令和6年予備試験論文式試験 再現答案【民事訴訟法】

作成日:9/10
回答ページ数:3.1ページ

第1 設問1
 1 相殺の抗弁が時機に後れた攻撃防御方法にあたる場合、裁判所は却下することができる(民事訴訟法(以下、法令名省略)157条)。
 ⑴ 「時機に後れた」と言えるか。
 ア 「時機に後れた」かどうかは、より早期の提出が可能な客観的事情の有無により判断する。具体的には、事件の具体的進行状況や攻撃防御方法の性質を考慮する。
 イ 本件では、当初、売買契約における代理権の授与の有無及び表見代理の成否が主要な争点として争われていたうえ、相殺は自己の債権を犠牲にするもので実質敗訴を意味するので、その性質上早期の提出は困難である。
 ウ よって、より早期の提出が可能な客観的事情は認められず、「時機に後れた」とは言えない。
 ⑵ 「故意又は重大な過失」が認められるか。
 ア 「故意又は重大な過失」は、当事者の法律知識および攻撃防御方法の性質により判断されるところ、弁護士L2は相殺の抗弁を提出できることを当然認識していたが、相殺権の行使時期には法律上特段の制約がなく、基準時後に相殺権を行使したことを請求異議の訴えの異議事由とすることを許容した判例も存在する以上、弁論準備手続終結後に相殺の抗弁を提出することは認められると考えていた。また、前述の通り相殺の抗弁は実質敗訴を意味する。
 イ よって、「故意又は重大な過失」は認められない。
 ⑶ 「訴訟の完結を遅延させる」と言えるか。
 ア 「訴訟の完結を遅延させる」とは、攻撃防御方法を審理した場合に、審理しなかった場合よりも訴訟の終了が遅くなる場合を言う。
 イ 本件で相殺の抗弁は、L1も本件訴訟の開始前から相殺適状にあることを認めているから、これを審理しても訴訟の終了が遅くなるとは言えない。
 ウ よって、「訴訟の完結を遅延させる」とは言えない。
 2 以上から、L2が提出した相殺の抗弁は時機に後れた攻撃防御方法にあたらず、裁判所は却下することはできないので、却下すべきでない。

第2 設問2
 1 Xは、Aに対し訴訟告知しているから、その効果によってAの主張は排斥されるべきと主張する。
 ⑴ Aに訴訟告知の効果が及ぶか
 ア Xは、Yとの「訴訟の係属中」、補助参加の利益を有し、「参加することができる第三者」たるAに、訴訟告知している(53条1項)。
 イ そして、訴訟告知を受けたAが参加しなかった場合も、参加することができたときに参加したものとみなされる(同条4項)から、Aは46条の「補助参加人」とみなされ、「効力」が及ぶ。
 ウ よって、Aに訴訟告知の効果が及ぶ。
 ⑵ では、どのような「効力」が及ぶか。
 ア 46条の趣旨は、共同して訴訟追行した以上、敗訴時の責任も共同分担することが公平に適うという点にある。そこで、「効力」とは、法的安定を趣旨とする既判力とは異なる参加的効力と解する。
 イ そしてその趣旨から「効力」は、被補助参加人が敗訴時に、被補助参加人と補助参加人の間で、判決理由中の判断も含めて及ぶと解する。ただし、理由中の判断は、主文を導くのに必要となる主要事実に係る認定および法律判断に限られる。
 ウ よって、Xが敗訴したとき、被補助参加人Xと補助参加人Aとの間で、理由中の判断を含めて効力が及ぶ。そして、前訴の訴訟物が売買契約に基づく代金支払請求権であるところ、AがYから代理権を授与されていなかったという事実は、その主文を導くのに必要となる主要事実に係る認定だから、XとAの間で効力を有する。
 2 以上から、Yから代理権を授与されていたというAの主張は、訴訟告知の効果によって排斥されるべきである。                                                                                   

以上


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