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第15話 日陰を歩くということ

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第15話 日陰を歩くということ


昔から団体行動は苦手だった。協調性もなければ、社会性もない。軍団ともなればある意味、【小さな社会】がそこに出来上がってしまう。軍団をやるぐらいなら働けば良いじゃん


好きなときに好きなことをするのがこの生活と割り切っていた俺に軍団は向いていなかった


野良のバイトは雇わない、雇うのは信頼関係のあるバイトのみ。ビジネスライクなものではなく人と人との付き合いで手伝ってもらうスタイルが好きだった


知り合いが多いせいか周りからは軍団と認識されることが多いが、基本的に2.3人で動くスタイルがメインなのは昔から変わらない



この時期になると毎年思い出すことがある。決して忘れてはいけない、一生背負っていけなければならないこと


ある日、バイトのB君と連絡がつかなくなった。2日前に送ったLINEが既読にすらならない。今までそんなことは一度もなかったのにどうしたんだろう…


3年以上の付き合いの子だったから飛ばれたかもという怒りより、何かあったのではととにかく心配だった


昔から嫌な予感だけは当たるんだ。良い予感なんて一度だって当たったことないのに…



-数日後

「これってもしかしてB君じゃないですよね…?」バイトのA君からあるネットニュースを見せられた


ネットニュースを見た瞬間、俺は青ざめた


それは殺人事件のニュースだった。被害者の名前と年齢がバイトのB君と一致していた


夜の公園でランニング中にバットで殴打され遺体となって発見されたと書かれていた



その日は人数分ツモれなくてB君には早上がりしてもらった日だった


ロイニー「早上がりになっちゃってごめんね。」

B君「いえいえ、大丈夫ですよ。最近ランニングにハマってるんで今日は走ろうかな。」

ロイニー「そかそか、お疲れ様。また明日よろしくね。」


これが彼との最後の会話だった



ちょうどこの時期、俺は車を盗まれたり某巨大掲示板で本名が晒されて物騒な書き込みがあったりで敏感になっていた


もしかして俺のせいで事件に巻き込まれたのでは…



-数週間後、犯人は逮捕された


犯人とB君は面識もなく計画的な犯行ではなかったらしい。「とにかく誰でもよかった。人を殺せば刑務所に入れると思った。」と犯人は供述したらしい


もしあの日、B君に閉店まで打っていてもらえば…そもそも代打ちのバイトなんてしてもらっていなければ…彼には違う未来があったんではないか



スロットで生活するということ、それは周りに誇れるものでもなければ、誰かを幸せにするものでもない


スロットで勝つということ、それは誰かの不幸を換金するということ



この生活は誰かの負けの上で成立している


悪いことをしているわけでもなければ、犯罪を犯しているわけでもない。でも知らない誰かに恨まれていてもおかしくない


とにかく後ろめたいんだよ


日陰を歩いていこう


2020/8/16

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