の組付けも完成度が高く、年々性能向上が見られている。操縦、マシンスペックどちらも死角はない。上下動横回転自体はは2019年頃?制作されたがその後も改良や換装アームが増やされている。カウンターにはカーボンパイプを導入し、脚の揺動節や攻撃アームの側板にはガラエポを導入を行っている。大会では安定して上位に入り込むため、過去の成績を全て書くとキリがない。


アトラクタ ノア


立命杯にて撮影

最近登場したばかりの上下動横回転の使い手。機体構成は4層足の前後並行リンク、アーム機構が前に寄っていてリーチ重視の機体。ドライバーは大同大学所属、まだ学部3回生にして既にKHK杯優勝、電大杯準優勝と成績を残している。操縦やマシンスペックはまだまだ伸びしろをを残しているため、今後さらに脅威となりそう。。。(ハアア)


本大会出場した5作目2代目湊


ヤガボットでの記念撮影(現在は9作目の帝で出場)

この記事書いてる奴。過去制作した横回転は9台(内4台くらいは駄作なので世には出てない)代表作の初代湊(三台目)は前重心でリーチ特化型だったが、以降は小型シールドとの長期戦を見据えて、真ん中重心の走破性重視の設計になっている。紹介している他の機体とはまた違った挙動をする。バトルスタイルは攻撃的(らしい。自覚ないけど)搭載している鎌の形状は上位勢の鎌の特性をミックスしたキメラ鎌。過去成績は27回本大会7位、ヤガボット2023で3位入賞

凰 arms(パイナポーアームズ)


立命杯にて撮影

スライダー信者なのでスライダー脚しか使わない。足のクランクはM3の6角スペーサーをはめ込んで位相を作っている。このためクランクの外形が小さくなり、その分スライダー軸のシフトY距離を短くリンク設計が可能。これによりクランクの位相をつくるために3本ネジやピンを用いる設計よりヘッケン足の性能に近づいている。直近の成績は2023電大杯3位。


シルシル


立命杯にて撮影

27回本大会シールド回転で3位となった方の横回転アーム。
横回転を使用しての上位入賞記録はないが、機体完成度は先に挙げた横回転達に並ぶクオリティ。脚のカバーは3Dプリンタ製。前後回転サスで共通のダンパー・ばねを接続している点は特徴的。それ以外は無難に強い構成していると個人的には思う。初めは変なことせず先人たちから学び、真似をしていく姿勢が勝利への近道ですよね。


横回転アームの強みと弱点

強み

  • 必ずしも下を取る必要がない。

  • 1撃必殺

  • 上からの攻撃できる特性と十字山を盾にする立ち回りとの相性が良い

  • 手数が多い

  • アームじゃんけんで負ける相手が少ない

弱点

  • シールド回転相手に正面で身を守る術がない(ロッドやシールドはアーム下げるだけで一応はけん制できる)

  • 機構が4CHと多い分、製作時の作業的にも技術的にも初心者にはハードルが高い。

  • 4CH操縦に慣れるまでが大変(特に入場)

横回転アームの戦術に関する持論

横回転アームの特徴として1撃必殺で長期戦に持ち込むほど有利なアームと捉えている。この特性を生かすために試合を長期化させ、攻撃を当てるチャンスをいかに増やしていくかを戦術の軸に置いている。そのためにも機体構成は走破性や機動力に長け、常に相手と距離を置くことを重視している。距離を詰められても相手に有効打を与えさせず再度距離を取って仕切り直す。また、対戦相手にプレッシャーを与えて慎重な立ち回りをするように誘導することも試合を長期化させ、主導権を握る上で重要。短期決戦を狙ってスタートダッシュをしてくる小型機の迎撃については後述する。

横回転アームに対する有効な戦術(アーム)

  1. 低減速比シールド回転で突っ込む

  2. ツインミドルをフルクロスに換装

  3. 押し出しシールド

  4. ロングロッドの丸棒化

低減速比シールド回転で突っ込む

アームの性質上鎌の先端速度に対してシールド回転の方が圧倒的に速いので基本的には鎌が弾かれてしまう。個人的には鎌を壊しに来るタイプより最短最速で突っ込んでこちらの脚機構を壊しに来る方が厄介。横回転的には部の悪い運ゲーを強いられる。

ツインミドルをフルクロスに換装

フルクロスを搭載することで生存率は所感で7割も上る。明月はロッドを1本のパイプに変え、カウンターもパイプ化することで鎌がつかめないように対策をしている。ツインミドルユーザーの中でも最も横回転が刈りにくい換装装備である。

押し出しシールド

対横回転戦に特化したアーム。詳細の解説は12/5のアドベントカレンダーの記事で紹介されているのでそちらを参考にされたい。横回転側の対策としてはアームが上に上がった瞬間を狙って足を刈に行く。

ロングロッドの丸棒化

あんかけぴらふや明月がロッドにパイプ材をつけることでつかまれてもパイプが回転してダウンを回避する例はあったが、実はパイプを回転させずとも鎌は中実の丸棒を掴んで回すこともできない。リーチで勝るので横回転アームの山を盾に距離を取って戦う優位性を潰すことができる点で最も理にかなった横回転対策である。とんちゃん氏制作のこのアームは今年の立命杯決勝で多くの人に注目されたのではないだろうか。初の実戦投入は城北杯決勝戦になる。この時の対戦相手は横回転下剋上。この丸棒ロングロッドにはまだ強度不足という課題が残っている。城北杯では2ラウンド目でロッドの折り畳み部からへし折れ、立命杯でも試合の度に折られて修理を余儀なくされた。(ただしこの機体に関してはリンク機構破損防止のためにあえてポリカで壊れやすい部分を作っていた模様)本大会の修理時間がトータル5分だと時間内に何度も直すの厳しい?戦術的は非常に有効なので、今後強度面での課題が解決されれば、押し出しシールドと並んで有力なキラーカードとなるだろう。

フルクロスをつけてスタートダッシュ

フルクロスをつけることで鎌の攻撃をかなりの確率で防げる。ただし、これも絶対の防御壁ではなく、試合が長くなれば隙間を縫って鎌を刺すチャンスも増えるし、クロスが剝がれてしまうことも。だからこそ即死攻撃を当てられる前に短期決戦で決着をつけに行くのが戦略的にも望ましい。さて、次に考えるべきはどのルートで攻めに行くべきか?
①十字丘を反時計回りに突撃
②十字丘を時計回りに突撃

①十字丘を反時計回りに突撃

このルートを想定した話はアドベントカレンダー12/6の記事に詳しく書かれているのでまずは参照されたい。現状、多くの上下動横回転は右足側にカウンターがついている。下の図に示す通りこのルートの場合、青で示した横回転はカウンターがリング内側に収まるため、立ち位置を制約されることなく攻撃可能となる。

赤→シールド機、青→横回転アーム

即ち、多くの横回転は①ルートでの迎撃がしやすい機体構成をしていることになる。あとは、黄色矢印で示した失速点に先回りして鎌を振り下ろすことで初手で突っ込んで来るブレードや小型シールドを瞬殺出来る。フルクロスで攻撃が弾かれた場合は緑で示した②のルートでバックしながら距離をとり、仕切り直しへ。スタートダッシュやフルクロスは対横回転戦術として有効ではあるけど、横回転側も立ち回りである程度対策できるわけですね。

②十字丘を時計回りに突撃

右カウンターの横回転を使っている身としてはこっちのルート選択してくる相手が厄介。下の図のような状況を避けて位置取りをしなければならないため戦いにくい。(強い選手ほどこの手を使う傾向にあるので横回転側も警戒する)

こうなった時の横回転側の対応としては青②のルートで立ち位置を変えたり、アームでけん制し、①反時計回りルートの構図になるよう誘導する。



横回転アームの攻撃可能範囲

 横回転は相手に応じてカウンター長さが調整できると望ましい。回す相手が大きいほどこちらが自爆しないためにカウンターを長くしていく必要がある。一方で攻撃した時にカウンターが場外につかないように立ち回る必要があるため、攻撃可能位置にも制約がついてくる。相手機体のサイズと想定される試合展開(リングを激しく動き回るかどうか)を踏まえてカウンター長さを決定したい。

カウンターが500mm程度場合

主に大型機を相手にするときの長さ。カウンター長さが足りないと踏ん張り切れずに横回転が自爆することを避けるために欠かせない。下図は山を挟んで待ちに入った時の攻撃可能範囲を示したものになる。青が鎌の殺傷範囲、赤はカウンターが場外につき自爆してしまう範囲、緑は間合いの内側もしくは山から横回転の車体を大きく出さないと(または山越えをしないと)攻撃できない範囲。

繰り返しにはなるが位置取りの関係上時計回り攻めされる方が横回転は攻撃しづらい。小型シールドは赤や緑に位置では攻撃が当たらない(されない)。

カウンターが350mmの場合

では、回す対象が横幅250mmの小型機の場合はカウンターを最小限に縮められる。この長さになれば位置取りの心配はほとんどしなくてもよくなる。


横回転右側の攻撃可能範囲が広がった。どこに立っていても旋回すればある程度攻撃可能となる。リングを走り回ることが必要な場面もある際はカウンターが短い方が動きやすく攻撃もしやすい。


今回の記事は以上になります。横回転に有効なアームと横回転が試合で何を考えているのかという視点を中心に書きました。最後に素材として機体撮影、提供にご協力頂いた製作者の皆さんありがとうございました!



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