持続化補助金の書き方(企業概要 財務分析 応用編①損益分岐点)
この記事を読んでいる人は、前回の財務分析基礎編を読まれていると思います。
持続化補助金の申請で最初に立ちはだかる壁である「企業概要」。
この記事では、企業概要の欄で使える財務分析の応用部分について説明をします。
この記事を読めば、損益分岐点の計算が行えるようになり、持続化補助金の申請書のレベルが一気に向上して採択される可能性が上がりますのでぜひ最後まで読んでみてくださいね。
それでは、はじめます!
持続化補助金の書き方(損益計算書のおさらい)
決算書の中にみると、『損益計算書』という書類があったことを覚えていますか?
損益計算書は、1年間における会社の成績表みたいなもので、1年間でどれだけ儲かったかを表しているものでしたね。損益計算書は下の構造になっています。
①売上高
②売上原価(粗利)
③売上総利益
④販売費および一般管理費(営業経費)
⑤営業利益
⑥営業外収益
⑦営業外費用
⑧経常利益
⑨特別利益
⑩特別損失
⑪税引前当期純利益
⑫当期純利益
上は法人の損益計算書で使われる様式ですが、個人の青色申告決算書では以下のようになります。①~⑤の該当部分を赤字で記したので参考にしてください。
財務分析の基礎編では、業績推移や利益率についてみてきました。
応用編では、もう少しだけ踏み込んで自社の損益分岐点を把握できるようにしていきたいと思います。
持続化補助金の書き方(申請書で使える損益分岐点とは?)
損益分岐点とは、黒字と赤字の境界線のことです。
損益分岐点を超えれば黒字、下回れば赤字ということですね。
では、損益分岐点を把握するとなにが経営に役立つのでしょうか?
損益分岐点が分かることで、事業者にとって以下のメリットがあります。
赤字と黒字の境界線が把握できる
赤字の場合、黒字になるための販売計画が具体的になる
黒字の場合、死守しなければならない販売数が分かる
販売目標が具体的に立てることができる
このように、損益分岐点を把握することができれば、補助金の申請だけではなく、経営のレベルも飛躍的に向上しますのでぜひ身につけていただきたいと思います。
持続化補助金の書き方(損益分岐点の計算)
それでは、損益分岐点の計算に入ります。
損益分岐点の計算には、CVP分析を使います。
CVP分析とは、費用を固定費と変動費に分けて、営業量(Volume)の変化に対して原価(Cost)や利益(Profit)がどのように推移するかを分析することをいいます。
販売量だけではなく製造量にも使え、量に対して、原価や利益がどのように推移するのかを分析することができるのです。
損益分岐点図表と利益の構造について
図表は右に行けばいくほど量(Volume)が増えます。
固定費の場合は、量に関係なく費用額が一定になりますが、変動費は量が増えるのに比例して増えることになります。
この固定費と変動費が積みあがった部分が総原価となります。
ここに、売上高の図表を加えて、売上高と総原価が交わる部分が損益分岐点となります。
損益分岐点の計算方法
上の図では、損益分岐点の量が分からないので、xとします。
売単価は@100円、変動原価の単価は@50円、固定費5000円の場合上図のような式が成り立ちます。
式を解くと、販売量は100ということが分かり、100を下回れば赤字、上回れば黒字ということが分かります。
ここまでは、単価での計算だったため、販売量を知ることができましたが、売上金額、変動原価、固定原価で計算すると以下のようになります。
売上金額:100,000円
変動費:50,000円
固定費:5,000円
(式)
【限界利益の算出】
(売上金額)100,000円ー(変動費)50,000円=(限界利益)50,000円
【限界利益率の算出】
(限界利益)50,000円÷100,000円=(限界利益率)0.5%
【損益分岐点売上高の算出】
(固定費)5,000円÷(限界利益率)0.5%=(損益分岐点売上高)10,000円
このように、上の例では、損益分岐点の売上高は10,000円だと分かりました。
このように、損益分岐点の計算は、売上高から変動費を差し引いた『限界利益』でどれだけ『固定費』を回収できるかの話になります。
それでは、上の条件で、経営状態がどれだけ安定しているかを計算してみましょう。
売上金額:100,000円
損益分岐点売上高:10,000円
(売上金額)100,000円ー(損益分岐点売上高)10,000円=90,000円
90,000÷100,000=(安全余裕率)90%
この安全余裕率というものは、『現在の売上高から何%で損益分岐点になるか』を表しています。
上の例でいえば、現在の売上高から90%下落して損益分岐点の売上高になることが分かります。
つまり、現在の売上高から90%を超える売上減少があれば、赤字に転落するということになります。
現在が赤字の場合
上では、黒字の場合を見ましたが、赤字の場合はどうでしょうか?
売上金額:5,000円
損益分岐点売上高:10,000円
(売上金額)5,000ー(損益分岐点売上高)10,000=-9,500
-9,500÷5,000=(安全余裕率)-52.6%
実際の経営では当然上記のような例もあります。これは現時点から52.6%の売上上昇で黒字に持ち込めることを表しています。
CVP分析を使って目標利益を設定する方法
今までみてきたように損益分岐点が分かれば、現在の売上高からどれだけ売上が下がると赤字になるか、または、現在の売上が赤字の場合には、どれだけの売上を上げれば黒字にできるかが分かります。
では、目標とする利益を設定したい場合は、どうすればよいのでしょうか?
売上金額:100,000円
変動費:50,000円
固定費:5,000円
目標利益:30,000円
(式)
【限界利益の算出】
(売上金額)100,000円ー(変動費)50,000円=(限界利益)50,000円
【限界利益率の算出】
(限界利益)50,000円÷100,000円=(限界利益率)0.5%
【目標利益達成のための売上高】
(固定費)5,000+(目標利益)30,000÷(限界利益率)0.5
=(目標利益達成のための売上高)70,000円
このように、固定費に目標利益を足せば良いのです。つまり固定費と目標利益を限界利益で回収することを考えるということになります。
小規模事業者がCVP分析をするときは、どの数字を見るの?
では、小規模事業者がCVP分析をするときは決算書のどこを見ればよいのかですが、
もう一度下の決算書をみてください。
売上高は分かると思いますが、問題は『変動費』と『固定費』ですね。
結論として、変動費は『②売上原価』、固定費は『④販売費および一般管理費(営業経費)』で考えれば大丈夫です。
厳密には、少し違うのですが小規模事業者の場合はこの理解で問題ないと思います。
一度ご自身の決算書を見て、計算をしてみてください。
きっと今まで気づかなかった経営状況が見えてくるはずです。
まとめ
この記事では、小規模事業者持続化補助金の企業概要で使える財務分析の応用である損益分岐点分析を見てきました。
今回は難しかったかもしれませんが、CVP分析をマスターすれば補助金の申請だけではなく、より実践的に経営をみることができると思います。
CVPを使って自社の財務状況や今後の販売計画を立てることができれば計画にも具体性が増し採択の可能性も高くなるでしょう。
上でもかきましたが、CVP分析はぜひ一度決算書をみながら実際に計算してみることをお勧めします。
気づいていなかった経営状況に気づくことがありますのでおすすめですよ!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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