見出し画像

馬は悪くない

ディアスティマが先頭に立ち、前半1000mが59秒8という速いペースで引っ張ったことで、淀みのない引き締まったレースとなった。実力が素直に反映された結果であり、勝ったワールドプレミアはゴール前耳を立てていたように、着差以上の完勝であった。何回走ってもこの馬が勝つ。

ワールドプレミアは最終追い切りでしっかりと負荷を掛けられ、完璧な仕上がりにあった。母系が欧州のガッシリしたスタミナタイプであり、その血が色濃く出てきている。うがった見方をする人たちが評価を下げていたことで、実力以上に馬券は美味しかった。馬は悪くない。

福永祐一騎手はレース全体が見えていて、道中から勝負所まで実に冷静であった。スタートしてから少し出していったのも積極的で良かったし、仕掛けどころも完璧。今回の騎乗に関しては非の打ち所がない。やはり天皇賞春は最高の人馬が一体となってこそ制するレースである。

ディープボンドは主導権を握り、早めから動いて行ったように、勝ちにいく積極的な競馬をした。最後は決め手の差で屈してしまったが、相手が悪かっただけで悲観する内容ではない。馬体が重いタイプなので、長距離が得意というよりは、上がりの掛かるレースが合うのだろう。

早めに先頭に立つ勢いを見せ、牝馬ながらにして3着に入ったカレンブーケドールは素晴らしい馬である。一線級のメンバーに入っても、スタミナもパワーも引けを取らないことを証明した。直線が平坦な京都競馬場で行われていたら、もう少し拮抗した結果になっていたはず。

アリストテレスは最後は脚が上がってしまったが、これが現時点での実力ということだろう。前走に比べて、道中は折り合いがついていたし、レースの流れにも乗れていた。馬体を見ると、本質的にはもう少し短い距離(中距離)の方がフルパワーを出し切れるのではないかと思う。

ウインマリリンも、牡馬と真っ向勝負をしてこの結果は、十分に力を出し切っている。1年前のパドックでは、膝に骨瘤を抱えて心配させていた馬がここまで走っているのだから、この馬の気持ちの強さと陣営の丁寧なケアは賞賛に値する。立派な牝馬である。

ディアスティマは乗り替わりは残念であったが、坂井瑠星騎手も積極的に勝ちに行く競馬を試みていた。現時点での力は出し切っている。今回の経験を生かしていけば、この先、重賞のひとつや2つは逃げ切れる馬に成長するだろう。パワーとスピードの持続力を生かす競馬が合う。

天皇賞春は4、5歳馬が圧倒的に有利な中、ユーキャンスマイルは6歳馬ながらに頑張っている。道中の前進気勢を見るに衰えは隠せない。惜しむらくは、全盛期であった昨年の天皇賞春が阪神で行われていたらということだ。現代日本競馬においては珍しい典型的なステイヤー体型。


「ROUNDERS」は、「競馬は文化であり、スポーツである」をモットーに、世代を超えて読み継がれていくような、普遍的な内容やストーリーを扱った、読み物を中心とした新しい競馬雑誌です。