第4話 貨幣の歴史はインフレとの戦いの歴史である。
そもそも、いつから財政健全化が目標として掲げられてきたのか。プライマリーバランスの黒字化は明白に2006年の骨太の方針の中に銘記されているが、それ以前も1965年までは赤字国債の発行が禁止されていたし、日本は戦後から基本的に均衡財政主義(注1)である。
私が貨幣の歴史を調べていくうちに分かったことは、経済学的には紙幣の大量発行はマネタイゼーションとみられ、忌避されているということである。そして、その原因となっているのは、人類の貨幣の歴史は貨幣の流通量増加とインフレとの戦いの歴史であるということだ。これは日本に限らず、東洋、西洋を問わない世界的な貨幣の歴史の傾向である。
貨幣の価値がどのように認められてきたかについては諸説あるが、ここで大事なことは古代ローマの時代から、国家の拡大が発生すると貨幣の流通量が増え、インフレが発生するという事象が発生していることである。古代ローマの時代では硬貨は金や銀といった貴重な金属が使われていたため簡単に流通量を増やすことが出来ず、拡大した経済に対応するために、貨幣の流通量を増やすために金や銀の含有量を減らした通貨を鋳造して流通させるこということをしばしば行った。そして流通量を増やした後に必ず国家はインフレに見舞われてきた、ということである。
紙幣が使われるようになると、より自由に国家は紙幣を発行できるようになった。国家の立場から見て紙幣を発行するのは硬貨を改鋳するよりも簡単だ。なんらかの規制がなくては際限なく国家は紙幣を発行してしまうだろう。経済学とはインフレを起こさないように、安易に紙幣を発行させないようにすることを目的としている学問とも言えるかもしれない。
しかし、今時代はデフレである。インフレが発生しやすい状況を前提とした多くの経済学の考え方が今のデフレの世の中に適しているかは再考の余地があるのではないか?
次の記事ではそもそもなぜ、貨幣流通量が増えるとインフレが発生するのか、という考察をしてみたい。
※今回、貨幣の歴史を調べるのにあたり以下の書籍を参考にした。硬貨と紙幣の歴史など興味深い話が多くあったので、是非おすすめしておきたい。
注1 戦後の1948年にGHQが掲げた経済安定9原則の中に総予算の均衡はすでに謳われている。
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