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ケイティーズの牝系から出た大物

ワールドリバイバルが先頭に立ち、無理をしなかったタイトルホルダーが外の2番手、その内に勝ったエフフォーリアはポジションを確保することができた。これが最大の勝因。アドマイヤハダルがこのポジションを取り、エフフォーリアはその後ろと考えていたので少し意外であった。

ひとつ前のポジションを走り、内で脚を溜められたことで、第4コーナーでは周りを見ながらどこを抜け出そうかと考えるほどの抜群の手応え。追い出されてからの瞬発力も坂を駆け上がるパワーも、他馬よりも一枚上であった。肉体的にも精神的にも、仕上がりも完璧であった。

共同通信杯のレース後、ルメール騎手が「ダービー馬だ」と言ったのも頷ける。特に今日の力を要する重い馬場も、他馬が苦にする分、エフフォーリアの強さを際立たせた。個人的には、ケイティーズ(ヒシアマゾンの母)の牝系から久しぶりに大物が誕生したことが嬉しい。

キャロットの見学ツアーで1番馬だと評価したオーソクレースは結局、皐月賞には出られず、完全にスルーしていたエフフォーリアが皐月賞馬となり、ダービー馬となろうとしている。あのツアーにクラシックホースがいたことは嬉しいが、自分には見抜く力がなかったのは悔しい。

横山武史騎手も初G1制覇とは思えない、普段どおりの騎乗であった。これからいくつもG1を勝つジョッキーであり、その1つ目であったということだ。ひとつ後ろのポジションになっていたらもう少し難しいレースになっていたが、それでもこの人馬が勝っていたのは間違いない。

日本ダービーに向けて、陣営はもちろん、横山武史騎手も精神的に追い詰められるだろう。その緊張は馬にも当然伝わる。それをも克服して日本ダービーまで勝ってしまうのではないかと思わせる、エフフォーリアの能力の高さ、武史騎手の心臓の強さがある。

2着に粘り込んだタイトルホルダーも、最高のポジションを走ることができた。パワー溢れる馬体を誇るだけに、今回のような馬場も合っていた。ドゥラメンテ産駒にしては精神的に落ち着いており、きっちり調教ができ、レースに行って問題もない。成長力もあるのでさらに強くなる。

関東馬同士でのワンツーフィニッシュは1997年のサニーブライアンとシルクライトニング以来となる。このまま関東に流れが行くのか、それともこの世代だけか。ダービーも関東で行われるので、長距離輸送のないエフフォーリアとタイトルホルダーには追い風になることは確かである。

ステラヴェローチェは吉田隼人騎手の好騎乗にも導かれ、この馬の強さを発揮して見せ場をつくった。バゴ産駒だけに、やはり本質的には上がりの掛かる競馬を得意とするタイプであろう。勝ち馬とは力差があるが、再び馬場が重くなるレースであればチャンスは生まれるはず。

アドマイヤハダルは、テン乗りで慎重になったのか、それともダービーを見据えてか、ルメール騎手がポジションを取りに行かなかったのが不思議に思えた。最後は良く伸びているし、馬場が軽くなれば、日本ダービーでは持ち味の瞬発力を生かすことができるはず。逆転候補の1頭。

ヨーホーレイクとディープモンスターは後ろから良く伸びている。差し馬にとって苦しい馬場であったにも関わらず、最後まで頑張った。一瞬伸びるかと思わせたが、急坂で止まってしまった。まだパワー不足の面は否めないが、ダービーが良馬場で行われたら差は詰められるはず。

1番人気のダノンザキッドは、勝負所で早々に手応えを失ってしまった。馬場が合わなかったこともあるが、それ以上に精神的に終わっていた感が強い。暑さも加わり、パドックでもひと際汗をかいて消耗していた。ひと叩きして良くなるのではなく、よりレースを嫌がってしまっている。


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