1

冬物のコートを買いに行こう
そう出掛けた日だった
暖かく重くないのがいい
流行りのブランドが集まる百貨店で
下からゆっくりエスカレーターで上がろう
6階が本屋さん、7階がレストラン街だから
5階まで上がって、インスピレーションが起きた階で決めよう
隅から隅まで探索するのは苦手
ずっと忙しくしてたせいか、最近自分がせっかちになっているのがわかる
各階降りて見ればいいものを、、、
半端自分に呆れながら
登るたび、ゆっくりと目に入る秋冬のトレンドを目でかき分けていると
あっという間に本だらけの景色に到着してしまった
あちゃー登り過ぎちゃった
反対側にまわって降りるか
コートもこの時点で別に今日じゃなくてもよいかな
コーヒーでも飲んで帰ろう
そんな気持ちになっていた
エスカレーターを降り
左手にステーショナリーショップ
真鍮を使った文具類が並んでいる
反対側にはペットショップがあった
左にまわりで下りのエスカレーターに乗ろう
趣きをそそる文具には興味がある
もしかしたら今日はここで何が買ってしまうのかな？
ペンやノートクリップや手帳を見て
使用感を想像する
いいかも、、、
買いたい気持ちを持つ反面
持ち物の1つだけコレで良いのか？迷う
やめた！
今日は帰ろうと決めた
もうエスカレーターも面倒になり
それより奥のエレベーターへ向かう
折り返し、ふと見たペットショップの奥に
小さいゴールデンレトリバーが座っていた。

一瞬で何かが切り替わったような感覚
可愛い
ちょっと前までの面倒さや
疲れ、ストレスが一瞬で吹き飛んだ
一緒に帰ってくれる？
目で話しかけてみる
お座りもゆらゆらとおぼつかないこの子に
私は何をもらったのだろう？

まさかね、、、

コートを買う予定の現金で
ゴールデンレトリバーを飼ってしまった
男の子、車の中で
タマゴのダンボールに向かい
もう少しで家に着くからね
もうちょっと、あと少しよ
そう何度も話しかけて帰った