矢口監督、これはWood job!前編
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矢口監督、これはWood job!前編

「モテキ」と比較して、長澤まさみの可愛くなさが天使と悪魔ぐらいの差をもたらしているWood Job。意外に面白かったのでレビューを書いておこう。……ちなみに、三浦しをんの原作も元々読了済みだ。

テーマは『林業』。

おそらく、監督が実際に体験したことを切り取っているのだろう。そのリアリティと説得力が十分に存在し、ざっと検索してみた限りでの観客の評価も結構良いものが多い。きっとそれは、この映画のテーマが持つ「生命力」をうまく描けていたからだと思う。特に都市に住む人々にとって、それは渇望しているはずの感情のはずだ。

今後も都市化は進むだろう。そしてITともミックスされ、想像力が無い人には現実感が不足しがちな世界になっていく気がする。そんな希薄な生活において、こうした田舎のリアルな生を感じさせる世界というのは、非常に魅力的に映るらしい。ともすれば、ただ田舎を美化して終わりがちなはずのコンセプトだが、そうならないように生活感に溢れた描写がうまく行われていた。

……良くも悪くも、『フェア』なのである。都会側からの一方的な美談や、田舎側からの愚痴ばかり……といったアンバランスになっておらず、(まあストーリー性を持たせるためにもその表現順に偏りはあったがw)リアリティある現実世界だったため、観客の評価は概ね良かったのだろう。

というわけで昔、主人公である染谷将太=矢口監督と同じような立場で林業ボランティアに関わっていた身としては、監督が実際に体験してみて感動したポイントや強調したい部分が手に取るように分かったので、少々長くなるが解説しておこう。

※以下、ネタバレ

>林業研修チャプター

・意識高い系がウンチクを垂れるが、真っ先に脱落していくw

・結局残るのは、マイルドヤンキーや自衛隊上がりなどの体育会系w

・研修修了後に貰える資格的な賞状がちょっと嬉しいw

・道具に段々愛着が湧いていくw

・ロープワークは必須だよねw


>神去村チャプター

・鍵かけないとか隣まで遠いとかインフラの不便さは当たり前として

・通りすがりに挨拶しないだけで排他的になる性格の村人

・ガキンチョの意味分かんなさとしつこさと、それにどうしても突っ込んでしまう大人w

・鹿肉がグロテスクに思えるけど、食べたらうまい!というシーンを入れて欲しかったw

・スローライフ研究会みたいなノリにイラつくw

・火遊びにマジで怒られる


>林業チャプター

・慣れてくると、起こされなくても目が覚めるw

・山の上で飲む、淹れたてコーヒーがやたらうまいw(ぜひここには「うめぇ〜!」って台詞を入れて欲しかったw)

・川の水がやたらうまいw(ぜひこれも「うめぇ〜!」をw)

・おっちゃんたちの反応と会話がやたら長くて途中で切り上げたくなるw

・木のてっぺんからの景色は必須だよねw

・お地蔵様的な存在に、ちょっとお祈りしてみたくなるw


>祭りチャプター

・オカルトチックな出来事も納得してしまいそうな厳かな苔むした森の雰囲気

・なので儀式的な手続きをちゃんと守る所

・品の無さも、ここまでくるとバカバカしくなってくる所

・そして、圧倒的なまでの山の迫力と、代々伝わる「イカれてんじゃないの!?」ぐらいの盛り上がりを見せるローカル祭り

実際に知っていたからだろうか。これらのシーンの面白さにいちいち共感してしまい、楽しむことができた。なので、この映画をもっと楽しむためには、実際に「林業」というものを経験してみることをぜひオススメする。

一応レビューとして、残念なポイントも少しだけ紹介しておこう。

・長澤まさみが可愛くない。別キャスティングで良かった

・ストーリーの盛り上がりに欠ける部分があるので、ヒロインと合わせてももうちょっと感情の起伏を作る流れが欲しかった

・ナレーション付きでもうちょっと具体的に林業説明をする部分も欲しかったが、これはストーリー重視との兼ね合いもあるのでなんとも言えない所。今のままであれば、入れても良かったと思う

ということで、観る前は全然期待していなかったのだが、予想以上に面白かったのでこれはオススメだ。本職からの反応はこんな感じ(http://www.deki-sugi.com/up/2014/05/wood-job-120b.html )だし、宇多丸師匠も絶賛であるw(https://www.youtube.com/watch?v=IklJU8EUNnQ )

だが、どうしてもこれだけは書いておきたいという、最も残念な部分がある。おそらくこれは、この映画を観たほとんどの観客には指摘できないことであり、きっと矢口監督も物足りなさを感じていることではないかと思う。

それは、「林業の迫力や雰囲気が、画面やスクリーン越しには全く伝わりきれていない」ということだ。

要するに、「本物の森や木こりは、もっとすげーよ!」……てことなのである。

例えば、チェーンソーでデカイ木に切れ込みを入れていく所とか、そんな木が倒れていく所とか、倒した時の達成感とか、そんな木がクソ重い所とかw

……後は、木のいい匂いとか、村を去る時の切なさとかね。「別々の場所で生きなければならない」というのは、非常に切なくて素敵なストーリーになるよなぁ……。

ともかく、これは現状の映画というメディアではどうしようもないことであり、もっとバーチャルリアリティ技術でも発達していかない限り、不可能なことなのかもしれない。というわけで、後編ではこの辺りを交え、いくつか考察してみたいと思う。

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農村での新たなコミュニティ、つまりは村作りについて研究をしております。