グとパで分かれるべきなのか?

 道端で「グっとっパ~で分かれましょ!」と、お馴染みの掛け声とともに組分けを試みる4人の子どもたちを見かけた。その組分けはうまくいっておらず、常に3対1になったりしてぜんぜん決まらないようだった。
そんな景色を横目に歩いていたら、ふと「2組に分けるならもっとうまくやれるのでは?」と思った。

結論からいうと、どうも「普通にじゃんけんしたほうが良い」ように思える、というのが今回の話だ。
なお、同種の考察が既になされているかどうかは一切調べずにこれを書いているので、1000年前に既出とか言わないでほしい。

グとパで分かれられない

 まず、「グとパ」や「裏表」でうまく組分けできる確率について考える。
ここで「グとパ」は以下のルールに基づき行われるとする。また、今回は参加者(「プレイヤー」と書く)が4人の場合を想定する。

  1. 各プレイヤーは「グー」と「パー」のいずれかの手を選ぶ。

  2. 掛け声に合わせて各プレイヤーは選んだ手を出す。

  3. 各プレイヤーの手を確認し、「グー」と「パー」が同数であれば組分け完了。

  4. 数が異なる場合は1.に戻り、組分けが成立するまでこの手順を繰り返す。

 各プレイヤーが無造作に出す手を選んだ場合、出る手の場合の数は2^4=16通りだ。このうち「全ての手が同数」つまり2つずつ出される場合の数は4C2=6通り。
つまり、1回の試行で組分けが成功する確率は、3/8(37.5%)となる。実は4人を2:2に分ける場合、「グとパ」では半分以上の確率で失敗する。

じゃんけんで分かれましょ

 では「普通のじゃんけん」だとどうなるか。ただし、組分けが目的なので、以下のように特殊なルールにする。

  1. 各プレイヤーは「グー」「チョキ」「パー」のいずれかの手を選ぶ。

  2. 掛け声に合わせて各プレイヤーは選んだ手を出す。

  3. 各プレイヤーの手を確認し、同じ手がちょうど2つある場合は組分け完了。同じ手を出した2人が一つの組となり、残りの2人がもう一つの組になる。

  4. それ以外の場合は1.に戻り、組分けが成立するまでこの手順を繰り返す。ただし、再試行の際前回出した手とは別の手を出さなければならない。

 このルールだと何が起きるか。まず、4人でじゃんけんする場合、出る手の場合の数は3^4=81通りだ。今回のルールでは、組分けが決まらないのは「全員が同じ手」または「1人だけ違う手」の場合であり、前者の場合の数は3通り、後者は4×3=12通りとなる。
従って、1回の試行で組分けが成功する確率は65/81(80%)である。万が一(5が1)失敗しても、4.の追加ルールによって、全員が全く同じ考え方でもない限りは2回目の試行で決着するであろう。

2値より3値

 この追加ルールがキモである。というのも、冒頭に挙げた「組分けが決まらない子どもたち」は、4人中3人が「前回の手」を全く変えずに出し続けていたのだ。その3人は3人ともグーを出し続けていたので、組分けが終わるわけがなかった、というわけだ。
あなたも経験は無いだろうか。組分けがなかなか決まらず、めんどくさくなって、あるいは何らかの戦略があって、ずっと同じ手を出し続ける。先の例で言えば3人のうち誰か1人が手を変えていれば2回目で終わっていたかもしれない。手を変えるか変えないか、ある種のチキンレースじみた駆け引きが展開されているのである。(本当か?)
 ここで「前回とは違う手を出しましょう」とルールを追加しても意味は無い。というのも、選択肢が2つしかないので、全員が「前回と違う手」を選べば必然的に全く同じ状況が繰り返すことになるのだ。

 翻って通常のじゃんけんの場合、手は3種類なので、「前回と違う手」を強制してもなお2つの選択肢が残る。ゆえにプレイヤーごとに異なる「次の手」が生じうる。
 総じて、「そもそも組分けが成功しやすい」と「失敗しても次の試行で状況が変わりやすい」という2つの理由により、4人を2組に分ける場合は「グとパ」などの2値よりむしろ通常のじゃんけんのような3値のほうが都合がいいのではないか、というのが今回の結論である。
 全国の生徒児童諸君、これからの組分けには普通のじゃんけんをお試しあれ。

ちなみに6人を3人ずつ(以上)に分ける場合や2回目以降の試行が本当に成功しやすいのかなどの検証は、面倒なので誰かに任せる。


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