終わりなき夜に生まれつく
ネタバレちょっとあり。
先程読了。読み始めから結構経っていたが、ここ数日で後半を読み終えた。
Twitterで印象深い本だと紹介があり、その付近でアクロイド殺しを読み終えていたので購入。
美しいタイトルだな、と思ったがこのタイトルが読み終えた後にこんなに響くなんて………
同じトリックを別の形でやるとは言われていたけど、この本でそうなるとは思いもよらなかったので、ラストの方はつい声が出てしまった。なんてこった……
序盤は退屈だった。主人公のマイクに心惹かれなかったからだ。こういう男いるよね。と。自分の嫌なところと似ていたのもある。
お決まりの恋物語が始まり、不吉なことは起きても事件が起きることなく、探偵も出て来ず…いつ変化が起こるの?とヤキモキしていた。それもあり一度読むことをやめていた。
なんとなく活字が読みたくて再開したら話が展開し始めて面白くなってきた。
以前他の作品を読んだ時もだが、私の中でクリスティの作品は途中から面白くなる印象がある。
当たり前に?ミスリードした。それはそうだよ、と終盤を読んでいて思った。
ジプシーの丘の呪いという言葉が序盤にあったからか、マイクの性格のせいか始終明日ら不気味さを感じており、マイクとエリーの幸せな瞬間だけが息をできるようだ。
言葉の力は絶大だ。言葉は人を喜びもさせ人を滅ぼすこともできると改めて思った。
最初に感じた薄気味悪さを引きずり、それがじわじわと自分と本とを包み込んで終盤にいるあたりには気づいたら知らない道を歩いていたような不安を感じた。
個人的に愛に変えられない恋には人の醜さを感じてしまうが、恋が愛に変わるととても安心する。
確かに愛があったふたりだが、エリーは気づいていたのかな、その歪さに。確かにあるけど、ない。
「まるで愛しているみたいに」
このセリフに引っかかっていたが、最後まで読むとわかり、なんだかかけだしたくなった。
エリーが幽霊として現れているが、人間のマイクが見えていないという描写もあまりにも的確で、残酷でこの表現ができる作者に脱帽するばかりだ。
幽霊側(果たして幽霊かも不明だが)が人間を認識しないことに恐ろしさを感じるなんて…
愛はあるけどなくて、ないけど確かにそこにあったんだな。
エリーはどこまでわかっていたんだろう。全てではないことを祈りたい。
母親もわかっていた。それはそうだろう。その人が抱える違和感は、本人が思うほどうまく隠せないものなんだろうな、とまざまざと感じさせられた。
読み終わった後にタイトルの意味がわかるお話は好きだ。本を閉じたあとに、ドッと視野が広がる感覚になる。終わりなき夜に生まれて、朝を目指せたけれど夜に生まれたものは夜を生きててしまう。
よく、幸運な人は目の前にチャンスがきた時にその手を掴めるからだと言われているが、チャンスがあっても取りこぼしてしまうのは、夜に生まれたものの定めなのか、どうしたら明けた空を眺められるのか、どうすればよかったのか、それがわからないと夜を進むままなんだな…と感動と共にえも言われぬ虚しさが残ってた。
美しくて虚しい話に出会えて良かった。本を読むことができてよかった。
次はどの作品を読もうか!ありがたいことに読んでないクリスティ作品はたくさんある!!なんで幸せなんだろう!!
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