#5 ギターの音作りについて(初級向けその2)

第二回にして音作り自体からは脱線してしまうのですが、今回は「ギターの整備」についてまとめたいと思います。

理由は簡単です。「いい音はちゃんと整備されたギターからしか出ない」からです。まずはここを整えましょう。

DTMでモデリングギターを鳴らす方はここは読み飛ばしていただいて構いません。

■古い弦を交換する

弦を交換するのは面倒なものです。特にフロイドローズのようにブリッジをフローティングにセッティングしているならなおさらです。しかし、弦の劣化とギターサウンドの劣化は比例します。極稀にクラプトンのように劣化した弦の音を好むギタリストもいますが、それは本当に極端な例ですからオススメしません。なにより錆びた弦で無理に弾けばすぐにフレットを痛めます。

弦を変えましょう。新しい弦にしたら少し自分が上手くなったように感じたことはありませんか?弦を変え音が良くなればプレイもよく聞こえるのです。弦は定期的に交換するようにしましょう。

■ナットにグリスを塗布する

弦を交換する時にポイントがあります。ナットと弦が接する溝にグリスを塗りましょう。ワタシが使っているのはこれです。

Freedom Custom Guitar / SP-P-08

ギターのチューニング中、ペグを回してもあるところで弦の音が上がらなくなり、そのうちパツーン!という音とともに突然弦の音が上がった、という経験はありませんか?これはナットと弦に摩擦が生じて引っかかっているのが原因です。ですから事前に弦とナットの接点にグリスを塗っておくことでスムーズかつ正確なチューニングができるようになります。

特に低価格帯のギターではこの現象が起きやすく感じます。(もちろんいいギターでも整備を怠れば起こります) 毎回弦を交換した時にグリスも塗るようにしましょう。

なお、フロイドローズのように完全にロックしてしまうナットにグリスを使うのはむしろ逆効果ですのでご注意を。

■正確なチューニングをする

チューニングはチューナーを使って正確にしましょう。僅かなチューニングの狂いでも、例えばパワーコードを押さえてもキレイな5度ハモリを得られなくなります。つまり「和音の濁り」が発生します。単音だけなら多少はごまかせるかもしれませんが、ギターから出ている和音が濁っていてはどう音作りをしても濁った和音しか出ません。

前述のグリスを使うことで正確にチューニングができるはずです。毎日ギターを弾く前にまずはチューニングがずれていないか確認しましょう。

【余談1】A=442Hzですか?という質問を聞いたことがあるかもしれません。これはジャズなど管楽器はA=442Hzや441Hzで合わせていることが多いため、それに合わせてギターもチューニングするということです。ポピュラーミュージックでは大抵A=440Hzですから、そのままでは2Hzのズレが発生します。たった2Hzですがその違いは聞いて分かるほどに大きいです。チューナーのセッティングでA=442や441、339などと設定できるはずですから、管楽器やクラシック系の楽器の方と合わせる機会があるなら頭に入れておくといいでしょう。

【余談2】ハーモニクスを使用したチューニング方法を知っている方も多いと思います。ただ、ハーモニクスでのチューニングは「純正律」でのチューニングになります。現在ほぼ全ての音楽で使用されているのは「平均律」です。「平均律と純正律」については割愛しますが、微妙にズレが発生するということは覚えてください。平均律で正確なチューニングをするのであれば各弦開放をそれぞれチューナーでしっかりとチューニングしましょう。

【余談2のさらに余談】ヴァン・ヘイレンは2~3弦間のみをハーモニクス、1~2弦は2弦の5フレットで合わせるという変則的なチューニングを使っています。ヴァン・ヘイレンチューニングとも言われますが、結果から言えば234弦を使った3度を含むコードワークが(特にハイゲインで)スッキリとした響きに聞こえる効果があります。しかし正確なチューニングとは若干のズレが発生するので、ヴァン・ヘイレンの完コピを目指す以外で無理に導入する必要は無いでしょう。

■オクターブチューニングをしましょう

オクターブチューニングについて知らない方はこの機会に覚えてください。が、手順については長くなりますので割愛します。これができていないとハイフレットでのチューニングの狂いだけでなく、ローフレットでも音程の狂いが発生します。「開放弦だけは正確だけどフレットを押さえると全部ダメ」という状態です。ギターというのは厳密に正確な音程を得るのが難しい楽器ではありますが、エレキギターはできるだけ正確な音程に近づくよう整備できるようになっています。12フレットで合わせるのがメジャーですが、できれば各弦最高フレットでの音程まで詰めてチューニングしたいところです。

■シールドは選びましょう

格安のシールドを使っていませんか?今すぐ買い替えましょう。ギターからエフェクター、最後はアンプまでつながるシールドに格安なもの(ハードオフで300円!とか)を使うのはやめましょう。カナレなど安価でもしっかりとしたギター用シールドを使ってください。シールドでも音は変わる、と聞いたことがあるかもしれません。確かにそれは事実ですが、逆に全く音質の変化しないシールドというものは物理的に存在しません。ですから「エレキギター用」と分類されたものを選べば「エレキギターにマッチした特性」のシールドになります。例えばベース用のシールドなども使用することは可能ですが、ベース用の特性になっているはずですからエレキギターに完全にマッチするかは相性次第です。格安のシールドでは失う音質が大きすぎます。ちゃんとしたものを選んでください。

それからシールドは消耗品です。何度も巻いたり伸ばしたりすれば当然断線の可能性があります。音が出なくなった!ブツブツする!となったらすぐに新品と交換しましょう。

【余談1】高ければ良いものか? ハイエンドなオーディオグレードのシールドもありますが、それはおそらくハイからローまで余すことなく出せるシールドなのだと思います。しかしエレキギターに必要な音域はそこまで広くありません。むしろ必要のない音域まで通して音作りが難しくなる可能性もあります。あくまでギター用で十分です。ギター用の高級シールドなら試す価値は十分にありますが、オーディオ用はオーディオ機器に使いましょう。

【余談2】自作シールドはどうなの? 電気工作が得意な人ならシールドの自作は難しくないでしょう。しかし、信頼性に欠ける、と個人的に思っています。まずプラグとシールド材自体を揃えるだけで低価格でしっかりしたシールドと同じくらいの出費があります。もちろん人件費の面でコスパを得られるといえば得られますが、いざライブ直前という時に突然音が出なくなった!となるときはなります。メーカー品であればある程度その部分は保証されているといえますし、なによりどこでも買えるブランドであればいざという時楽器屋に駆け込んで全く同じシールドを調達することができます。自作シールド、自作エフェクターは自己責任でリスクと比較しましょう。

長くなりましたが、ここまでしっかりと整備すればそのギターのポテンシャルを十分に引き出した音が出せるはずです。もちろんすべて自分でやるのではなくお店や詳しい人にお願いしてもいいでしょう。ですが自分で全部できたほうがギターに詳しくもなれますしお金もかかりません。この機会に是非覚えてください。

電装系のトラブルシューティングや交換については、また機会があれば別に記事を書くかもしれません。

次回からはようやく音を出してみたいと思います。

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