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サンデーサイレンスのクロスは走る!?

ダークペイジとトーホウラビアンが3番手以下の集団を引き離して逃げ、前半マイルが46秒4、後半マイルが47秒4という引き締まった流れをつくりだした。ウォーターナビレラ以下は平均ペースといったところか。後ろから行った馬たちにもチャンスがある、展開による有利不利の少ないレースとなった。1番人気に推されたナミュールは立ち遅れが響いて4着に敗れたが、それ以外の馬たちは力どおりの決着(着順)と考えて良いだろう。

勝ったサークルオブライフは、先行集団を見る形でレースを進め、最後の直線に向いてから余裕を持って追い出されるや、先に抜け出していた馬たちをまとめて捉えてみせた。そもそもイクイノックスに敗れた新馬戦も強いレースであったし、2戦目の未勝利戦は衝撃的な勝ち方、前走のアルテミスステークスも前残りの競馬を強引に差し切ったものであり、現時点ではこの馬の実力が一枚上であることは間違いない。パドックでは急に入れ込んだり、落ち着いたりと不思議な性格の馬であるが、とにかく地脚が力強い。

ミルコ・デムーロ騎手は弟クリスチャンの騎乗する人気馬を負かしての勝利だけに、兄としての面目を保つことができた。2013年の桜花賞ではレッドオーヴァルに騎乗して、弟のアユサンに差し切られて悔しい思いをしただけに(私も同じく悔しい思いをしたのでよく覚えている笑)、ミルコ・デムーロ騎手がゴール後に喜びを爆発させた気持ちは良く分かる。ここ数年はスランプというか騎乗馬が回ってきにくくなっているが、今日の騎乗を見ても決して衰えは感じないし、ここ一番の勝負強さはさすがミルコである。

2着に入ったラブリイユアアイズは、積極的にレースを進め、勝ちに行ったが、今日は勝ち馬が強かった。道中で少しガチャガチャしてしまったのが悔やまれるが、それにへこたれることなく、最後まできっちりと伸びてみせた。決してフロックではなく、マイルの距離も全く問題ないので、順調に行けば桜花賞でも勝ち負けになる1頭である。新種牡馬ロゴタイプ産駒の活躍は嬉しく、ロゴタイプ自身が2歳から古馬になるまで長く活躍した馬だけに、この馬にも息の長い活躍を期待したい。

ウォーターナビレラはパドックの雰囲気も良く、乗りやすいタイプと見えた。馬の行く気に任せて先行して、そのまま押し切ろうとしたが、ゴール前で惜しくも差し切られてしまった。5月の遅生まれにもかかわらず、肉体的にも精神的にも完成度が高い。これも父シルバーステートの強い遺伝力なのだろうか。シルバーステート産駒は早い時期から動けるが、あまり無理をさせてしまうと肉体的、精神的なバランスを崩して走らなくなりそうなので、ひと息入れて、気をつけてケアしてもらいたい。

レースが終わり、ふとサンデーサイレンスのクロスについて気になったので調べてみたところ、サークルオブライフとラブリイユアアイズはやはりサンデーサイレンスの3×4のクロスであった。やはりと書いたのは、サンデーサイレンスがクロスしている馬が上位に来ているのではないかという直感があったからだ。もしかすると私の勘違いで、出走馬のほとんどがサンデーサイレンスのクロス持ちかもしれないと思ってさらに調べてみると、以下のとおりであった。

★サンデーサイレンスの3×4
サークルオブライフ
ラブリイユアアイズ
シークルーズ
タナザウイング

★サンデーサイレンスの3×3
ナムラリコリス

全18頭中サンデーサイレンスのクロスがあるのは、わずか5頭だけであった。それ以外の13頭は父がサンデーサイレンス系の種牡馬であっても、母系にはサンデーサイレンスの血が入っていない、もしくはハービンジャーやロードカナロアといったサンデーサイレンスの血を持たない種牡馬が父ということになる。18頭中のわずか5頭のうちの2頭がワンツーを決めたという事実がある以上、サンデーサイレンスのクロスに関して、以下のような解釈が浮かんでくる。

① サンデーサイレンスの3×4までのクロスを持つ馬は走る
② サンデーサイレンスのクロスを持つ馬は早熟性が高まる

サンプルが少ないのに何を言うかと怒られそうだが、サンプルが少ないから①の解釈について私は保留している。しかし、今回サンデーサイレンスのクロスを持つ馬が上位に来ているのではと想像したのは、②の早熟性が高まると考えたからである。サンデーサイレンスのクロスを持つということは、サンデーサイレンスの特徴が強調されるということであり、そのひとつである早熟性は確実に前面に現れてくるはずだからだ。

①に関しては保留としたが、もしかするとそうなのではないかと心のどこかで思っている。今、サラブレッドの生産界はインブリードの弊害を危惧してサンデーサイレンスのクロスを避けて配合を考えがちだが、もしかすると私たちの直感は間違っていて、近視眼的にはサンデーサイレンスのクロスがある馬の方が走るのかもしれない。もちろんそんなことは分かっているけれど、真の問題はサンデーサイレンスのクロスを持つ繁殖牝馬が増えており、その繫殖牝馬にどの種牡馬をつけるかだと言われたら、それはその通りであると思う。目の前の結果を求めるのであればサンデーサイレンスの血を強調し、その弊害として長い目で見ると血統の袋小路に陥るということなのだろう。

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