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マスクの話

 昨今のコロナウィルスの蔓延状況もあって、会う人会う人、もれなく全員マスクをしている。逆に街でマスクをしていない人を見つけることが難しい。
昔は夏でもマスクをしている人は全員芸能人だと思っていた。
余談だが『COVID-19』という呼び方を聞くとワンピースの『イッシー20』が脳内に現れる。ドルトンくんを救ってくれそうだ。

 初対面からマスクをした状態で会って、マスクを外さずに過ごす。
仕事で長いことお付き合いがある人がご飯を食べようとマスクを外したとき、急に知らない人間が目の前に現れた。皆さんも感じたことがあるはずだ。
この現象はなんとなく男性に対してよりも女性に対しての方がより多く感じる気がする。異性というのが何か関係しているのであろうか。
これは美醜とかそういった話ではない、マスク美人みたいな言葉もあるけれど、こいつ想像より可愛くないなというような下世話なことを言っているのではない。
ただただ全く知らない人間が急に現れることに気色悪さや恐怖を感じてしまう、顔の半分は確実に見えているにも関わらずだ。
かといってわたしが女性にいきなり、マスク外してもらって良いですか?なんて聞くのは、殊更何か事情あるならまだしも、確実に変態に見られてしまう気がする。このご時世マスクを外して顔を見せてくださいというのは、服を脱いで裸を見せてくださいというのと感覚的には変わらない変態具合のように思われる。

人と話す時は目を見て話しなさいという小学校の先生の教えを律儀に守ってきたので、人の第一印象はそれ即ち目の印象であると無意識に見なしてしまっていた。
鼻から下のパーツがここまで人の顔を決定づけるとは。

 今日は散髪に行った。3ヶ月弱髪を切らずにいたのでだいぶ伸び切った状態であった。
鏡に映っているマスクをしたわたしを見ると、そこにはおばさんが座っていた。母方の実家に帰ったとき、確実にみたことがあるおばさんだ。薄毛治療の副作用で伸びたまつ毛が幸か不幸かおばさん感を醸し出す。
"ジェンダーレス男子"なんて言葉が流行り出したのは何年も前のことのように記憶しているが、それが自分の顔を見て思い出されるとは予想だにしなかった。
"ジェンダーレス男子"は随分前に事切れた言葉であるようだと勝手に考えていた。
流行り言葉は大方、メディアや創作に食い荒らされていつの間にか白骨化しているというのがわたし個人的な印象だ。
そんな言葉を思い出すほどに、マスク一つでわたしの顔のイメージは変わってしまっていた。
今まで勝手に気色悪さを抱いていた人たちは性別までは変わっていなかった、きっと笑い者にされていたのはわたしだったのだ。悲しきピエロ、それがわたしだ。

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