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6月11日(日) | 谷川嘉浩×森田真生「鶴見俊輔を読む」

《オンライントークイベント》

谷川嘉浩×森田真生
「鶴見俊輔を読む」

【出演】
谷川嘉浩×森田真生

【日時】
6/11(日)
14:00-16:30(開場 13:45 予定)
*途中10分程度の休憩を挟みます。
対談終了後には質問を受け付け、可能な限りお二人にお答えいただきます。

【参加費】
4400円(税込)
(申し込み方法はページ下部に記載)

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 6月11日(日)鹿谷庵に『鶴見俊輔の言葉と倫理』の著者で哲学者の谷川嘉浩さんをお招きしてお話を伺います。鶴見俊輔の言葉や著作、そしてこれが体現する哲学には独特の魅力と「わかりにくさ」があります。その「わかりにくさ」を手放すことなく、鶴見俊輔の言葉を「妥当かつ適切に読み解く」ことを試みる谷川さんの野心的な著作は、慎重でありながら軽快さを失うことなく、僕はとても新鮮で爽やかな印象を受けました。そして、この若き著者、哲学者と実際にお会いしてみたい、という願いが実現し、谷川さんとの交流が始まったのが昨年の秋でした。

谷川嘉浩『鶴見俊輔の言葉と倫理』

 今回は「鶴見俊輔を読む」と題して、谷川さんのお話を伺っていく予定ですが、「日常」や「生活」「エピソード」といったことが、今回の対話のキーワードとなっていくと思います。とりわけ、語るべき出来事、SNSで「いいね」をされそうな可視的な「イベント」ばかりで現実を埋めようとしていくのではなく、「読み込むべき細部のあるエピソードを日常にもつことの重要性」(谷川嘉浩「世界は『イベント』でできている」『Voice 2023年6月号』)を谷川さんは鶴見俊輔の言葉と哲学のなかから読み解こうとされています。

 庭仕事をしていると、草の陰で、葉の裏で、土のなかで、苔の隙間で、いかにとてつもなく多くのささやかな出来事が起こり続けているか、ということにいつも驚かされます。それは、SNSに投稿しようにも、まったく「とるにたらない」ことばかりなのですが、そうした一つ一つのとるにたらない物事こそが、僕たちの生を支えているのだ、ということを、いつもしみじみと実感しています。そして自分もまた、とるにたらない、ささやかな、しかし「読み込むべき細部のある」一日、一日を重ねていきたい、とあらためて思うのです。

 僕はいつもイベントに先立ち、かなり長い「告知文」を書いています。今回のイベントに向けても、それを書くつもりでいるのですが、すでにイベントの開催日が近づいてきていますので、まずひとまずここまで、このような簡単な紹介のみにて、告知をはじめたいと思います。

 また当日までに、ここに「イベント」に向けた思考の来歴を更新していくことになるかもしれません。祝祭的で可視的な「イベント」に先立ち、ささやかでとるにたらない思考やエピソードを、静かにここに綴っていくことができたら面白いかもしれない、と思っています。

 当日はオンラインにてリアルタイムのライブ配信のみとなります。もしご縁がありましたら、ぜひお立ち寄りください。
 一期一会のひとときを、心から楽しみにしています。

2023年5月30日 森田真生

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開催に寄せて(谷川嘉浩)2023.6.9

 
思想家のベル・フックスは、スチュアート・ホールとの対談を始める最初の一言として、会話への愛着を口にしています。

 わたしにとって、会話は学びの場です。素敵な会話というものに目がない。そのために生きていると言ってもいいですし、人生の真の喜びなのですが、年をとるにつれ、素敵な会話をすることはますます難しくなっています。

ベル・フックス、スチュアート・ホール
『アンカット・ファンク 人種とフェミニズムをめぐる対話』(人文書院)

 私にとって鶴見俊輔という人は、こういう会話好きの人です。世間がイメージするような、厳格な知の巨人でもなければ、旺盛な活動家でもありません。会話好きの好々爺、という感じです。鶴見は色々な人との会話から、そして書物や事件との対話から多くを学び、そのことを楽しみ、また別の会話の呼び水として話したり書いたりしてきました。

 私は彼に会ったことはありません(会うこともないまま彼は2015年になくなりました)が、『鶴見俊輔の言葉と倫理』は、彼が無数の会話を背景に作ってきた言葉と倫理を読み解いた著作であり、私なりの鶴見との会話の産物です。 この本の出版をきっかけに、森田真生さんと親交を持つようになりました。

 鶴見が続けてきた会話の営みを、私たちなりに続けてみたいと思います。素敵な会話を通して、哲学者・鶴見俊輔の謎、そして彼がこだわった「エピソードとしての日常」の謎に、飛び込んでいきたいと思います。

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追記(森田真生)2023.6.11

 先の告知にあたっての文章のなかで、「とるにたらない物事こそが、僕たちの生を支えている」と僕は書いた。「取るに足らない」というのはもちろん、ことさら取り上げるには値しない、という意味の言葉だ。しかし、何かが「取るに足らない」というときに、本当は、「足りない」のは向こうではなく、自分の方かもしれない、と思うことがある

 昨日、初めてコゲラのドラミングを子どもたちと一緒に見ることができた。鹿谷庵の庭から見える、すぐ近くの古いサクラの木の上で、ものすごい速さで首を動かし、嘴で木を叩いている。これまでも庭仕事をしていると、ときどきその音が聞こえてくることがあって、僕はいったい何の音だろうと疑問に思っていた。カエルの声のようでもあるが、それにしては間隔がずいぶん短く規則的だし、木の上から聞こえてくるような気がするが、鳥の鳴き声とも思えない。

 何人かの友人に聞いてみたところ、きっとキツツキ系の鳥のドラミングではないかという。コゲラなどのキツツキは、縄張りを主張したり、繁殖期にオスがメスにアピールするために、枯れた木を小刻みに打って鳴らす習性があるという。僕はそれまで「ドラミング」という言葉も知らなかったのだが、それならばその姿を見てみたいと、子どもたちとその音がする方に近づいてみた。すると、次男がすぐに、古いソメイヨシノの木の上の方をさして「ほら、あそこにいるよ!」という。見上げるとたしかに、スズメよりも少し大きいくらいの小鳥が、いかにも「ここは俺の場所だ」と言わんばりの結然とした姿で木を叩いているではないか。

 こんなに近くでこんなに堂々と、俺はここにいるよ、とアピールしているのに、それをこれまでことさら意識することも、自分にとって意味のある出来事として「取り上げる」こともできなかった自分を恥じた。だがこれからはきっと、あの音を聞くたびに、コゲラがいる、とわかるだろう。

 日常は、取るに足らない出来事に溢れている。それは、ささやかで、つまらないことばかり、というだけの意味ではなく、自分のいまの尺度では、その価値を取り上げることができないような、多様で、微妙な出来事が生起し続けているということでもある。「鶴見俊輔を読む」文脈で谷川さんがしばしば用いる表現を借りるとするなら、日常はいつも「読み解くべき細部」を持つ。その繊細な細部が、まだ読み解かれていないとするなら、「足らない」のは向こうの方ではなく、自分の方なのではないか、とも思う。

 フランスの哲学者ミシェル・セールの著書"The Birth of Physics"(原題は"La Naissance de la physique dans le texte de Lucrèce : Fleuves et Turbulences")のなかに、僕がとても好きな一節がある。

what is perfectly open, perfectly legible, but so far beyond our capacity to number that it would take the whole of humanity at work for a time longer than the history to read or see it, is even better hidden than a secret in its box.
(完全に開かれ、完璧に判読可能でありながら、同時にあまりにも無尽蔵なため、全人類がその歴史のすべてをかけたとしても、見たり、読み解いたりすることができないようなものは、箱のなかの秘密よりも、さらによく隠れている。)

Michel Serres, "The Birth of Physics"

 身近で、しかし隠れている —— それが「日常」という豊かな謎だ。今日は谷川さんとどんな「会話」ができるか。心から楽しみにしている。

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【お申し込み方法】
当イベントは「Zoom」ウェビナーによるオンライン配信イベントです。
ご参加ご希望の方は下記URLよりオンラインチケットのご購入をお願いいたします。ご購入をもってご予約は完了いたします。

オンラインチケットご購入ページ↓
https://tuning-bookstore.com/items/6475266980278e002bb601ec

イベントの開催についてご不明な点がございましたら、
こちら[attuning.books@gmail.com]まで。担当:鎌田
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