⚖️マルコフ過程の例 10年後のウインドウズとマックのシェアを計算

先ほどのWindowsとMacの市場シェアの予測に関して、マルコフ過程を用いて10年後のシェアを計算するPythonコードを書いてみましょう。以下のコードは、初期市場シェア、遷移確率行列、そして遷移確率行列を10年間適用して、10年後の市場シェアを予測するものです。

https://colab.research.google.com/drive/1xbVoIJRhTbrqWorayuYe3DxnBRwlsLjR?authuser=2

マルコフ過程を使用して、10年後のWindowsとMacの市場シェアを予測するためには、まず現在の市場シェアと、年ごとの遷移確率を知る必要があります。遷移確率とは、ある状態から次の状態へ移行する確率のことを指します。この場合の「状態」とは、特定のオペレーティングシステム(OS)の市場シェアのことです。
マルコフ過程の計算には、以下の情報が必要です:

  1. 初期状態:現在のWindowsとMacの市場シェア。

  2. 遷移確率行列:現在から次の年(あるいは別の時間単位)にかけて、各OSの市場シェアがどのように変化するかの確率を表した行列。例えば、WindowsからWindowsへの遷移確率、WindowsからMacへの遷移確率、MacからWindowsへの遷移確率、MacからMacへの遷移確率が必要です。

しかし、実際の遷移確率は多くの要因によって変化し得るため、正確な予測は非常に困難です。市場動向、技術革新、企業戦略、消費者の好みなど、様々な要素が市場シェアの変動に影響を与えます。
もし具体的な初期状態と遷移確率行列を提供していただければ、シンプルなマルコフ過程モデルを使って10年後の予測を行うことは可能です。ただし、この予測はあくまでモデルに基づいた推定であり、実際の市場状況を完全に反映するものではないことをご理解ください。現実の市場シェアや遷移確率に関するデータがない場合、予測は実行できません。

マルコフ過程モデルを作成するためには、まず初期状態(現在の市場シェア)と遷移確率(年ごとの市場シェア変動確率)を定義する必要があります。過去3年の市場シェアデータから、WindowsとMacの市場シェアの変動を観察し、そのデータを基に遷移確率を推定します。

初期状態

  • 2023年の市場シェアを初期状態とします。

    • Windows: 96.40%

    • Mac: 1.63%

遷移確率の推定

遷移確率は、ある年から次の年への市場シェアの変化から推定します。ただし、直接の遷移確率のデータがないため、過去2年間の市場シェアの変化をもとに簡単な推定を行います。

  • WindowsからWindowsへの遷移確率: 市場シェアが増加傾向にあることから、約99%と推定します。

  • MacからMacへの遷移確率: 市場シェアが減少傾向にあることから、約98%と推定します。

  • WindowsからMacへ、またはMacからWindowsへの遷移確率は、残りの確率から推定します。

これらの推定値をもとに、マルコフ過程の遷移確率行列を作成します。

遷移確率行列は以下のようになります(行が現在の状態、列が次の年の状態):


10年後の市場シェア予測

この遷移確率行列を使って、10年後の市場シェアを計算します。計算は以下の式を用いて行います:

10年後のマルコフ過程モデルに基づく予測によると、Windowsの市場シェアは約88.11%、Macの市場シェアは約18.22%になると予測されます。この結果は、初期の遷移確率の推定と初期状態に基づいており、実際の市場動向や外部要因によって変動する可能性があることに注意してください。 ​

上記は中心極限定理は関係ありますか?

中心極限定理(Central Limit Theorem, CLT)は、ある条件下で、独立で同一の分布に従う確率変数の和(または平均)が、サンプルサイズが大きくなるにつれて正規分布に近づくという統計学の定理です。この定理は、サンプルの平均や和に関する推論を行う際に非常に重要であり、多くの統計的手法や推定の正当性の根拠となっています。

マルコフ過程モデルを使用してWindowsとMacの市場シェアを予測する場合、中心極限定理は直接的には関係しません。マルコフ過程は、ある状態から次の状態への遷移が確率的に決定される過程であり、特定の確率変数の和や平均の分布についての定理ではありません。マルコフ過程の分析では、遷移確率行列と初期状態を使用して、将来の状態の確率的な予測を行います。

したがって、この文脈では、中心極限定理はマルコフ過程の市場シェア予測には直接関係していないと言えます。ただし、統計学の他の多くの分野や応用において、中心極限定理は重要な役割を果たします。

しかしながら、この過程は市場均衡理論にのっとってますよね

市場均衡理論に基づいた分析は、市場における供給と需要のバランスがどのように達成され、価格がどのように決定されるかを説明します。市場均衡理論の文脈では、市場の参加者(例えば、消費者と生産者)の間で情報が完全に共有され、合理的な意思決定が行われると仮定されます。この理論では、価格調整メカニズムが市場を均衡状態に導くプロセスを扱います。

マルコフ過程を用いたWindowsとMacの市場シェアの予測は、市場均衡理論とは異なるアプローチを取ります。この予測モデルでは、市場シェアの時間による遷移が確率的なプロセスによって決定されると考えます。マルコフ過程では、現在の状態のみが将来の状態を決定するという「無記憶性」の特性を持ち、市場の供給や需要のバランスに基づく価格調整メカニズムを直接的にモデル化するものではありません。

しかし、ある意味で、マルコフ過程モデルは市場均衡理論の一側面を捉えているとも言えます。市場シェアの変化を通じて、市場参加者の選択や競争動向が反映され、これらの過程が長期的にはある種の「均衡」状態へと収束する可能性があります。例えば、消費者がOS選択において合理的な選択を行い、その結果として市場シェアが変動するプロセスは、市場が技術の進歩や消費者好みの変化に応じて進化し、新たな均衡に達する様子を示すことができます。

ただし、マルコフ過程による予測が市場均衡理論の全ての側面をカバーしているわけではなく、特に価格決定メカニズムや供給需要の詳細な分析は含まれていません。そのため、これらのモデルを用いる際には、それぞれの理論やモデルが提供する視点や制限を理解しておくことが重要です。

中心極限定理とも違いますか?

中心極限定理とマルコフ過程を使用した市場シェアの予測との関係についてもう少し詳しく説明します。
中心極限定理は、独立同分布に従う確率変数の和(または平均)が、サンプルの大きさが十分大きければ、近似的に正規分布に従うという定理です。この定理は、確率変数の和や平均に対する推論、特に標本平均の分布を考える際に重要です。中心極限定理は、大数の法則とともに、統計学の基礎を成す重要な理論の一つであり、標本から母集団に関する推測を行う際に広く応用されます。
一方で、マルコフ過程を用いた市場シェアの予測は、特定の遷移確率に基づいて将来の状態を推測する確率過程の一例です。マルコフ過程は「無記憶性」を特徴とし、現在の状態から次の状態への遷移が決定されますが、これは中心極限定理とは異なる概念です。
中心極限定理が関係するのは、例えば多くの小さな独立した変動や影響の和が観察される場合です。たとえば、多数の消費者の選択や行動の結果として生じる市場動向の分析において、個々の消費者の選択が独立しており、同じような影響を持つと仮定することができれば、その集約された結果は中心極限定理によって分析される可能性があります。
しかし、マルコフ過程による市場シェアの予測は、中心極限定理の概念を直接使用しているわけではありません。マルコフ過程は、各状態の遷移が特定の確率に基づいて行われる過程をモデル化しており、個々の確率変数の和や平均に対するものではなく、状態遷移の確率的な性質を捉えています。
したがって、マルコフ過程による市場シェアの予測と中心極限定理は、統計学の異なる側面を扱っており、直接的な関係はありませんが、異なる文脈で統計的な分析や推測に役立つ重要な概念です。


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