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同人誌で何を表現したいのか、と言われてちょっと考えてしまった話

先日色々経緯があって私の描いた同人誌を人に見せた。
アニメって子供向けの番組でしょ?っていう認識の、もう所謂ごくごく一般人、フットボールが好きで出身はカメルーン。初対面(厳密には2回目)とは思えないほど陽気ないいヤツである。

そんな相手に妙な文化の深淵を半ば強制的に覗かせることになってしまってもはや申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど、何はともあれ。感想を聞けば良かったよ、女の子がその、中々あれだったけど、と。
(念の為ですが健全な全年齢同人誌です)

「うん、それで、これはその、どういう作品(Art)なの?」
「単なる(Just)Fan artだね。アニメとかゲームの」
「単なる?でもこうやって作品にしているということは、何かこれを通じて表現したいものがあるんだろう…?(意訳)」

…え、お、…………おぉ????
えっそんなオタクが二次創作で「表現したいもの」なんて「推し~!!!!!!(クソデカ感情)」って狂気の発露でしかなくない????

むしろ表現したいとかそんなことすら考えてなくて、ある作品を鑑賞した結果感極まって溢れて漏れ出て気づいたら薄い本になってたって、ただそれだけじゃん…?

そこに『物語』があるだけで、我々はただ脳汁というインクを絞り出してるだけの使い捨てのペン先に過ぎない…

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まぁその狂気を現実世界に出力定着させるに際して、一応テーマとか今回はここをフォーカスしていこうとか、ストーリーのギミックだとか、もっと単純にページ数とか作業時間とか、そういう細かな形式的なあれこれはもちろんあるんですけど。

あるけど、でもだからってそういうテーマとかを手にとって「これが今回作品で伝えたいことです」っていうのは、できなくもないけど、それなんか表現したかったこと、といわれてしまうと違うよね???って思ってしまうわけですよ。オタクめんどくせぇからさ。それならその背後にある色んなものを早口で説明しなきゃって思っちゃうわけじゃん。できないんだけど。

結果として「んなもんねぇよ!!」で話は終わってしまうんですが、冷静に考えてそもそも(特に)二次創作とは何なのか。

とある作品を見て、何らかの感情の突き動かされ、それを金と時間と労力を惜しまず本の形にして同好の趣味人と交換し合い噛み締め合うという同人文化、この資本主義の世において相当頭おかしい無意味な活動ではないか。我々(あくまで同人文化に馴染むオタク層またはその周辺でこうした活動に理解を示す人々)はいつの間にこの謎の文化と形式を当然のように受容しているのか。

誰しもおそらく初めて同人文化に触れた瞬間というのはあったはずで、比較的平和な例だと例えば商業アンソロ本なんかをうっかり書店で手にとってしまって、オリジナルとちょっと絵柄とか話やテイストが違う本があるんだな~みたいなものから、ネットをさまよっていたら過激な二次創作に触れてしまい電撃が走った…みたいな例、友達に問答無用で貸し付けられた薄い本だとか、知ってしまった家族の秘密とか、気づいたらイベント会場にいたとかエトセトラエトセトラ。

私自身も遥か昔のことを思い返してみると…いやよく思い出せないわ。元々一人で延々と自由帳に漫画を描いているような子供だったから、好きな漫画やアニメがある、それに対して好きなキャラクターを自分で描く、さらに好きなようにお話を考えそれを漫画にするという「遊び」があまりに自然だったし中学以降ネットに入り浸って個人HPやブログやらの全盛期を経験してしまったので、自分の好きや興味関心を何らかの形にして発表してそれを誰かに見てもらうというプロセス及び活動に疑問を差し挟む余地が人生の中で全くなかった。

そこに「表現したい何か」はあるか?

いやまぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~日本語こねくりまわしたら何かしら全然出せるけど、なんか、究極、素直に考えて、え?ある???

ある人ももちろんいると思う!いると思うけど結構大部分の二次創作は…二次創作はおよそ作者の気持ちを言語化できる範囲で答えなさいつったら「この原稿が終わったら俺は寝るんだ焼き肉行くんだ」くらいでしょう…?「可愛い!」「エロい!」「イケメン!」「尊い!」「あ゛~!」「好き~!」くらいじゃない?同人原稿中に2単語以上の気持ちなんて持ってる?少なくとも私は持ってない。

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とは言うものの結構、美術館とか行くと有名絵画とか推し画家の模写とかオマージュとかってどの時代も地域も普遍的にあるわけじゃないですか。色々解説とか背景とかはあると思うんだけど、ぶっちゃけ「このこのこの~◯◯神絵師のこの色使いと構図!!最高of最高!XXパロとか絶対いいよね?誰か描いてくれねぇかな~描いたら出る!描いたら増える!」くらいのテンションでできてる絵画とか文学作品絶対あるやん。てかそうとしか感じ取れない作品ちょくちょくあるやん。

個人的にはだから、過去そうした文化活動が一種特殊な職業や一部の(余裕ある)人しかできなかっただけで、現代は幸いそうした発信活動を日常的にできる人が爆発的に増えただけで特に特殊な事象ではなく、その他のあらゆる事象と同じくマス化しただけに過ぎないと思ってるんだけど。

それでまぁその二次創作や同人誌文化をどう説明しようかっていうときに、とりあえず(めんどくさいから)Fan artと言ってはいるけど、こうArtってつくとどうしても意図や意味を見出そうとする高尚な義務感を感じてしまうこういう人たちが多くいるのではなかろうか。そもそも日本語でも別に伝わらない人にはそれこそコミケが一体何のお祭り騒ぎなのか全然伝わってないと思うし、別段求められてない以上伝える必要すらないし

ただどうしてもオタクといったときの偏見や攻撃を緩和するために丁寧に説明する必要がある場合もあろうで、自分たちの活動について説明する言葉を持っていないというのはあまりよろしくないだろう。英語版Wikiはあるけどこんなもん送りつけられてもねぇ。(てゆーかあるんだね)

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そんなこんなを例の質問後、頭の片隅でぼんやり考えていたんですが、そのうち話は普通に進んでって、音楽が鳴ってて、そのカメルーン人が突然「踊ろうぜ!」などとのたまうので。

「踊る?」
「いや踊んないよ。踊り方知らん」
「What?知らないなんてない!好きにリズムに乗ればいいいんだよ!」

いやそれそれそれだろそれ~~!!!!音楽が流れてるから、ビートが鳴ってるからってお前らはそれが謎の不規則な身体運動として現実世界に結実してるわけじゃん!!!私の同人誌多分そのダンスと同じだから!!!気づいたら踊ってるんだよ!そこに意味も意図も表現したい何かみたいな小難しい話なんてないんだよ!!それでお前がさっき同人誌を目の前にした戸惑いと疑問に今私は全身包まれているから踊らねぇんだよ!!!!!!

…ってめっちゃ言いたかったんだけど、酒も入ってたし英語だし全然無理だったので、せめてここに記しておきます。ちなみに私は音楽に合わせて身体を揺らすことすら意味がわからんし自然にはできない壊滅的リズムセンスの持ち主です。

人類史見渡してみても音楽に合わせてダンスするという表現方法が同人誌作る表現方法よりより普遍的(メジャー)なのでこういう不幸な行き違いが起こるんだろうな。

相手の好きを否定しない、世界のオタクに恥じない謙虚な態度でこれからも地道に同人文化を楽しみついでにちょっとずつ広めながら頑張っていきたいと思った一夜の出来事でした。

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