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時速4キロで歩くたかしくん

 たかしくんは時速4kmで2km先の学校へ向かっています。たかしくんは小学校三年生。もう自分とそれ以外の区別ができる年齢です。

 中流家庭の長男として生を授かった彼に対して、両親は大きすぎる愛情を注いでいます。たかしくんがそんな両親を鬱陶しく感じ始めるのはもう少し先の話。最近は、いつもより軽く感じる玄関のドアノブにも、ほんの少し狭く思える路地裏の道にも、自分の手のひらよりも大きな紫陽花にも、鳥の鳴き声、カタツムリ、降りそうで降らない雨、目が合うと吠える近所の犬にも。そして自分自身にも。どこか昨日とは違うような、そんな気がしていました。

 先週擦りむいた膝小僧のかさぶたが剥がれかけて、たかしくんは何分後に学校に到着しますか?

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