『DAO(分散型自律組織)の衝撃』を読んで。

書名:『 DAO(分散型自律組織)の衝撃』
著者:小澤隆博
出版社:明日香出版社

2022年1/29 読了

■読んだ理由、目標
・DAOが資本主義社会の病を治す特効薬となりうるかを知りたい
・DAOの成功例が知りたい

■感想
資本主義の負の側面を打ち消すための切り札としてDAOに期待しているが、まだ時間がかかりそうだ。

富を得たものがさらに富を生み出すことで格差がどんどん広がり、貧者側に回ってしまった社会の弱者・敗者が、自由や人権や健康を損なう資本主義社会では、やはり既得権益者やお金等を持てる者はその立場をおいそれとは受け渡さない。

DAOによって現実における社会的インフラや、富の流れや、既得の権利や、税制のシステムや、国家の立場や、基軸通貨としての立ち位置などが棄損される可能性があるのであれば、その管理者は規制をかけるなどあらゆる形で当該DAOの芽をつぶすだろう。
その牙城を打ち崩すのは宣戦布告に等しく、一コミュニティ程度では太刀打ちできるものではないだろう。そうでなければ、国家は不安定になり、別の国家に負けてしまうからである。

そう考えると、DAOによって早期に大きく変わるのは、オンラインの中に留まる、文化的な分野に留まるのではなかろうか。
音楽やアートなど、人間の生活や生命にとって必要不可欠なものではなく、また且つお金の匂いが薄いものほど成功する可能性が高いように思う。

アメリカでは昔から銀行嫌い、政府嫌いの文化が強く、「中央銀行」や「大きい政府」は自由を妨げる存在とみられている。
そのため、草の根レベルで下剋上のような気概が共通認識として根を張っていて、新技術が出るたびに火種が燃え上がる。

そしてそれを国が規制するといういたちごっこが繰り広げられる。

その抜け穴から目ざとく一攫千金を狙う精神には素直に感嘆する。
その点、日本ではまだアメリカほどの大きな変革への燃える気概は感じない。
それに関しては、自分は良いことだと思っている。
日本がコンフォートゾーンにある、つまりまだ平和である証左であるからだ。
弱肉強食が過ぎる社会ではないことは、弱い立場にある自分としては安全に生きられる証でもある。

ただ、日本がDAOなりメタバースなりNFTなりを活用して再び活気、競争力、未来への希望を持てる国になってほしいとは切に思う。
自分がどのようにDAOを活用してその一助となれるか、接点を探し続けたい。

■Chapter.1 今注目の「DAO」とは何か
〇ブロックチェーン上で運営される組織
 Decentralized Autonomous Organization (分散型自律組織)

・主な特徴
 1.中央管理者がおらず、参加者同士で管理する組織
 2.誰でも組織に参加できて、投票ですべてが決まる
 3.透明性が高く、誰でもソースを閲覧できる

DAOの意思決定に関わるには「ガバナンストークン」を保有する必要がある。
 ガバナンストークン:コミュニティの意思決定を行う際の「投票権付トークン」
※「トークン」の明確な定義はないが、「しるし」や「象徴」といった意味合い。

■Chapter.2 DAOを可能にするテクノロジー
〇04 DAOで会社組織がなくなるワケ
・会社組織の問題点を解決できる
 問題点とは、「管理者の権限(権利)が強すぎる」という点。

通常、組織の在り方に賛同できない人は不満を抱えたり、辞めてしまったりするかもしれませんが、DAOでは全員が納得してより良い意見を出し合っていくので、今までの会社組織のような「社長に逆らえない」「上司には意見は言えない」といったことがなくなります。

→日本では個の意識よりも所属する団体や対人関係意識が強いため、金銭的な利害関係があっても空気を読んだり対立を避けたりする傾向が強い。
 そういった土壌の上では西洋的な会社組織における労使交渉といったものはスムーズにいきにくい。
これは会社組織の形が、西洋的な個の確立が前提となっているからのように思う。
(この辺の事実に関してはまだ調べたことがないので改めて調べてみたい。)

→上記の理由で、日本でこそDAOは有益だろう。組織に健全な労使交渉関係や業務・環境等の改善要求を伝えるにあたり、ルールが最初に定められることでお互いがコミュニティ内における人間関係を一旦棚上げした上でビジネスライクに交渉が進められるからだ。

〇07 DAOは誰でも作れる
・DAOを作る際の6つの注意点
1.シンプルにする
 基本として「来るもの拒まず」「去る者は追わず」。
 プロジェクトを進めるにあたり、どうしても参加者同士の知識量の差や、途中参加によるプロジェクトの把握理解度合いの差が出てくる。

 注意することは、
「参加者の間で情報格差が広がりすぎるとDAOがうまく機能しなくなる」こと
  円滑なコミュニケーションの設計が大事。
  そのために「シンプルさ」が大切なポイントになる。
   その理由は、誰でもすぐにプロジェクトの全体像が理解できるようにするため。

2.明確なビジョンを掲げる
3.早く立ち上げる :熱量は時間がたつほどに下がる
4.報酬システムを設計する: ボランティアではなくリターンがあることが欠かせない。それによって自走し始める。
5.参加者の役割管理: 立ち上げ時にはリーダーが必要。
6.「行動指針」を示す: プロジェクトとして大切にしたい考え方や一人一人に求める望ましい行動を示す。
  行動指針が必要になる理由3つ
   ・判断基準の明確化
   ・コミュニケーションの円滑化
   ・チームの文化づくり

→上記6つのポイントなどは、佐藤航陽氏の『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』 を読むとより理解が深まる。

〇08 「ガバナンストークン」の価値上昇
ガバナンストークンは、プロジェクトに必要となる資金調達としての役割も兼ねている。

ほとんどの投資家は、ガバナンストークンをより多く得るために、いかに早い段階でプロジェクトに関わることができるかと考えている。


DAOのガバナンスについて考えていく上で大切になるのが、「Web3的に透明性があり、オープンな考え方に照らし合わせていくこと。
例えばNFTホルダーに対してエアドロップを行うことなど、平等・公平性に関する枠組みが大切になってくると考えられる。
 エアドロップ:暗号資産のエアドロップとは、指定された条件を満たすことで、リリース直後の暗号資産やトークンを無料で受け取ることができるイベント

ステーキングも同様に、持っているトークンの量に応じて投票ができるような仕組みになっている
 ステーキング:暗号資産を保持し、ブロックチェーンのネットワークに参加することで報酬を得ること

DAOも同じように1人1票ではなくて、1トークン1票という仕組みを採用していることが多く、この仕組みに基づくとトークンをたくさん持っている人ほど、DAOの運営に関してより多くの意思決定ができることが考えられる。

この場合、保有するトークンの価値を保ちたいがためにプロジェクトに留まるという、良い意思決定が行われる仕組みになっているところがDAOの優れた部分です。

→ここで気になる点としては、結局先行者利益や、既得権益的な構図に陥ってしまい、後からの参加者が覆せないほどの格差が生まれてしまうのではという懸念。
平等性を考えるならば、1人1票にした方が良いのではないか。と思う。

→ただ、逆に新規参加者によって自分が関わってきた貢献度や歴史などが容易に覆されてしまうという点は、初期から参加してきたヘビーユーザーや古参にとっては愛着やモチベーションのようなものを失わせてしまうとも考えられる。
どちらか一方を取るとバランスが崩れそうだ。

→もし解決する方法があるとすれば、資本主義の暴走を生み出す原因の一つである「利子・利息」のように、持っているトークン量によってさらにトークン量を増やす構図には決してないようにすること、つまりあくまで貢献度合いの多寡によってトークン量が決まるような仕組みづくりが挙げられる。
さらに、基準となる一定量の、現実的に誰もが保有し得る程度のトークン量を持つものはステーキング可能な仕組み。
そしてもう一つ、トランプのゲーム「大富豪」における「革命」や、現実世界における災害や戦争のように、ランダムに既存の体制がリセットされる仕組みも考えられる。やるなら是非これらは盛り込みたい。

→トークン量が少なくても、ランダムにトークン量が多い既存ユーザを差し置いてのし上がることが出来る、ある意味「アメリカンドリーム」に近い仕組みがあると、宝くじのように多くの人が参加するではないだろうか。

■Chapter.3 DAOの代表例
〇11 海外のユニークなDAO
 DAOは様々な目的で作られる

3.Constitution DAO
 アメリカ合衆国憲法の原本がオークション出売られているが、それを落札するために設立された。
 ただし費用は集まったが、原本管理者が決まらず失敗。
4.Bankless DAO
 銀行がなくてもいいように作られた。中央集権的な金融機関が無くなってほしいとの思いがあるが、システムを使いこなすのが難しい段階。
 従来の銀行をなくすという動きではなく、新しい時代の在り方として、DAOのオープンマネーシステムの情報を提供し、購読者のリテラシーを高めることを目的としている。
  具体的には銀行を使わずに事業を営む方法、暗号資産のクレカ作成方法、銀行なしで生活からビジネスまで営むことが出来る方法を紹介。

5.Odyssey DAO
 教育用DAO。Web3領域の教育を作成・提供するDAO。
 →有意義だとは思うが、DAOである必要がないような…。

8.FreeRoss DAO
ロス・ウルブリヒト氏の芸術作品の部分所有権を表すトークンである「$FREE」によって管理され、ロス・ウルブリヒト氏の釈放とアメリカの刑罰制度の改革を目的に設立された。
ロス・ウルブリヒトは現在塀されているダークウェブ上のマケプレ「Silk Road」の創設者であり、ビットコインを通貨として利用できた始めてのマケプレ。
 Silk Roadでは麻薬や弾薬など、様々な違法サービスが提供されていたため2013年にロス氏は逮捕され、40年の懲役刑に処されている。

→単純にその事実を聞けばロス氏は完全に犯罪者な気がするが、解放させようと活動をしているフォロワーはあくまでプラットフォームを作った製作者であるから罪はない、という主張なのかもしれない。

13.Mirror DAO
分散型ブログプラットフォーム。
記事をNFT化して競売にかけることが出来、収益がライターに還元される。
 →文章を書くものとしてちょっと気になる。

14.Rook Perfumes
メタバース上で香りを研究するフレグランスブランド。
→マジっすか。オンラインから匂いを伝送できる(パラメータ送信して手元のモジュール等で香りの調合・発散ができる)ようになるのであればなかなか興味深い。

15.Ukraine DAO
ウクライナでの人道支援用。資金を集める。約1週間で700万ドル相当を集めることに成功し、すべてがウクライナ国防軍に機器を寄付している財団と、住民の避難や物資支援を行うNGOに送られた。
→主題から論点が逸れるが、この件に関しては賛成とも反対とも言い難い。
 武器や兵器を送るだけというのは、代理戦争に近しく、戦争を長引かせ、現地民を犠牲にして安全圏から参加するのに等しいからだ。
 NGOの方へ送るというのには賛成だ。

〇12 人気のDAO3選
1.Maker DAO: DeFiの代表。
2.Bit DAO:暗号資産取引所のBybitが主導するプロジェクト。
3.Compound: 銀行を通さずにお金の貸し借りができるプラットフォーム。

→アメリカのDAOの利用用途や程度に、銀行嫌い、中央集権体制嫌いの空気をひしひしと感じる。

■Chapter.4 DAOへの参加方法

〇18 ディスコードアカウントを作ろう
2015年にアメリカから出てきたチャットアプリ、Discord。
ゲーム分野に特化したコミュニケーションアプリ。
ほとんどのDAOがディスコードを使ってコミュニケーションを取るので必須と言って過言ではない。

→Zoom、Skype、Teams、Google Meets、webex、LINE動画等を並行して使ってる身としてはなぜわざわざ新たに別のチャットアプリを使うのか謎に思うが、ゲーム特化型というのであれば、住み分けが出来ていていいのかもしれない。
 最近色んな本や若い子からのDiscordの名前を見聞きするので、使えるようになっておきたい。とりあえずインストールしたものの、参加してみようと思えるDAOが特にまだ見つかっていないためしばらく放置になりそうだ。

■Chapter.5 DAOの作り方と運営方法

→思った以上に簡単に作れそうだが、明確なビジョンなしに作っても意味はない。目的が出来たらその時に白羽の矢が立つだろう。

■Chapter.6 DAOのメリットとリスク
■Chapter.7 DAOのさらなる可能性
〇27 地方創成×DAOの可能性
新潟県山古志村の「山古志住民会議」。

→地域の通貨として、または物々交換など何らかの形でDAO上で得られた価値を現実世界のサービスと交換可能となった時に、初めて具体的な形として地方再生につながるだろう。
現状、地方に動ける住民(若者)がいない、ということが大きな原因になってしまっているため、DAOを契機として地方に人が流入し、関係人口が増えれば地方創成への道が開ける。
が、オンラインで完結してしまう場合、再生の道は遠い。
知名度やお金だけが地方に落ちても、地方の衰退を避けるパワーとしては弱すぎるだろう。

以上


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