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片麻痺の起居動作の見方

こんにちは、理学療法士のおかむーです。

今回は、片麻痺の起居動作の見方についてお話しします。

起居動作と言っても寝返りと起き上がりです。

見方として

  •  ADLとしての起居動作が行えるか否か

  •  歩行への影響の有無を調べるため

の2つがあります。

片麻痺の歩行の問題では、クリアランスの低下が多い印象です。

クリアランスの獲得で重要なのは、遊脚期の足関節背屈と膝関節屈曲の2点です。

その意味で下肢の伸展パターンと絡んできます。

下肢の分離が良くても、歩行になると若干の伸展パターンが出現してクリアランスの低下を招く場合があります。

左片麻痺の左遊脚期
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この伸展パターンの要因の一つに、体幹と四肢がつながる筋連結と関係するのを見かけます。

右片麻痺の右遊脚期
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それでは、どのような現象が、体幹と下肢のつながりの影響と判断するかですが

麻痺側の遊脚期で

  •  上肢の伸展あるいは屈曲方向の緊張した動きの出現や、動かなくても緊張が高まるとき

  •  体幹の麻痺側への側屈(特に、肩の下制)が起こる、あるいは動かなくても緊張が強まるとき

  • 下肢の分離は良く、麻痺側の膝関節屈曲や足関節背屈がMMT3以上あるのに、足関節背屈が不十分で足関節の内返しが伴うとき

  • あるいは、左右差で遊脚期の膝関節屈曲角度が麻痺側が少ないとき

などが挙げられます。

その場合、本当に下肢と体幹のつながりによる影響があるかを判断するために起居動作を見ます。

起居動作で見る理由は、寝返りや起き上がりは四肢よりも体幹を主に使用するからです。

見方として、患者さんをプラットフォームに寝かせて、左右に寝返りを行なってもらいます。

セラピストが見る位置は、患者さんの足側に立ってみます。

そうすることで両下肢の状態を比較できます。

また、体幹の回旋の動きから体幹の何筋が作用しているか、あるいは、代償による動きで、実際には使用できない筋をある程度判別できます。

他に、体幹筋の正常な収縮や異常筋緊張の状態もある程度わかります。

ここで重要なのは、筋が弱い、異常筋緊張がある、とだけ見るのではなく、筋連結の知識を踏まえて、下肢とつながるかどうかを判断していきます。

Thomas W.Myers 著 坂場英行 他 訳:アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版 より引用 


寝返りの順番として

まず、非麻痺側に寝返ってもらい、非麻痺側の下肢の動き、体幹の動きを見ます。

それを軸に
今度は、麻痺側に寝返ってもらい、麻痺側の下肢や体幹の動きを見て、非麻痺側の寝返りとの違いを比較します。

麻痺側への寝返りで麻痺側下肢を見るのは、寝返りでは腹斜筋が使われるからです。

たとえば、右片麻痺の場合

右への寝返りでは、麻痺側の右内腹斜筋が使われます。

中枢障害では、内腹斜筋のようなインナー筋は早期に障害されます。

腹斜筋の停止は腹直筋鞘や白線なので、解剖学的に腹直筋につながります。

右に寝返ると機能低下した右内腹斜筋の収縮を促そうと腹直筋が働きます。

あるいは、右側の腹直筋が内腹斜筋の代用をします。
(これは、私の推論です。)

その腹直筋の収縮により下肢の伸展パターンが出現します。

例)
右片麻痺:右への寝返りでは、下になった右股関節は内転して、足がベッドから浮いている。
また、膝関節伸展の緊張と、足関節は内返している。

右への寝返り      左への寝返り


次に、起き上がりですが

起き上がりは、位置エネルギーが絡むため、寝返りより大きな力が必要になり、腹部筋の収縮は寝返り以上です。

麻痺側の寝返りで下肢の伸展パターンが確認されたら、起き上がりでは腹直筋の収縮は強くなるので、下肢の伸展パターンも強くなります。

それが確認されたら、下肢と体幹のつながりがあると判断できます。

右片麻痺の起き上がり
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すると、歩行の麻痺側遊脚期で、麻痺側骨盤の引き上げなどで腹直筋を強く使用されていることが問題になるので、それを使わなければならない原因を探れば、アプローチにつながります。

最後に
なぜ、このような考え方をしたかというと、自論になりますが

筋連結の特徴は、つながりのある筋同士が促通しあえることと考えています。

なぜ、促通しあえるかは、関節の安定化と絡んでおり、あのようなつながりは、進化と関係があると考えています。

中枢系の障害では、インナーが早期に障害されます。

すると、体幹のアウターが体幹の動きと、インナーの役割である脊柱の安定の2つを担うことになります。

中枢障害では、四肢だけではなく、体幹も障害されます。

その弱った体幹筋に対して、筋連結による四肢の収縮を通して体幹への収縮を促すよう働きます。

それが、上下肢の伸展・屈曲パターンを生むことの1つの要因と考えます。

ここで、体幹筋の約2割は脳の同側性支配です。

障害されていない脳が、麻痺側体幹筋をコントロールできます。

上下肢の痙縮が体幹への対応としたとき
体幹筋はコントロールできるので、それを利用して痙縮をある程度押さえられるのではないかと考えたからです。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。





 

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