耳鼻科

耳鼻科に行った。本当は行きたくなかった。でも耳の中のかさぶたが気になり、鼻水も止まらなかったから仕方なく。
耳鼻科は嫌いだ。各器官に密接した障害である口蓋裂なので、子供の頃から耳鼻科は、なんか絶対、なんか言われる場所だから。
今日は初めての医院だった。先生もスタッフも妙にパワフル。病は気合と行動で治せるもの、という圧。気を引き締めた。

耳は薬を塗るとして、鼻に関しては形を診察し「あー」といわれた。
「今だったらもっといい形成が出来たのにねえ」
「もう30年も前の形成なので。この年齢なので」

「あと(人生)30年はあるでしょう」

わかっている。相談はしたことがある。
口蓋裂なので、上顎に骨という土台がない。単に鼻の形成をして済む話ではないのだ。
そして残りの人生30年のために骨盤から骨を切り出し、上顎に移植し、舌を切って上顎に縫い付け、1ヶ月点滴で暮らし、さらに傷が落ち着いたら歯のインプラント手術を数年かけて行うという大掛かりな治療を、今しろといわれて出来るかどうか、現実的に考えてほしい。

ほかに治療の選択肢を一緒に考えもしてくれないくせに、ぱっと形を見てぱっと口に出す医者に、内心とても傷ついたが、こんな医者は幾らでもいるし、何度も悲しい思いをしてきたので泣くのをグッとこらえた。
そして答えた。
「〇〇医科歯科大でもう相談はしてますが、なかなか。いい方法を先生も考えてください」

あけすけな医者ならこちらも同じように応じればいい。無理やりテンションをチューニング。びっくりしてたら、相手から自分の欲しい治療を引き出せないで終わってしまう。しかし医者は薄く笑って濁した。その程度か。専門外には言及しないのはお約束。ひとには「これは治せ」というくせに。
「鼻うがいを続けていれば炎症は起きにくいと思うので、やってみてください」と指示をし、診療は終わった。

ハキハキとした医師なので、使いようによっては役にたつかもしれないが、多分、もう行かないかもなぁと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?