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#169 実はすごい紙!タバコを包む「巻紙」

『紙について楽しく学ぶラジオ/Rethink Paper Project』
このラジオは、「紙の歴史やニュースなどを楽しく学んで、これからの紙の価値を考えていこう」という番組です。
この番組は、清水紙工(株)の清水聡がお送りします。
よろしくお願いします。

色々なタバコ

はい、という訳で、今回のテーマは「タバコ」です。

そう、すっかり見落としていたんですが、タバコといえば、「紙」なしでは語れないんですよね。
皆さん、気にしたことなかったと思いますが、タバコの葉っぱを包んでいるあの紙、実はすごいんです。

というわけで、早速行きましょう。

まず、タバコっていろんな吸い方がありますよね。
紙たばこが一般的かと思いますが、葉巻きせる、最近だと電子タバコが普及してますね。
今回は、「紙たばこ」が主役です。

タバコの歴史

ちなみに、タバコの起源ってどこか知ってますか?
これ、文献で残っているわけではないのでハッキリとはしてないそうですが、アメリカ大陸が起源と言われています。
マヤ文明の「パレンケ遺跡」に、チューブ状のものを口に咥えて煙をふかす姿が彫られています。
ちなみに、「パレンケ遺跡」というのは、7〜8世紀あたりだそうです。
ここから、「パレンケ遺跡」の時代には、タバコがあったと推測されているそうです。

それから、タバコの葉っぱの植物のルーツを辿っていっても、アメリカにたどり着くんです。
あのタバコの葉っぱ、実は「ナス科」の植物なんです。
そう、タバコの葉っぱは、ナスの仲間なんですね。
現在では色んな種類のタバコの葉っぱが世界中で栽培されていますが、その大半は「ニコチアナ・タバカム」という種に属するそうです。
この「ニコチアナ・タバカム」のルーツをたどっていくと、アメリカ大陸に行き着く。そういう魂胆だそうです。

アメリカ大陸といえば、大航海時代になってヨーロッパに侵略されていきますが、それがきっかけで、タバコはヨーロッパ、それから日本にも渡っていきます。

タバコの葉っぱは、最初は、今みたいに味とか香りを楽しむものではなく、観賞用だったそうです。綺麗な花が咲くんですね。
それからとしても使われていたそうです。これは、「医学的に」と言うわけではなく、「呪術的な」治療に使われていたそうです。この辺は、昔っぽいですね。

日本にタバコが渡ってきた時期は、これも不確実だそうですが、江戸時代に渡ってきたようです。

しかし、日本に入ってきた当初は公には禁じられます。
なぜか。タバコは植物なので、当然栽培しなくてはいけません。
タバコ農家が増えると困ることがあるんです。
そう、主食の米とか麦が作れなくなるからなんですね。
もちろん、理由はこれだけではありません。

しかし、嗜好品のタバコを抑えきることは簡単ではなく、どんどんと産業が膨らんでいきます。
タバコの製法、吸うための道具、日本は独自の進化を遂げていきます。

江戸時代きせるがメインで、色んなデザインのきせるが登場します。ネットで調べてみてください、めっちゃカッコいいです。

そして、明治時代彦根藩の下級武士・土田安五郎がついに「紙巻たばこ」の製造を始めます。
やっときました。メインテーマの「紙巻たばこ」登場です。

その後は、国家財源確保の為にたばこ産業は一旦国営化されましたが、皆さんご存知の通り、現在は、日本たばこ産業株式会社(JT)によって民営化されています。
民営化されたとはいえ、JT法という法律によって、JTの株式の33.35%は財務大臣が保有しています。
JTのウェブサイトにも「現在認可を受けている事業の範囲を超えて新たな事業を営もうとする際には、財務大臣の認可が必要になります。」と書かれています。

タバコを包む「巻紙」

さて、だいぶ前置きが長くなりまたが、そろそろ本題に移っていきましょう。

皆さん紙タバコを想像してください。
メインとなる葉っぱ、それから口元に来るフィルター、それらを包む。想像できましたでしょうか。
まず、タバコの葉っぱを包んでいる紙、これを「巻紙(まきし)」と言います。
それから、フィルターを包んでいる紙、これを「チップペーパー」と言います。
紙タバコは、2種類の紙で包まれているんですね。
この2種類の紙、全くの別物です。

今回は特に特徴的な「巻紙」を見ていきましょう。
さて、この「巻紙」。ただタバコを包んでいるだけではないんです。
めちゃくちゃたくさんの特徴を持った優秀な紙なんです。

特徴その① 不透明度が高くてタバコの葉が透けて見えない
特徴その② 燃えやすいけど、燃え広がりもせず、すぐに灰にもならず、良い感じに燃えて灰になる
特徴その③ 変なにおいや味がしない
特徴その④ タバコの葉を巻くときに巻きやすい

ざっと、こんな特徴を持っています。
どうですか?優秀な紙だと思いませんか?

「巻紙」を解剖する

では、そんな優秀な「巻紙」を解剖していきましょう。

まず原料ですね。
主原料「亜麻パルプ」です。巻き上げに耐えられる強度が必要になりますので、強度が出る亜麻のパルプが使われるんですね。
ちなみに、安いタバコには「木材パルプ」が混ぜられることもあるそうです。

そして最も注目すべきポイントが、「炭酸カルシウム」と「酸化チタン」の含有量です。
なんと25~30%もの「炭酸カルシウム」と「酸化チタン」が含まれているんです。
この「巻紙」25g/㎡程度のかなり薄い紙なんですが、先ほどもあった通り、不透明性が重要になってきます。
薄い紙だけど透けにくくする。そこで「炭酸カルシウム」と「酸化チタン」が登場するわけです。
製紙メーカーにお勤めの方でない限り分からないと思いますが、「炭酸カルシウム」と「酸化チタン」25~30%含有の紙、めっちゃ抄きにくいです。
そう、意外と手間がかかっているんですね。

それから、「燃えやすいけど、燃え広がりもせず、すぐに灰にもならず、良い感じに燃えて灰になる」。
これをかなえる為に、助燃剤というものを加えています。
これには、有機塩酸というものが使われます。

実はもっともっといろんな工夫がなされているんですが、マニアックすぎるのでこの辺にしときます。
とにかく、いろんな工夫の末、タバコの「巻紙」が出来上がっているということです。

ここまで力説してきましたが、ぼくは人生で一度もタバコは吸ったことがありません(笑)

喫煙者の皆さん、これからタバコを吸うときは、今回の話を思い返していただけたら嬉しいです。

はい、という訳で今回は、紙タバコの名わき役「巻紙」について解説させていただきました。いかがだったでしょうか。
それでは、本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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