デクセリアルズ 2Q超絶決算は本物か!?

11/1にYonY43.2%増(売上)2.2倍(利益)超絶決算を発表したデクセリアルズの現状と今後について、ログミーファイナンスと決算説明資料等からまとめていきます。

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もともはソニーの化成品や化学材料を担当する子会社として設立されたデクセリアルズはニッチな分野でトップシェアを誇っている企業だが、主要な製品群について決算内容を見る前に少しだけ理解していただく必要がある。(少しややこしい)

異方性導電膜(ACF)

スマホやノートPCの映像を表示するためのディスプレイの基板には、ドライバICという半導体を接合することになっている。「ACF」は、その接合材料として世界のほぼすべてのディスプレイに使用されており、液晶でも有機ELでも、どちらにも関係なく使われている。世の中ほぼすべてのディスプレイで、デファクトスタンダードの製品として使われている。今はディスプレイ以外の用途でも半導体の接続にも使われるようになってきている。小型のディスプレイにおいては、世界シェア6割。

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反射防止フィルム

ノートPCのディスプレイの最表面に貼られています。これによって、屋外でも太陽光の反射を減らして、快適に使用することができます。自動車のメーターやカーナビのディスプレイでも使われている。これによって西日や朝日が当たっても見えづらくならないため、自動車の安心・安全にも貢献している。

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光学弾性樹脂(SVR)

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スマートフォン、タブレットPC、ノートPCやカーナビなどの車載用ディスプレイなど、ディスプレイ内部のエアギャップを光透過性の高いUV 硬化型弾性樹脂で埋めることで、ディスプレイの視認性と薄型化を実現する。

蛍光体フィルム

ミニLED向けフィルム。一般的に画質がきれいと言われる有機EL(OLED)のディスプレイと比べて同等の画質を実現しながら、消費電力が少なく、電力を節約できるという特徴がある。

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表面実装型ヒューズ

リチウムイオンバッテリーの過充電、過電流を確実に遮断する2次保護素子のセルフコントロールプロテクター

-上期決算概要

2セグメントともに前四半期比で大幅な増収増益。特に電子材料セグメントは売上の伸び(17%)に対して利益が63%と大幅に伸びている。

一方、光学材料セグメントは売上の伸びに対して電子材料ほど利益は伸びていない。理由は後述する。

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上期においてデクセリアルズの材料を使った最終製品の市場動向は前期比で強い追い風だったわけではなく、ほぼ前年並みで推移。ただ最終製品構成が類似している太陽誘電、TDK、村田製作所、I-PEXの決算もデクセリアルズほどではないにしても良く、少ならからず部品の調達前倒しが発生していた可能性はある点について少し留意すべきかもしれない。

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次に全体的な増収要因をみると、高付加価値製品による新規の案件や顧客の獲得と車載領域の拡大および、蛍光体フィルムを含めて2019 年度以降に量産を開始した新製品の貢献が大きい。つまり自社独自の施策が功を奏しているようだ。

-上期決算詳細

-光学材料セグメント

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反射防止フィルムは、ノートPC 向けで約2割、車載向けでは約8割、合計でも約3割の増収となっている。ノート PC 向けは、最終製品の数量の増加、ならびに画面の平均サイズ の上昇により、販売が拡大している。車載向けにおいては、この9月末で、20 ブラン ド、103 モデルを量産中で、1 年前の 95 モデルから増加して、新規の採用が着実に伸びている。車載向けが今後は成長を牽引していきそうだ。

蛍光体フィルムは、最終製品の量産の開始と、2Q から新たにノート PC 向けの量産も始まっている。今期からの新製品として急速に立ち上がり、業績に大きく貢献している。

精密接合用樹脂は、大手スマートフォン向けで新部位の獲得、また、高 付加価値製品の採用拡大や高精細化によるモジュールの大型化による使用量の増加もあり、約6割の増加

光学材料セグメントまとめ

全ての製品群が好調で車載用途やPC関連も新規採用の増加で今後も成長が期待できそうだ。ただ、前期販売開始した蛍光体フィルムが増収を牽引しているが、一部工程を外注していることあり、利益率が他製品と比べ低い。蛍光灯フィルムの割合が増加すると利益の伸び率は鈍化する傾向にある。


-電子材料セグメント

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ACFは、ディスプレイ向けで2割、非ディスプレイ向けは約8 割、増加している。非ディスプレイ向けのカメラ等の各種センサーモジュールの実装技術の高度化に対応した製品が大きく売上を伸ばした。粒子整列型による新規採用や、モジュールの 実装方法の変更に対応した新製品が貢献している。

表面実装型ヒューズは、大電流向けが大きく伸びている。電動工具向けの成⻑が続いたことに加えて、E-bike やコードレスの電動クリーナーなど、リチウムイオン電池搭載の電気機器の普及に伴い、大電流向けのヒューズが 約 9 割増加した。

マイクロデバイスはCOVID- 19 の影響で、プロジェクターの市場が不調だった前年同期からの回復が進んでいるが、まだ 元には戻っていない状況て。
そうした中で、光源が UV のランプからレーザーに変わって、当社の無機デバイスの採用が広がっており、市場の成⻑を上回るような拡大となっている。

光学材料セグメントまとめ

主要製品のACFの非ディスプレイ向けがカメラの高精細化を背景に大きく伸びており、非ディスプレイ領域の売上拡大が当社が今後大きく飛躍できるか否かのポイントである。表面実装型ヒューズはリチウムイオンバッテリー搭載製品が増え続けているが、EUでの規制も業績拡大を後押ししている。利益率が非常に高いセグメントであり、市場環境は非常に良好である。

-下期の動向

2Qから市場(最終製品)の減速感が出始めているが、当社に関しては3Q も当社の高付加価値製品、新製品の拡大が続くことから、2Q の売上を若干超える水準を想定。

一方、4Qには半導体不足の影響に、物流の混乱、電力の供給制限、 資源高といった、新たな要因が加わっており、これらが今後の最終製品の市場の減速を強める可能性を踏まえて慎重に見ている。

また、ARフィルムに関して新しいノートPCメーカーへの採用がスタートする。この製品はかなり難しい製品で立ち上げの歩留まりのリスク等が利益面のマイナス影響をある程度見込んでいる。社員への還元は10億ほど。

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-まとめ

最終製品の動向に関わらず、当社の製品優位性と市場環境の変化が当社の業績を強く後押ししそうだ。製品別の現状と今後の動向を簡単に以下にまとめて今回は終了とする。


-反射防止フィルム

車載向けの「反射防止フィルム」は、自動車の電装化によりディスプレイが増加、大型化の傾向にある。かなり長い年月をかけて評価をしていただき、採用に至るといったプロセスを経ている。そのため、今、新規に採用を決めていただいている自動車向けの「反射防止フィルム」の採用が決まると、それはおおよそ2年から4年後の売上に貢献していくことになります。現在、新規採用状況は順調に推移しているため、3年後、4年後の売上に関しても、高い確度で数量の増加が見えています。そうしたこともあり、今のうちにしっかりと増産投資を行い、3年後、4年後の需要増に応えようと考えている。

グローバルな大型案件もあり、予定どおり今期の第4四半期からスタートして、2022年度から本格的な業績の寄与を見込んでいる。

-蛍光体フィルム

ミニ LED向け製品。ミニLEDはOLED よりも、はるかにコストが安く高精細化が実現できるためさらなる成長を期待している。
だが、外部にコーティング作業をいたくしており十数パーセントの利益と他と比べて低い。

(参考)
新iPad ProのミニLEDディスプレーの画質を評価、液晶で有機EL級
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01732/00001/
ミニLEDテレビを発売したLGのインタビューhttps://online.stereosound.co.jp/_ct/17480347

-光学弾性樹脂(SVR)

4Q から車載のグローバ ル案件が始まる予定。来期以降、本格的な貢献を見込んでいる。

-ACF

カメラモジュール、各種センサー向けに昨年リリースした大径粒子を用いた粒子整列型の ACFがカメラの高精細化に対応した実装のニーズが発生している。顔認証などもそう。
半導体向けで通用するような技術開発を、開発ステージとしてきっちり進めさせている。お客さんとやりとりを始めた開発案件を進めておりトライしている最中。


-表面実装型ヒューズ

リチウムイオン電池を搭載したアプリケーションの広がりから需要の増加が続いているだけではなく、リチウムイオンに関する法規制により、 こうした保護回路の搭載の義務化が進む地域も出てきている。
リチウムイオン電池を搭載する最終製品が、今後も増加することをにらみ、製品を安全に使ってい ただくためのヒューズとして、当社は大電流向けを、業界に先駆けて製品化している。例えばE-bike、園芸工具関。 園芸工具は特に海外で、草刈り機みたいなもの。これまで軽いエンジンを使っているものが、リチウムイオン電池に置き換わっていく、そういう傾向が顕著になってきている。特許も含めて、技術的な優位性を有しております。
2 ラインの生産設備を約 10 億円で新規に導入し、供給能力を 2 倍にして、特に需要の強い 大電流向けを中心に拡大を図っていく予定。







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