予測市場は面白い〜見える予測・予測で考える

Cropの代表をしている古澤です。年が明けたということで、タイトルの通り予測市場の面白さについて書こうと思います。この記事で予測市場の面白さが少しでも多くの人に伝われば嬉しいです。短くしたかったのでいろいろ省略していますがお許しください。(予測市場についてはこちら

予測の可視化

初めて予測市場を知ったのは、Augurというブロックチェーン上の予測市場でした。そのとき僕が面白いと思ったのは、「人間の予測が可視化できる」というまさにその点でした。
予測の可視化は社会にとってどのような役割を果たすのか?例えば、中央銀行の金融政策を考えてみましょう。物価を上昇させるためには多くの場合「フィッシャー方程式」というものを考慮します。フィッシャー方程式によると、物価を上昇させるためには期待インフレ率(人が予測する将来の物価上昇率)を上げなくてはいけません。このために例えば大規模な金融緩和を行い国民に「これだけやってるなら物価は上昇するだろうな」と思わせようとしている訳ですが、期待物価上昇率を直接観察することはできず、実際に国民がそんな期待を抱くようになったのかを知る術はありません。しかし予測市場を用いると人々が抱く期待物価上昇率をダイレクトに観察することができるわけです。これは金融政策の評価(政策が期待物価上昇率に寄与したか否か)等に応用することができます。このように、予測を可視化することは国家レベルで大きな可能性・有用性を秘めています。

 ハイエクの市場と予測市場
しかしここで、単に人々の予測を可視化するだけならアンケートでいろんな人に予測を聞いてそれを(例えば平均をとるなどして)まとめれば良いように思えるかもしれません。しかし予測市場について僕が面白いと思った点は、予測のために「市場」を用いているということでした。経済学者ハイエクは市場を「情報が集まる場」として捉えました。「完全な情報」というものは誰も持っていません。しかし市場参加者は自分の知識や経験といった局所的な情報(”local knowledge”)を持っています。市場は取引を通じて局所情報を集約し本当の情報(に近いもの)を提示してくれます。ハイエクはこれを市場の「発見的性格」と呼びました。予測市場も同様に、市場を通すことによって各個人がローカル持っている情報を集約しています。予測市場がこのようなメカニズムを基礎に置いているということは(特に経済学を学んでいる自分にとって)非常に面白い点ですし、それによって単なるアンケートとは異なり高級な予測が可能になっていることは興味深いです。

思考を促す

予測市場の参加者は自分の予測に基づいて予測を行うだけです。しかしより良い予測を行い「利益」を得るためには、たくさんの情報を集め推論を行う必要があります。予測市場は市場メカニズム(そしてその他のインセンティブ設計)により、主体的な情報獲得、さらに思考を促すシステムになっています。

知らない情報に出会う
技術の発達により自分が知りたい情報を手に入れるコストが非常に低くなりました。例えばニュースサイトは勝手に自分の興味のある情報をリコメンドしてくれます。これはもちろん便利なことなのですが、一方で意識しなくては自分が興味のないことを知る・考える機会はあまりないのではないでしょうか。予測市場はカジュアルに様々な問題について考えさせることができると思っています。例えば政治に興味のない人も政治に関する予測をするために政治関連のニュースに触れ、考え、予測をすることになるのではないでしょうか。(東浩紀『観光客の哲学』で議論されていることに近いですが、)グローバル化・情報化が高度に進む現代において、たまには興味のない情報に触れそれについて考えることは人間同士の「連帯」において非常に重要だと個人的には思っています。

近年様々なサービスがリリースされていますが、ユーザーに興味のない情報に触れさせる・考えさせるサービスや仕組みってほとんどないですし、予測市場がその役割を担えるのではないかと思ってます。例えばプロのFXトレーダーが経済のことを真剣に調べているように、多くの人が経済に関して熱心に調べるようになったら面白いですよね。

おわりに

今回のnoteでは予測市場の面白い点として「予測の可視化」と「思考を促すシステム」を挙げました。少しでも面白さや可能性を感じてくれれば嬉しいです。僕が予測市場について面白いと思っている点は他にもあるのですが、それはまた別の機会に。

現在予測市場サービスCROPを運営・開発しています。2020年はこれらの面白さを少しでも多くの人に感じてもらえるように頑張ります!今年もご愛顧のほど宜しくお願い致します!


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