Forever Young

 生きていれば誰しも通らなくてはならないツラくしんどい経験の大半を逃げの一手でひらりひらりと華麗に回避してきたので、精神が20歳の頃から全く成長していない。
悲観的な文章に見えるかもしれないけど、今まで生きてきてずっと楽しかったので別に悪いとは思ってない。

 去年TBSラジオの人たちとの会食に行った、先方からは3人の社員がやってきた。そのうちの一人は上智卒で自分と同じ2014年入学、当時社会人三年目。
学生時代は体育会系の部活で花形ポジションだったらしい。そして皮肉にも私と同じ苗字だった。
現時点で手に入れることの出来る全ての物と名誉を手に入れてきた、そういう自信を身体に纏っていた。
あの頃にはたしかに同じルートの入り口に立っていたはずなのに彼の所作や話し方、言葉遣いは自分のそれらとは全く違っていた。私が信じられないくらいにコースを逸脱しているのを差し引いても、彼は順風満帆にエリートコースを進んでいるように見えた。
その場の空気を誰よりも読み取る。酒を注ぎ料理を頼む。その場の全員の話に耳を傾けていた。
自分には一つたりとて出来ないことを、同時に三つこなしていた。いや、私には三つに見えただけであって彼はもっと沢山のことを同時にこなしていたのかもしれない。無知ゆえにその凄みを認識することすらさせてもらえない、剣豪と相対すると斬られたことにさえ気が付かない。
彼と喫煙所で話しながら、随分差がついたものですなと、心のなかのリトルニシダは明るく笑ってた。

 20歳の頃から精神的成熟がないおかげだ。仕事が出来ることを格好良いだとか良いことだと思っていない。
成長してなくて良かった、今後人として成長すると斬られたことに気が付いてしまうかもしれない。
今後も成長しないことに決めた。


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