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第18話 さよなら、おっさん

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第18話 さよなら、おっさん


2007年、JPSから【アストロ球団】が発売された

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今でこそ萌え台というジャンルが確立されているが、その先駆けがJPSの【ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルテ】である


5号機から参入したJPSはその後も【2027】など斬新なシステムを搭載した台を世に送り出すメーカーとなる



当時のイベントは各機種に設定6が1台入る「機種1」がメイン。今では当たり前の「全台系」はあまりメジャーではなかった


機種1イベントにもってこいの機種がこの【アストロ球団】だった。なんと設定6は1000円で判別可能。今でいうHANABIの設定H


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上の画像見てもらえれば分かるが、設定6だけ5枚役の出現率が極端に低かった。つまり朝からカニ歩いて5枚役が出現したらすぐ移動するような立ち回りが通用した


今のご時世にこんな台があったら軍団に全埋めされるだろう。しかし当時はライバルもほとんどいなく朝から一人でカニ歩くことも出来た


中押しで中リール中段にシャツ(5枚役)が止まった瞬間にクレジットを落として隣へ移動



この日も10台ほどあるアストロ球団を角台から順番にカニ歩いていく。すると反対側からライバルが順番にカニ歩いて来た


急がないと…


数分後、ライバルと僕は島のちょうど真ん中で出会った。


…あれ、入ってない?


しゃべったことはない顔見知りのライバルと目が合う。そしてライバルは照れ臭そうな顔をしてシマから消えていった



いや、今日に限って入ってないなんてことはあり得ない…

実はこの5枚役、設定1~5は出現率が高くボーナス重複期待度は低い。だが設定6だけ小役自体の出現率は低いもののボーナス重複期待度が高かった

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あ…


ライバルとのスピード勝負だったこの日、5枚役が成立した時点ですぐに次の台に移動していた。つまりボナ判別をしていないので設定6を捨てている可能性がある


慌てて角から順番にフラグ判別をして行く


案の定、種ありの5枚役が成立している設定6が今日もしっかり入っていた




前置きはこの辺にして本題に行こう


実はこの【アストロ球団】にはとんでもないバグが仕込まれていた


アストロタイム(ART)中に電源を落とすと何度か一度、無限アストロタイム(ART)に突入するのだ


ARTの純増はショボい現状維持レベルなもののボーナスを引いた分だけ差枚になる。一日打てば5000枚前後は約束されていた


そして導入当初、無限ARTの存在、そして対策する方法がホール側には一切通達されていなかった


この噂を聞きつけ、無限アストロタイムに入っている台を探し歩いた。当時はサイトセブンなんてものはほぼ機能していなく、直接足を運ぶしかない。だからこそ情報の浸透も遅かったから良い時代だったのかもしれない


市をいくつも跨ぎ、探すこと何十店舗。ようやく見つけた。恐らく無限アストロタイムに入った状態で今日が2日目だ。まだいける



閉店して数時間後、スタッフが誰もいなくなったのを確認してから並ぶ


明るくなってきた頃、一人のおっさんがニコニコしながら後ろに並んできた


イベント日でもないし普段は閑古鳥が鳴いている店。相手から何かジャブを打たれたら反応しようとしたが、一切しゃべりかけてこない


なにか嫌な予感がする


開店と同時に早歩きでパチンココーナーを抜けてアストロ球団のシマに向かう


後ろから物凄いオーラを感じ振り返ると、後ろに並んでたおっさんが物凄い形相で走ってくるではないか


まじかよ…こうなると走るしかない。全力疾走でアストロ球団のシマに走る


…ドンッ


台の目の前に着いた瞬間、背中に鈍い衝撃を受けた


痛っ!


何がなんだか分からない中、どうにか下皿に携帯を入れて振り向くと床に携帯が落ちていた


追い付かないと分かったおっさんが全力投球で下皿めがけて携帯を投げつけていたのだ


おっさんは床に落ちた携帯を手に取るとまたニコニコしながら消えていった


そしてどうにか無限アストロタイムが残ってる台を確保し打ち始める



昼過ぎぐらいに見たことのないスーツと店長らしき白服が島の端っこでチラチラこちらを見ながら話している。スーツの男はメーカーの人間だった


あ、今日で終わりかな…恐らく今日は止められることないしブン回そう


5000枚のメダルを流してる最中、店長らしき白服に「いやぁ…対策の仕方やっと分かりましたわ。」と声をかけられた。僕は「ですよね。」と苦笑いをしながら会釈をして店を出る


換金所に向かうと、おっさんはニコニコしながら既に並んでいた


さよなら、おっさん

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