猫撫でたかっただけなのに

 お昼頃、最寄駅から家に帰っている途中、住宅街を歩いていると路上に猫がいた。木の影が地面に降りているその場所に寝そべっていた。
真っ白な猫、首輪もしていなかったので野良猫であろう。

コンビニによって、イカのお刺身を買っていたので一切れくれてやろうと思ったのだが、さらば青春の光のYouTubeで猫に生のイカをあげてはいけないと言っていたのを思い出して踏みとどまった。
にゃーんと小さい声で鳴くのが可愛いくて、イカはやれないが少し撫でさせてもらいたくなった。

音が出ないように盗み足で近づいていったのだが、あと残り5メートルといったところで立ち上がり、自分が近づくのと同じ距離だけ猫も離れていく。そのままジリジリとにじり寄っていったのだが、猫は路上脇の戸建ての家の前にある駐車場に走り去っていった。車の停まっていない広々とした駐車場に置いてある室外機の横で立ち止まった。
逃げ場のなさそうな場所で立ち止まった猫を目掛けて歩きだし、駐車場に踏み入れたところで、ニシダさんですか?と声をかけられた。
その家の窓から、女性が私を見ていた。
YouTube見てますよと声をかけられて、わたしはすいません猫を追いかけてて、と答えてその場を立ち去った。

 最悪のタイミングで声をかけられた。
泥棒だと思われてもおかしくないほどゆっくりと静かな歩みで他所様の家の敷地内に入っていこうとしていたので、むしろ知ってくれていて良かったのかもしれない。

是非サポートしてください。 7万5,000円の電子辞書を買うために貯金していきます。