香りの記憶
窓を開けた部屋で海の匂いを楽しんでいたら、漂う香りがよそんちの放つ天ぷらになった。夕飯時。そろそろお腹もすいてきた。
香りの記憶は、二十年間は薄れないという。逆にいうと、それより前のものは遥か彼方のものに変化するということだ。
確かに二十歳前後より前のあれこれは、記憶、というより、もう伝説というか、そんなこともあったらしいな、とどこか生々しさの抜けたものになりつつある。色々あったな、と穏やかに眺められる。でもそれは、「色々」を経てきたからこその気持ちなのだろう。
さて、これから二十年先は還暦あたり。その頃の私は今夜の海の匂いと天ぷらの香りをどのように思い出すのだろう。
不安でもあり、楽しみでもある。
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