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【12億円調達】ROMS代表と投資家が語る、ディープテック×リテールで挑む業界変革

この度、ROMSは総額12億円の資金調達を実施致しました。
本noteでは、今回の調達にあたり実施したROMS代表の前野、既存投資家であり今回も投資頂いたDNX Venturesの倉林さん、UTECの林さん3者での対談の様子をまとめています。
投資家のお二人にROMSとの出会い、これからの挑戦や期待について熱く語っていただきました。また創業3年と3か月で初めて、代表前野が創業の想いや難しい小売業界で成し遂げたい変革を語ります。ぜひお読みください。

対談者プロフィール

ROMS 前野洋介

ROMS代表 前野洋介
  • 株式会社ROMS 代表取締役社長

  • 総合商社にて、国内・海外でM&Aとベンチャー投資、新規事業開発、ロボティクススタートアップへの出向を経験。2018年に大手アパレル企業に入社、店舗・ECのデジタル融合、海外テック企業とのパートナーシップを推進。2019年に株式会社ROMSを共同創業、代表取締役社長に就任。

DNX Ventures 倉林陽

DNX Ventures マネージングパートナー 倉林陽
  • DNX Ventures マネージングパートナー兼日本代表

  • 富士通株式会社及び三井物産株式会社で日米のベンチャー企業への投資、事業開発を経験。MBA留学後、Globespan Capital、Salesforce Venturesの日本代表を経て、2015年3月に日米2拠点でBtoB分野のアーリーステージのスタートアップに投資するDNX Venturesに入社。2020年よりマネージングパートナー兼日本代表を務める。同志社大学博士、Wharton MBA

UTEC 林佑樹

UTEC プリンシパル&データサイエンティスト 林祐樹
  • UTEC プリンシパル&データサイエンティスト

  • 東京大学工学部(機械情報工学科)在学中より、アドテクスタートアップでエンジニアとして勤務。東京大学大学院(技術経営戦略学)を経て、UTECに入社。IT分野を中心に日英12社の投資先を担当し、5社の社外取締役と1社の監査役を務める。2022年よりプリンシパル。CFA協会認定証券アナリスト。

*以後、敬称略

ROMSの創業からこれまでの歩み

  • ROMSは2019年6月創業の、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(以下、UTEC)と前野とポーランド人共同創業者2人の4者で作った、自動化ソリューションを提供するスタートアップ

  • 自分たちが培ってきた自動倉庫技術やロボット技術の経験を如何にビジネスにするかを考えていたポーランド人共同創業者2人が、当時のUTECのパートナーの山本哲也さん(通称Tedさん、現早稲田大学ベンチャーズ(WUV)共同代表/ジェネラル・パートナー)に出会い、Tedさんが過去からの知り合いだった前野に声をかけたのが始まり。UTECがSeries Aという形で出資参画、当該資金で会社をスタート。本社および市場は日本、R&D拠点はポーランドという、日本とポーランドの二拠点二か国同時という形で立ち上げ

  • 当初は、その技術を、24時間問題や後継者問題が取りざたされていたコンビニエンスストアに適用し、注文された商品をロボットピッキングして、複数商品を同時に出す無人コンビニ(RCS: Robotics Convenience Store)としての展開を想定し、東京・吾妻橋にRCSのPoC店「MOPU」を2020年10月にオープン(現在は閉店)

  • 複数の小売様の経営陣から、ネットスーパー向けの24時間フルフィルメント(オーダー商品の準備、荷詰め)に活用したいとの要請があり、Nano-Fulfillment Center(NFC)への横展開も開始

  • 今般、DNX Venturesをリード投資家として、約12億円の資金調達の1st Closeを実施。同時にKDDIとの取り組みとして、RCSを小型自動フルフィルメントセンターとしてauミニッツストア 渋谷店に導入、Quick Commerce向けの取り組みを開始

DNX、UTECとROMSの出会い

ROMSはVC人生と共にある会社(林)

  • ROMSは私のVC人生と共にある会社なんです。UTEC入社の直前、ちょうどROMSを立ち上げるタイミングで、当時のUTECのパートナーTedさんがインボルブしてくれました。

  • 前野さんと初めて会ったのは2019年3月。某日の晩、その当時、ROMSのポーランド人共同創業者が日本に来ていたので、夜の会食で前野さんをお引き合わせしたんです。

  • 前野さんは前々職の総合商社で超エリートコースを進まれていて、このままいったら経営幹部になるだろうと言われている方だったので、僕はその道を捨ててスタートアップを始めるなんてすごいなと思って。会食では、ポーランド人の共同創業者とすごい速さで意気投合し、その翌週には相手のいるロンドンに飛んで会いに行かれたんです。その場でどんどん話が進む、そこにダイナミズムを感じたのが第一印象です。

  • 僕自身は元々、大学でロボティクスに近い領域を専攻していました。ロボティクス自体のスタートアップもたくさん立ち上がっていましたが、一つの産業に特化してソリューションを提供するスタートアップがあまりいないことに問題意識があり、そこに挑戦するROMSは面白いと思いました。

今まで紹介された中で一番面白い案件(倉林)

  • 僕もTedさんに紹介して頂いたのがきっかけです。今まで紹介してもらった中で一番面白い案件だった、とその場で言ったら、Tedさんに怒られましたけど(笑) 前野さんは前野さんで、話してすぐに打ち解けてくれました。横でTedさんと僕のやりとりを見て、ケタケタ笑っていましたし。

  • 投資検討にあたり、ROMSは解消するペインがわかりやすくて。以前コンビニのフランチャイズ経営を営む夫婦が苦労している記事を読んだことがあったので小売のお客さまのペインも認識していて。

  • それに加え、日本ではSaaS領域の投資が多いDNXですが、米国ではハードウェアソリューションをサブスクリプションで提供するICEYEやDiligent Roboticsなどの投資先があり、日本でも投資したいと考えていました。

今回の12億円資金調達ストーリー

エンジニアチームの再立上げ・POC店舗を経た調達(前野)

  • 正直、創業後この3年間相当いろんなことがあり、とても大変でした。コロナがあって動けなくなり、ポーランドチームの切り離しと日本でのエンジニアチームを立ち上げ直しました。

  • 一方、POC店舗を開いたことで、攻め方が大体見えてきた。そうなるとエンジンを動かすガソリンとしてのキャッシュが必要となり、今回それを投資家から出資の形で受けています。

  • これだけの金額を取引先の小売様から貰うのを待っていたら、とてつもない時間が掛かってしまう。この集めた12億円で如何にエンジンを最大加速させて、みんなで一緒に遠くまで、かつ右肩上がりの形で準備していくかがすごく大事だと思っています。

  • 今回このタイミングで資金調達をしたことの意義的はそれが一番大きい。キャッシュがあるとないとでは、動き方が大幅に異なります。キャッシュがないと、ミニマムの動きしかできず、お客様への提案の仕方も幅も狭くなってしまう。キャッシュがあると、試験導入やサブスクモデルなど色々と考えられるようになります。

良いチームと顧客の獲得が安心材料(倉林)

  • DNXはアーリーステージのVCなので、チームをすごく大切にしています。日本の場合、米国のように経営陣を変えるというのは難しく、既存のマネジメントチームに賭けて、支援することになります。

  • ROMSは、Aで出資してからBに至るまでの道すがらを見てきましたが、とてもいいチームで安心感がありました。マーケットも面白く、チャレンジがある。

  • しかし今回は、DNXの内部事情として新ファンドの1件目かつDNXが強みとする純粋SaaSではないことから、社内を突破するにはトラクションが欲しかった。何かPMFを証明するもの、お客様がちゃんと買ってくれて、課題を解決していることを説明したい。

  • そういった意味で、しっかり初期ターゲット顧客を獲得できたところが安心材料になりました。

チームの確立とマーケットトラクションが投資理由(林)

  • 同じくUTECとして投資を決めた理由は、チームとマーケットトラクションですね。

  • 前回ラウンドの時はポーランドを分離するタイミングで、マネジメントが前野さん1人になりました。そこで阿部さん(取締役経営戦略室長)や脇さん(社長室長)が入り、経営チームが確立できたことは大きかったです。

  • 一方マーケットではNFCの流れ来ていると感じていました。

    • 倉林:DNXにとっても、NFCという道筋ができたことはすごく大きかったです。無人コンビニという形で店舗を持つとなると、マーチャンダイジングやインターフェースなどBtoCの難しい要素がいろいろと入ってきますが、NFCの場合はBtoBビジネスなのでビジネスの形が単純化する。ROMSがNFCにたどり着いたときに、やるべきことがナローダウンし、これはいけるかもと腹落ちしました。

ハードウェアソリューションによる小売変革への挑戦

Operation Ledなソリューションづくり(前野)

  • 小売業のマーケットって実は他のマーケットと比べて、経営陣と会う確率が高いんですよ。普通、SMB以外だと、BtoBのビジネスではそんな簡単に社長や役員レベルの方に会えませんよね。

  • ところが小売様、特にスーパーマーケットは社長・役員が出てきて話をすることが多くて、はまると一気に動く、本来そんなダイナミズムのあるマーケットなんです。

  • ただすごく難しいのが、経営陣は問題意識を持っている一方、現場は日次、週次、月次の売上を優先せざるを得ず、「余裕がないので勘弁して」という反応が多い。経営と現場の間でギャップが大きいんです。

  • 我々のビジネスは最終的に現場の方々と一緒に取り組む必要がある。それを前提に、現場の方々と一緒に進めていけるソリューションが何で、それをどう展開できるかを深堀していく必要があります。

  • そういう観点からも、ROMSとしてはProduct Ledではなく、Operation Ledをとても大事にしています。小売様は一定程度オペレーションが確立しており、ROMSが考えたプロダクトを無理にはめ込んでもフィットしない。なので、如何に現状のオペレーションに対して、現場の方々が持っていない知見をROMSメンバーが注入して革新できるか。革新によって景色が変わったとき、どんなプロダクトが見えてくるだろうと常に考えています。まずはオペレーションから如何に入るかが鍵であって、Product Ledなアプローチは志向していません。

投資家の思うROMSの強みと今後への期待

長いセールスサイクルに対応する売り方の実験(倉林)

  • 市場としてはニーズがあると想定していましたが、小売業界は想像以上にセールスサイクルが長かったですね。これだけ時間かかると大変ですが、ファーストペンギンが1人出れば、みんな飛び込むはず。

  • 今後は、プライシングや、値段だけでなく課金方法などのバランスも考える必要があり、それこそDNXが手伝うべきところと思っています。

  • グローバルに寄りすぎてもダメで、日本の小売で売れるかをブレイクスルーできれば、差別化になる。今回調達したキャッシュで、売り方の実験もして頂けたらと思います。

バーニングニーズへのフルスタックでの挑戦(林)

  • セールスサイクルが長いのは覚悟していました。投資対象となるディープテック領域は、時間軸が結構長いものですから。

  • これだけセールスサイクルが長く難しい業界なので、この分野に挑戦するスタートアップは多くありません。一方、市場としては燃えるようなニーズがある。

  • そのギャップを埋めていくには、チームのクオリティとテクノロジーが重要だと思っていましたし、テクノロジーの進捗としても、A-1からBにかけてどんどん内製化に切り替え、小売に対してソリューションを提供するための技術コンポーネント自体はどんどん進んでいたなと思っていました。

  • 現時点のROMSの強みは、フルスタックでの内製化とお客様中心で考える文化。以前の他社製のピッキングシステムから、お客様の要求を満たすため小売に特化したピッキング技術を開発し内製化しましたよね。そういうお客様に価値を生み出すための開発をしようという思考は、実はハードウェアスタートアップだと難しいんです。例えば研究などのバックグラウンドがあると、この研究で何ができるかという思考になってしまいがち。

  • そこが研究や大学などに縛られず、野武士的にいろんな人が集まってやっているROMSの強みですね。

  • また、フルスタックにより、お客様の課題がそれぞれ異なる場合でも対応できる。1円単位で改善を重ねている小売のお客様は、各社改善したい方向が異なるため、必要なモジュールを都度選んで導入できるのは大きな魅力だと思います。

  • 今後のROMSの期待したいことは、事業面で言うと、ファーストペンギンになってくださった最初のお客様にいかに満足してもらうか。

    • 倉林:同感です。そして導入店舗できちんと経済価値の検証をする必要がありますよね。お客さんの数は少なくても、2店舗目、3店舗目に入ってアップセルで成功できている米国のスタートアップはいっぱいあるので、まずはきちんと実機でROIを見せることが大事だと思います。

  • チームの面でいくと、革新的な思考スタイルを持つチームである必要があって。1円単位の改善を積み重ねてきた小売のお客様には、改善の延長線上のソリューションだと響かない。

  • その革新性の根源は、バックグラウンドや性別、年齢層といった多様性から生まれるのかなと。ダイバーシティに富んだチームができればと思っています。

ROMSのチームとしてのユニークネス

大人なチームによる伝統業界の革新(倉林)

  • ROMSは大企業出身の方が多くマチュアな方が多い。そういう方々に対しきちんとエンゲージメント高くマネージしているすごく大人なチームだなと思います。

  • お客さんと話すときも、改革的な新しいリテールの姿として脅威に感じられてしまうと進まないし、かといって軽い感じも違う。お客様に信頼され、尊敬される会社にならないと伝統的な業界での革新を進めることができません。ROMSの経営陣なら、これができると思います。

エンジニアへの新しい選択肢の提示(前野)

  • メンバーの話をすると、ハードウェアエンジニアはすごく規律が効いていて。ただそれは弱みでもあり、型から外れずに、決められた線を歩こうとする傾向もあります。

  • 彼らに私のようなビジネスの世界の人がしてあげられることは、「こういうやり方もあるよ」っていうことを一緒に話して、違う可能性を開くこと。そこをすごく意識しています。

  • あと、日本はとにかくハードウェアエンジニアが取りにくい。なぜかというと、大企業に新卒で入ってずっとその中にいて、転職市場に出ないので。

  • そういった方々に、ROMSの様なところに、違う可能性を切り開くことを面白く感じてもらい、挑戦してもらうのが、うちの醍醐味です。そういう人たちに、如何に違う選択肢を用意してあげられるかが、ROMSとしてやっていきたいところです。

  • 特に、ハードウェアエンジニアのヘッドの岩田はマネジメントの考え方もすごく強い人で、ピーター・ドラッカーを読んでいて。ことあるごとにドラッカーの言葉を持ち出しています。

  • そのような新しいタイプの、エンジニアとマネジメント両方の感覚を持った人が活躍できる環境を作ることが、もっとユニークネスを高めるポイントだと思っています

    • 倉林:そういうハードウェアエンジニアは、まだスタートアップに来ていないんですよね。

    • 前野:そうなんです。彼らが怖いと思わないようにどうしたらいいか、むしろチャレンジができて、もっと楽しめる、世界を変えられると思ってもらうにはどうしたらいいか、先陣切って切りこんでいなければと思っています。

ROMSの挑戦と今後来てほしい人材

難しい挑戦に敢えて挑む舞台として(前野)

  • ROMSはすごく難しい事業をしています。難しいマーケットで、ほぼ全てのことを内製でやっていて、かつハードウェアを舞台にしたキャピタルインテンシブでロングセールスサイクルなビジネスを展開する。普通のスタートアップのセオリーからすると、間違ったことをやっている可能性があると言われやすいんです。

  • ただROMSは敢えてそれを選択してやっている。林さんが仰った通り、その方がお客様に対してアドレスできるからです。

  • それを実行するためにはある程度のキャッシュ、ランウェイを確保し挑戦できる体制を整える必要がある。あと3ヶ月後にお金がつきますという状況では絶対できない。そう考えると実はROMSの取り組みは、ベンチャーキャピタルバックドだからできることです。

  • そういう会社はまだ日本には少なく、すごく面白い取り組みをしている会社ではないかと思います。

  • 難しいことをやるからこそ挑戦のしがいもあって、それに対して、がむしゃらに取り組めるのがROMSの良さではと思っています。

  • そうした挑戦ができる舞台を今回の資金調達で整えたので、このキャッシュを使って事業展開を更に加速させて、次のステージに移っていきたい。まずは人・チームを増強し開発を加速させ、さらに資金があるこそから出来る戦略を実行していきたい。

  • そういうことに賛同し、大企業にはないスピード感でソリューションを作りたい方に、ぜひうちに来てもっと挑戦してもらいたいと思っています。