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3/20(日) | 「僕たちはどう生きるか」 対話編 (ゲスト:松田法子) 大地に生き、地球と踊る

《オンライントークイベント》

「僕たちはどう生きるか」 対話編
大地に生き、地球と踊る

【出演】
森田真生 × 松田法子

【日時】
3月20日(日)
15:00-17:00(開場14:45予定)
*途中10分程度の休憩を挟みます。
17:00からは質問を受け付け、可能な限りお二人にお答えいただきます。

【参加費】4400円(税込)
(申し込み方法はページ下部に記載)

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 河原で拾った石を握りしめ、その重さと表情を手で確かめる。石は何も語らない。人間にわかる速度では動かない。その寡黙さが、今日は人間のどんな言葉より、信じられると感じる。

 子どもたちと、高野川の河原を歩く。静かな石の時間の上を、人間が横切っていく。僕は河原で仰向けになり、空を見る。風が吹く。水が流れる。

 石をぎゅっと手に握る。石は動かない。ただその場で、過去を手放すことなく、現在に動じることもなく、遠い未来を覚悟して、沈黙している。

 高野川の水の流れは、やがて賀茂川と合流し、京都市内を北から南へ流れる鴨川となる。北と東西を山々に囲まれ、南は平らに開けている盆地を、Y字型に水が流れていく。

 この盆地はかつて、海の底だったという。北山の山並みは、持ち上げられた海底だ(松田法子「脈動する水の都市」)。海も、山々も、大地そのものも静かに動き続けている。だが、岩や山々の生きる時間のスケールはあまり巨大で、人間の目にはほとんど動いて見えない。だからこの地形は、この場所で人がものを考え、感じるときの、風景の規準であり続けてきた。どれほど石を握りしめても、山はびくりともしない。山の沈黙が、今日はどんな言葉より、信じられると感じる。

*****

 僕たちは与えられたままの地球には住めない。生き延びるためにヒトは、地球から身を守るための環境を、構築し続けなければならない。人類の歴史は、ヒトが生きるための環境(生環境)を、地球上に構築し続ける歴史であった。

 だが、ヒトは所与の環境をただ一方的に改変していくのではない。ヒトの活動に先立ち、地球はすでに自律的に運動していた。僕たちはこの運動とその帰結としての大地にめぐり合い、呼応し、反応するように、みずからの生きる環境を構築してきた。

 地球上の「生環境構築」の歴史を松田法子さんら「生環境構築史(Habitat Building History)」のメンバーは、人類の歴史に閉ざすことなく、人類に先立つあらゆる生命と、地球そのものによる構築の歴史と接続していく。この壮大なヴィジョンから帰結するのは、所与の環境を人間が一方的に制御し、改変しているのではなく、人間が、地球や他の生物たちとともに、生きるための環境を「共構築」しているという自覚だ。

 松田さんらが描く生環境構築の歴史は、地球そのものが自律的に運動する「構築0」を起点に、手近にある素材を用いたヒトや動物による「構築1」、そして、素材の流通や蓄積を伴う「構築2」の段階を経て、人工的な生環境構築を最大限に拡張しようとする「構築3」のモードへと展開していく。与えられた地球環境のままではほとんど生き延びられない「はだか」の哺乳類になってしまったヒトは、地球環境から一定の距離を確保するための技術を駆使しながら、なんとか生き延びようとしてきた。この意味で、ヒトには与えられた地球環境から離脱しようとする意思が、すでにあらかじめ潜伏しているのかもしれない。
 「構築3」の段階で、この意思は顕在化する。他の惑星への移住や、テラフォーミングの構想は、構築3の自然な帰結だ。同時に、構築3の拡大とともに、地球の自律運動そのものが「最大級に災害化」していく。ヒトは病や災害を、身体や都市の再構築の契機と捉えるより、これを排除し、沈黙させようとしながら、ひたすら与えられた環境からの自立と離脱を急ぎ始める

 だが、松田さんらは、構築3の先に、新たな構築モードの可能性を展望している。構築3までの歴史を経験した上で、あらためて重要性がはっきりした構築0との関係の再編と「高次の回復」を試みていくこと。それが、生環境構築史において「構築4」と呼ばれる段階である。それは、単に行き過ぎた構築の手を緩めることではなく、現代の科学と技術を駆使しながら、人間による生環境構築の時間と空間のスケールを多様な方向に拡張し、地球そのものや、他の生物種とヒトが生環境を「共に構築している」という意識に目覚めていく道だ。これは、地球からの離脱を志向してきた構築の歴史を、地球との共存の方向へと、舵を切り直していくことでもある。

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生環境構築史概念図(中谷礼仁、松田法子、青井哲人 作図:徐子 XU Zi)
「生環境構築史」の詳細については、
生環境構築史宣言 2020年5月版」をぜひご一読ください。

 構築の諸段階は、それ以前の段階をただ塗り替えるだけではない。実際、構築0から3までのすべてのモードが、地球上でいまもモザイクのように併存している。特に、構築3に至って巨大化したヒトの構築技術は、ときに地球の運動(構築0)の結果を助長し、そのインパクトをますます激甚化する。人間活動による気候変動とこれがもたらす種々の災害はこの顕著な例だ。

 一方、ヒトは地球の運動そのものを制御することはできない。プレートテクトニクスを停止させることも、地球を逆回転させることもできない。したがってヒトは、構築の主導権を一方的に握ることはできない。地球に依存し、地球の運動を多様なスケールで繊細に知覚しながら、僕たちは地球の巨大な構築の力とともにダンスする、新たな感覚と知恵を身につけていかなければならない。

 構築4の段階を具体的に描写していく過程は、技術や経済、社会システムの更新にとどまらず、僕たちがこの地球上でどのようなものとして、どのように生きるかという、基本的な哲学の見直しを伴う。今回、松田法子さんをゲストにお招きし、ヒトが地球とともに環境を共構築していく時代に、僕たちはどう生きていくのかを、模索していきたいと思います。

生環境構築史宣言」を読んで衝撃を受けて以来、松田さんとはぜひいつかお会いしてみたいと願っていました。特に、自然の植民地化が加速するこの時代を、まだ見ぬ「構築4」に至る途中段階と見る展望は、「明らかに自己破壊に夢中」に見えるこの世界の先に、思わぬ希望が開ける可能性を示してくれています。3月20日は、多くの方に、そんな松田さんのヴィジョンに触れてほしいと思います。ご縁がありましたら、ぜひご参加ください。

 当日を心から楽しみにしています!!

2022年2月26日 森田真生(2022年3月5日公開、3月8日に一部更新)
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【お申し込み方法】
当イベントは「Zoom」ウェビナーによるオンライン配信イベントです。
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