〇〇:俺と…結婚して下さい!!
俺は彼女の前に指輪を差し出し、そう言った。
結婚…。
それは人生で大きなイベントの一つだろう。
この人と…一生涯共に生きる。
そう思える人と俺は出会えた。
この人とならどんな事があっても…。
女 :ごめん。
君の事、そんなに好きじゃない。
〇〇:え?
そう言って彼女は去って行った。
季節は12月、
寒さを感じない程に俺は気が動転していた。
--
〇〇:はぁ〜…
俺は〇〇。
絶望の淵に立たされた会社員である。
〇〇:どうしたもんかな…
??:どうしたの?
〇〇:ん?あぁ、菅井か。
こいつは菅井友香。
俺の同期だ。
友香:すごいため息ついてたけど?
〇〇:まぁ…話せば長くなるけど…。
俺は菅井に昨日の出来事を話した。
〇〇:…ってまぁ、こんな事があってさ。
友香:それは…災難だね。
〇〇:せっかく指輪まで用意したのにな…。
友香:でも…
話を聞く限り別れた訳ではないんでしょ?
〇〇:え?うん、まぁ…
友香:急に指輪出されて
動揺しただけかも知れないし…
もう一回聞いてみれば?
〇〇:そうか…うん!そうだよね!
友香:はぁ…
なんで私、元気付けてるんだろう…ボソッ
〇〇:ん?どうかした?
友香:ううん!何でもないよ!
〇〇:早速、今日の夜にでも行ってみるよ!
--
その日の仕事が終わり、
彼女の会社前に着いた。
〇〇:…んで、なんで菅井がいるの?
友香:もし何かやばそうだったら
止めよっかなって笑
〇〇:なんで失敗前提なんだよ…。
友香:それより…彼女さんてそろそろ来るの?
〇〇:あぁ、そろそろ仕事終わる時間…
あ!来た!
ビルの正面から彼女が出てきた…が。
〇〇:え…。
友香:あれって…。
彼女は別の男と合流し、腕を組み始めた。
友香:もしかして浮気?
〇〇:いや、違う…。
友香:え?
〇〇:彼女の左手を見ろ。
友香:左手…あ。
彼女の左手には指輪がついていた。
〇〇:俺の方が浮気だったんだ…。
--
〇〇:あーあ!愉快な話だよな!
結婚したいって思ってた相手が
俺の事を遊び相手にしか
思ってなかったなんて!
友香:…。
〇〇:菅井ももう遅いから帰りな。
これ以上俺と居たって面白い話なんて…。
友香:そういう訳には行かないでしょ!
〇〇:!?
友香:今の〇〇を1人に出来るわけないでしょ!
ほら!どっか飲みに行くよ!
〇〇:…ありがとう。
その晩、俺の気が済むまで愚痴を聞いてもらった。
--
〇〇:はぁ…
翌日、会社で俺は行き場の無くなった指輪を見つめていた。
〇〇:これ、どうすっかなぁ…。
友香:〇〇?まだ引きずってんの?
〇〇:え?いや、そういう訳じゃないけど。
これどうしよっかなって。
友香:そしたら…それ貸してくれない?
〇〇:え!?
友香:い、いやあのね!
最近ストーカーみたいなのがいてね?
それ付けてれば諦めてくれるかなって…。
〇〇:普通に彼氏いるとか言ってればなんとかならないの?
友香:言っても全然だめ。だからお願い!
〇〇:まぁ…いいよ。
友香:えっ!いいの!?
〇〇:別に使う予定ないし、昨日の借りもあるからな。
友香:ありがとう!
菅井は俺から指輪を受け取るとすぐに付けた。
〇〇:なっ!?別に今つけなくていいだろ!
友香:早くつけて馴染ませないと!
なんて訳のわからない事を言い始めた。
友香:えへへ〜。
でもなぜだか顔は嬉しそうだった。
友香:あ!あと説得力をもっとつける為に週末とかに呼ぶかも知れないから!
〇〇:え?まぁ…いいけど。
ストーカーに襲われましたって話を
聞く方が嫌だしな。
--
その後すぐの週末…。
俺は菅井に呼び出され
近くのショッピングモールに来ていた。
…のはいいんだけど。
〇〇:なんで腕組んでるわけ?
友香:いいじゃない!寒いし…
こ、婚約者のフリをするんだから!
〇〇:あぁ、そう…。
んで、今日は何の用なの?
友香:え?特に無いよ?
〇〇:じゃなんで呼ばれたの?
友香:まぁ、その…
どっか出掛けようかなってと思ったら
〇〇の顔が浮かんで…
〇〇:そ、そうか…。
友香:ほら!行こっ!
それから俺らは色々と店を見て回った。
--
夜になりお互いお腹が空いたので、
レストランに入った。
友香:ん〜。
〇〇:どうしたの?
友香:パスタかハンバーグで迷ってて…。
〇〇:そしたら両方頼んで半分ずつしよっか。
友香:いいの?
〇〇:俺は別にどっちでもいいし。
友香:ありがとう!
--
料理が運ばれお互い半分くらい食べ進めた頃…
友香:はい!あ〜ん。
〇〇:え!?
友香:あ、あくまで婚約者のフリだからね!
〇〇:あ、あぁ
パクッ
友香:どう?
〇〇:う、美味い…
菅井はいいんだろうか…
ストーカーを振り切る為とはいえ
好きでもない男にこんな事して…
友香:えへへ〜
でも、なんで嬉しそうなんだ…
--
帰り道…
友香:あ〜今日は楽しかったね!
〇〇:そうだな。
何だか名残惜しい。
あの最低の元カノといた時より
何倍も楽しかった。
きっと、俺は…
友香:ねぇ?
〇〇:ん?
友香:また…こうして呼んでもいい?
〇〇:え…。
友香:あのっ、そのっ!
め、迷惑だったらいいんだけど!
〇〇:別に構わないよ。
友香:えっ!?
〇〇:今日一日楽しかったし…
どうせ週末は暇だからさ。
友香:そ、そう!
こ、これでストーカーに会っても大丈夫だね!
そう…これはあくまでストーカー対策。
撃退できたらもう…
友香:じ、じゃあ私こっちだから!
〇〇:え?
友香:じゃあね!
そう言って菅井は走って帰っていった。
--
友香:はぁ…
なんで素直に言えないかな…。
私は〇〇のことが好き。
今まで〇〇はあの最低な女に
ゾッコンだったのは知ってた。
でも、今は〇〇には誰とも付き合っていない。
弱ってるところを狙うってのは少し気が引けるけど…。
でも彼は社内でも人気が高い。
ウジウジしてたら取られちゃう…。
友香:でもなぁ…。
男 :やっと帰ってきたね。
友香:!?
男 :僕を置いてどこ行ってたの?
友香:あなたには関係ありません!
男 :なんでよ?
僕と君の間で隠し事はないでしょ?
友香:ただ高校が一緒だっただけでしょ?
それに、今の私には婚約者がいるんです!
そう言って左手の指輪を見せる。
男 :なっ!?
僕というものがいながら別の男と結婚するなんて…。
友香:もう関わらないで下さい!
男 :ユルセナイ。
友香:!?
男 :ユルセナイユルセナイユルセナイ…
許すもんかー!!!
友香:きゃあーー!!!
??:おい。なにしてる。
男 :!?
友香:〇〇!!
〇〇:お前…友香に何してんだ?
男 :うるさい!部外者は引っ込んでろ!!
〇〇:部外者も何も…俺の婚約者なんだけど?
男 :うるせぇ!!
ストーカーが〇〇に襲いかかる。
男 :うおぉぉぉぉ!!
友香:〇〇!!!
〇〇:ふっ。
スッ、バコッ
男 :うっ…。
〇〇はストーカーを転ばせて取り押さえた。
〇〇:お前…2度と友香に近づくな。
--
ウーウー
ストーカーは警察に連れていかれた。
〇〇:ふぅ…
友香:〇〇…。
〇〇:怪我はないか?
友香:うん…でもどうしてここに?
〇〇:ストーカーがいるってのに
1人で返す訳にいかないと思ってたからさ。
後を追ってみたらこの状況ってわけ。
友香:…ありがとう。
〇〇:いや〜にしてもさっきまで
今度また会うって話してたのに
もうその理由も無くなっちゃったんだなぁ…。
友香:うん…そうだね。
そう、元々この関係は
あのストーカーを撃退する為。
目的を達成したから、
会う理由も無くなってしまった。
この指輪も…する理由が無い…。
友香:も、もうこの指輪も必要ないね💦
だから返すね!
この指輪を見ると私は〇〇のものなんだって
思えてた…。
そうだ…一か八かで…
友香:べ、別にいらなかったら私が持ってても…
〇〇:うん。返してもらうよ。
友香:え…。
〇〇:だって…
それは菅井の為に買ったものじゃない。
だから…今度買いに行かない?
友香:えっ!?それって…。
〇〇:今日一緒に過ごしてわかったんだ。
俺は…菅井の事が好きだ。
だから…付き合って下さい!
友香:…うん!
〇〇:よかった…。これで菅井にまで断られたら…
友香:友香!
〇〇:へ?
友香:さっき見たいに友香って呼んでよ!!
〇〇:えっ!?
友香:もう彼女なんだからいいでしょ!
〇〇:う、うん…。わかったよ、友香。
こうして晴れてパートナーになれた私達。
後日、私達は指輪を買いにいった。
私は安物でもよかったんだけど…。
〇〇:いや!前のよりいいやつにする!
俺のプライドが許さない!
…と中々なものを買っていた。
Fin
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